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マカロン

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先日、ちょっとした集まりがあって、
そこで「あんまかろん」なるお菓子を頂いた。

個別包装された袋の中に、一口大のお菓子が入っているのだが、
淡い緑色をしたドーム状の物体である。
袋の上から触ってみた感じだと、お菓子の表面はザラッとした感じで、
クッキーなどの表面の状態に近い。
「あんまかろん」という名前から察するに、
恐らく、この一口大のドーム状のお菓子の中には、
餡子が入っているのだろう。

一般的に「マカロン」といえば、カラフルに焼き上げられた
ドーム状の生地でクリームなどを挟んでいるものが、思い浮かぶ。
若い女性に人気のお菓子ということになっているのだが、
一口大の可愛らしい形で、カラフルな辺りがウケているようだ。

今回、頂いた「あんまかろん」なるお菓子は、
生地の型状こそ「マカロン」のそれに似ているが、
全体的な構造から考えてみると、どちらかといえば饅頭に近い。
実際に食べてみると、生地の中にはしっとりとした抹茶風味の餡と
さらに抹茶風味のクリームが入っていた。
この「あんまかろん」の販売元である菓子店、
「中村屋」のホームページを見てみると、そこには堂々と
『マカロンみたいなおまんじゅう』と表記されている。
詰まる所、「まかろん」というのは
あくまでも名前だけの話で、実際には「饅頭」に分類される商品らしい。

本家本元の「マカロン」は、卵白と砂糖とアーモンド(パウダー)を
混ぜて作った生地をオーブンで焼き上げたお菓子である。
成分的にいえば、半分以上を砂糖が占めているという
非常に甘いお菓子である。
この、とことんまで甘い生地で、さらにクリームなどを
挟み込んでいるわけだから、まさに甘味の権化の様なお菓子である。
一応、その製法から見てみると、クッキーやビスケットなどの
焼き菓子と酷似しているように思えるが、
それらのものと違って小麦粉などは使われておらず、
それらに比べると保存もきかない。
性質的には、焼き菓子というよりも生菓子に近く、
保管する場合は冷蔵庫の中にいれておくほうがいい。

「マカロン」はフランスの代表的なお菓子だと思われがちだが、
実はもともとは、イタリアのお菓子である。
16世紀にフランス国王・アンリ2世に嫁いだ、
カトリーヌ・ド・メディシスによって持ち込まれたとされ、
もともとは「アマレッティ」と呼ばれていたお菓子であったらしい。
この「アマレッティ」は、通常のクッキーよりも食感の軽い
メレンゲ菓子の一種であり、小麦粉の代わりに
アーモンド・プードル(アーモンド・パウダー)を用いて作られている。
材料的にいえば、ほとんど「マカロン」そのものと考えていいだろう。
この「アマレッティ」を柔らかめに作ったものを
「バーチ・ディ・ダマ」といい、フランスの「マカロン」は、
これを発展させたものだと考えられている。
(ただ、フランスの国内では、地方によって
 様々な「マカロン」が作られており、その中には13世紀から
 作られている「マカロン・クラックレ」や、
 791年からロワーヌ地方にて、現在まで作られ続けている
 ようなものもあり、「マカロン」はイタリアから持ち込まれた、と
 一概には言い切れないのかもしれない)

日本に「マカロン」が伝わったのは、江戸時代のことだとされている。
具体的に、江戸時代のいつごろに、どこの国によって伝えられたのかは
ハッキリと分からなかったが、日本に入ってきたばかりの「マカロン」は、
その表面が、ひび割れたクッキーの様な素朴なもので、
これはフランス・ロレーヌ地方ナンシーで作られている
マカロン・ド・ナンシーと呼ばれるものであったらしい。
(「マカロン」自体の出自を鑑みれば、これはフランスから
 もたらされたと考えるのが自然なのだが、
 だとすれば、これは幕末に近い時代の伝来、ということになってしまう。
 恐らくは、フランスからオランダへ伝わり、
 そこからのルートで日本へ持ち込まれたとするのが、自然かもしれない)
このマカロン・ド・ナンシーの大きな特徴は、
原材料にアーモンドではなく、ピーナッツを使っている点だ。
日本では「マカロン」ではなく「マコロン」とよばれ、 
駄菓子としてのジャンルで愛されてきたようである。

現在、日本でもっとも良く知られている「マカロン」は、
正式には「マカロン・パリジャン」と呼ばれるものである。
直訳すれば、「パリのマカロン」ということになる。
ツルッとした表面がサクッと潰れる食感と、
生地の間に挟まれた、様々なクリーム類。
生地の中に様々な副材料を混ぜ込み、
さらにそれに合わせたクリームを挟み込む。
それによって、様々な色、味わいの「マカロン」が出来上がる。
今回、自分が頂いた「あんまかろん」(正式には「マカロン」を模した
饅頭なのだろうが……)は、生地の中に抹茶が混ぜ込まれており
淡い緑色を呈していた。
さらに中に入っているのも、抹茶風味のクリームと抹茶餡であり、
全体的に「抹茶」を押し出した仕上がりになっていた。
日本の菓子屋が作る、日本風にアレンジされた「マカロン」だろう。
「マカロン」の本場であるフランス・パリでは、
柚子を使った「マカロン」や、クリスマスシーズンに並ぶ
フォアグラやトリュフを使った「マカロン」などもあるという。
柚子はともかくとして、フォアグラやトリュフを「マカロン」にする
というのは、日本人の感覚からすれば、ひどく奇異に映るのだが、
本場では当たり前のものなのだろうか?

「マカロン」という名前の由来であるが、
これは実は「マカロニ」と同じものであるらしい。
改めて「マカロニ」の語源を探ってみると、
俗説になるが、マルコ・ポーロが中国から持ち帰った
小麦粉を練った食べ物を教皇に献上した際、
そのあまりの味の良さに「おお、すばらしい(Ma caroni)」と
いったことが命名の由来とされている。
(実際には、マルコ・ポーロが帰国する以前にも
 「マカロニ」があったらしいことが確認されている)

また、「小麦などを練る」という意味の「マッカーレ」から派生した
「マッコ」という言葉を語源にしているという説もある。
14〜15世紀のイタリアでは、小麦粉を練って成形、
これを茹でて料理したものの総称を「マカロニ」と呼んでいたようなのだが、
先にも書いた通り、「マカロン」には小麦粉は全く使われていないし、
その製作行程の中にも「茹でる」という行程は無い。
だとすれば、こちらの「マカロニ」語源を「マカロン」に当てはめるのは
無理ということになってしまう。

だからもし、「マカロン」と「マカロニ」の語源が
同じだというのであれば、マルコ・ポーロ説にちなんで、
「マカロン」を食べた誰かエラい人が、
「マッカローン」といったのかもしれない。
……。
さすがにこちらの説も、無理がある様な気がする。

はたして「マカロン」は、どのような過程を経て、
「マカロン」になったのであろうか?

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