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アーモンドバター

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ここ、10〜20年ほどの間に、姫路市の名物が増えている。

おでんを生姜醤油で食べる「姫路おでん」や、
姫路の喫茶店で出てくる「アーモンドトースト」などがそれだ。
これらは、自分が子供のころには
全くその名前を聞くこともなかった。
それが、いつの間にやら姫路名物ということになり、
自治体なども、これらを推すようになった。

おでんを生姜醤油で食べる、というのは、
姫路に限定された食べ方ではない。
現に、たつの市に住んでいる我が家でも、おでんを食べる際には
生姜醤油をつけるのが、ごくごく当たり前のことであった。
うちの両親は、隣の相生市の出身なので、
恐らくは相生市でも昔から、おでんに生姜醤油をつけて食べていたのだろう。
友人たちに話を聞いてみても、やはりどこの家庭でも
おでんを生姜醤油で食べていたようで、
つまり、これは別に「姫路」に限った食習慣ではなく、
播磨地方一帯で、昔から行なわれていた食習慣なわけだ。
それを姫路市が、その起源を主張したことによって、
「姫路おでん」という名前で定着してしまった、というのが事実の様である。

だからおでんを生姜醤油で食べる「姫路おでん」については、
姫路市が名物として取り上げた際にも、
それほど違和感があったわけではないのだが、
(無論、「姫路」という名前を関することについては、
 色々複雑な感情はあったが……)
同じ姫路市の名物として「アーモンドトースト」が取り上げられたときには、
大きな違和感を感じた。
昔から姫路市の近隣に住んでいる自分にとっても、
「アーモンドトースト」というのは、初めて聞く名前だったからである。
正直言って、初めてその話を聞いた際には、
「あれ?姫路にそんなもの、あったけ?」と、
首を傾げたものである。

調べてみた所によると、この「アーモンドトースト」が
初めて取り上げたられのは、TVのバラエティ番組においてであった。
その番組は、各県の知られざる県民性や文化などを、
面白おかしく紹介している番組で、その番組内にて
姫路市の名物として「アーモンドトースト」が取り上げられた。
当初は、自分の様に「アーモンドトースト?」と、
首を傾げる近隣住民を多かったようだが、
これをきっかけにその認知度は高まって行き、
やがて姫路名物の1つに数えられるほどになった。

では、そもそも「アーモンドトースト」とは何か?
答えはシンプルで、食パンに「アーモンドバター」をタップリと塗って
トーストしたものである。
ほんのりとした甘さ、香ばしさ、細かく砕かれたアーモンドの食感が、
普通のトーストを、グッと美味しくしてくれる。
では、そもそも「アーモンドバター」とは何か?

「アーモンドバター」とは、細かく砕いたアーモンドと、砂糖、
マーガリンを混ぜ合わせた、スプレッドの一種である。
(スプレッドというのは、パンなどに塗る「塗り物」のことだ)
……。
え?マーガリン?と、思われるかも知れないが、
今回、「アーモンドバター」を作って販売している店の
ホームページを調べ、そのレシピを確認してみた所、
確認できた所全てで、バターではなくマーガリンが使われていた。
それじゃ「アーモンドマーガリン」じゃないか……と、
思われるかも知れないが、「ピーナッツバター」などは、
バターはおろか、マーガリンすらも使われていないのに
「バター」を名乗っている。
そういう事例もあることだし、ここは敢えて突っ込まないようにする。
(ちなみに「ピーナッツバター」は、余計な材料は何も加えず、
 ただ、ピーナッツのみを細かく砕いてペースト状にしたものである。
 ピーナッツは重量の半分近くの脂質を含んでいるので、
 ただそれだけで、油分たっぷりのペースト状になるのだ。
 パンに塗る「ピーナッツクリーム」などは、
 この「ピーナッツバター」に砂糖や水飴などを混ぜて作られている)
店側の言い分としては、アーモンド自体が
たくさんの油分を含んでいるので、(実際の所、アーモンドも
ピーナッツと同じく、重量の半分近くの資質を持っている)
これをバターと合わせれば、しつこく重い感じになってしまうため、
植物油製のマーガリンを用いることにした、ということらしい。
アーモンドもピーナッツと同じか、それ以上に脂質を含んでいるため、
ピーナッツと同じようにペースト状にすれば、
油分たっぷりの「アーモンドバター」になるのでは?とも思ったが、
そういう風にはならなかったらしい。
この「アーモンドバター」には、砂糖が含まれているため、
これを塗ってトーストすると、キツネ色の焼き色がつくのも
大きな特徴の1つになっている。

先にも書いたように、この「アーモンドトースト」が
世に広く知られるようになったのは、最近のことである。
バラエティ番組で取り上げられたのが2010年のことなので、
全国的にその名前を知られるようになってからは、
まだ10年も経っていない。
もちろん、「アーモンドバター」と「アーモンドトースト」自体は、
TVで紹介される以前から、食べられていたわけだから、
一体、いつごろからこれらが食べられていたのか?ということについても
調べてみることにした。
ところが、である。
わんさかと出てくるのだ。
「アーモンドバター」発祥の店が。
ホームページがある店では、それらも全てチェックしてみたが、
自ら「アーモンドバター」発祥の店を名乗っている所が、
1つや2つではない。
面白いのは、こういう場合、「我こそが元祖」ということで、
それぞれの店がその正当性を強烈にアピールし、
他の店の正当性を否定するものだが、「アーモンドバター」の場合、
その否定の部分が見られない。
それぞれの店が「アーモンドバター」発祥の店をアピールしているが、
どこも他所の店については、全く触れていないのである。
ここら辺の方針は、どこの店も共通していて、
いっそ不気味なほどである。
ひょっとすると、「アーモンドバター」を姫路名物として売り出す際に、
これを扱っている店たちが、各々、そういうスタンスでアピールすると
協定を結んでいるのかも知れない。
まあ、いわば一種のプロレスである。
本気で元祖を争っても、ギスギスした空気になるだけで
「アーモンドバター」を売り出していく上では、
マイナスにしかならないだろう。
そういう事態を防ぐために、発祥の店を名乗るのは自由、
その代わり、他所の店の「それ」についても否定しないと決めているのなら、
これはなかなか、したたかな戦略である。
(もっともこれは、自分の勝手な想像に過ぎないが……)
ちなみに年代が確認できた情報の中で、もっとも古かったものは
昭和50年前後のものであった。
これを信じるのなら「アーモンドバター」には、
40年以上の歴史が存在していることになる。

現在では、それぞれの喫茶店の他に、スーパーや高速道路のSAでも
「アーモンドバター」が売り出されている。
それらの商品のほとんどは、喫茶店などのスタッフたちが
自ら手作りしているので、市販のスプレッド類に比べれば
割高な値段設定になっている。
だが、この手作り感がウケているのか、割高な価格設定にも関わらず
「アーモンドバター」の売れ行きは、上々の様である。
ネット上には、「アーモンドバター」のレシピも
数多く公開されており、アーモンド、砂糖、マーガリン(バター)の
3つの材料さえ用意できれば、比較的安価にこれを作ることも出来る。

そうすれば価格を気にせず、「アーモンドバター」をタップリと
パンに塗り付けることも出来るが、そうなった場合、
カロリーの方も跳ね上がることになるので、
そこの覚悟だけはしておいた方が良いだろう。

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