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沢庵漬けのその後

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今からちょうど1ヶ月ほど前、「沢庵漬けを作る」という記事を書いた。

ジャガイモを植え付けるにあたって、畑に植わっていた大根を全て回収し、
葉の部分は塩揉みした後、天日で乾燥させて「菜飯のもと」に、
そして大根の部分も天日で乾燥させ、糠と塩と砂糖で漬け込んで
沢庵漬け」にしてしまおうと目論んだのである。

この「沢庵漬け」の作製については、
昨年も同じようにチャレンジしていたのだが、
天日干しの際に大根の水分を飛ばしすぎてしまったためか、
漬け込んだ後に水が沁み出してこず、そうこうしているうちに
大量にカビが生えてきて、大失敗に終わってしまった。
今年の「沢庵漬け」作りは、昨年のリベンジという意味合いも持っている。

「沢庵漬けを作る」では、大根を乾燥させ、漬け物樽を用意し、
糠・塩・砂糖を混ぜ合わせたものと一緒に、
これらを漬け込んだ所までを書いた。
昨年の失敗を踏まえ、大根の乾燥を控えめにして
内部に充分な水分を残すようにしたのだが、
果たして今年は大根の中から、無事、水が沁み出してくるのだろうか?
という所で記事は終わっていた。
その後のことから、筆を進めていこう。

今回の「沢庵漬け」を作るにあたり、参考にしたレシピには、
おおよそ10日ほどで水が上がってくる、と書かれていた。
ただ、昨年、ここの所で失敗している自分は気が気ではなく、
樽の中に大根を漬け込んだ翌日から毎朝、
樽を開けて中の様子を観察し続けた。

ちょうど樽に漬け込んだ翌日の朝、
フタと重石をどけて中を観察してみると、樽の中に敷き詰めた糠の一部に
水のシミらしきものが確認できた。
順調に水が出始めているらしい。
このまま、少しずつ水が出てくると思っていたのだが、
さらに日が進んでも、このシミはなかなか大きくなっていかない。
まさか、糠をわずかに湿らせただけで、
大根の中の水分が無くなってしまったのだろうか?
そう思って暗澹としていたのだが、何日か経った後に
糠の中へと指を差し込んでみると、しっかりと底の方に
水が貯まって来ていた。
大根から沁み出た水は、樽の底の方から貯まって来ていたのだ。
そのまま観察を続けていると、樽のサイドの辺りの糠が
水に浸っているの確認できるようになった。
なかなか順調に水が沁み出してきているようである。
そしてレシピに書かれていた10日目の朝を迎えた。
改めて、フタと重石をどけて中を確認してみると、
そこそこの量の水が沁み出してきており、樽の中に貯まっている。

だが、問題があった。
貯まっている水の量が少ないのである。
レシピによれば、この段階で沁み出してきた水によって、
糠と大根は完全に水没していなければならなかったのだが、
樽の中では、上部の大根と糠はまだ、全く水に使っていない状況であった。
ここでとるべき手段は2つである。
さらに時間をかけて、水が沁み出してくるのを待つか、
あるいはもう水は出てこないものとして、足りない分の塩水を作り
これを樽の中に加えて、大根と糠を水没させるかである。
昨年は、水が沁み出してこなかったときに何も手を加えず、
たださらに時間をかけて、水が出てくるのを待っていただけであった。
その結果、カビが大繁殖して大失敗してしまうことになった。
今年はその轍を踏むわけにはいかない。
自分は迷わず、後者の方法を選んだ。
大きめのボウルに1ℓほどの塩水を作り、これを樽の中に加えた。
それでちょうど、大根も糠も塩水の中に漬かる状態となった。
ここからさらに時間をかけて、2週間ほどおいておく。

そして4月の半ばごろ、少々早いかな?と思いつつも
1本の大根を樽の中から取り出して見た。
大根はぐったりと漬かり、くすんだ鼈甲色をしている。
市販の「沢庵漬け」は、鮮やかな黄色をしているものが多いが、
それに比べると、なんとも地味な出来上がりである。
樽の中の匂いなども、昔、婆さんが漬けていた
「沢庵漬け」の匂いそのものである。
そういえば、婆さんの漬けていた「沢庵漬け」も、
この様なくすんだ色をしていた。
と、いうことは、今回のこの「沢庵漬け」は成功ということだろうか?

この大根を水道できれいに洗い、付着している糠などを落とす。
洗ったりすると、味も抜けてしまいそうに思えるが、
その程度で「沢庵漬け」の味が抜けるということは無い。
キレイに洗った後、包丁で一口大に切り分ける。
もともと漬け込んだ大根が細かったせいか、
市販の「沢庵漬け」に比べると、一切れが随分と小さい。
しかし一口大に切り分けてみると、しっかりと大根の内部まで
鼈甲色に染まっており、しっかりと漬かっているようである。

とりあえず一切れをつまんで、口の中に放り込んでみた。
口の中に広がる、独特の臭気。
「香り」といえるほどの、いいものではなく、
「臭い」と表現するしかない、その風味。
間違いない。
昔、婆さんが漬けていた「沢庵漬け」そのものの臭いである。
歯でこれを咀嚼してみると、市販のもののコリッとした歯ごたえと違い、
ゴリッとした無骨な歯ごたえである。
わずかに大根の風味は残っているものの、味わいの大半はキツい塩味だ。
この一切れで、随分ご飯が進みそうである。
ものの本によれば
『米糠の中に存在する麹が、デンプンを分解して生ずる糖分によって
 甘味が増す』
とあるのだが、甘味などは全く感じることが出来ない。
これは「旨味」に関しても同じことである。
早い話が、ゴリゴリとして塩っ辛いばかりの「沢庵漬け」が
出来上がったのである。
……。
そう、何のことは無い。
これはその昔、婆さんが作っていた「沢庵漬け」そのままの味である。
マズいとは言えないものの、決してウマいとは言えない微妙な味。
婆さんに作り方を教わったことなど、一度も無いのに、
なんという再現性の高さであろうか?
ひょっとするとこれが、遺伝子というものの成せる技かもしれない。

この「沢庵漬け」が完成してから毎日、
樽の中から1本ずつこれを取り出して刻み、それで飯を食っている。
ウマくもないのに、郷愁だけを誘うこの味。

やたら塩っ辛いため、ご飯がよく進むことだけが救いである。

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