雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

歴史 雑感、考察 食べ物

タルタルソース

更新日:

自分は、基本的に朝食、夕食にはご飯を食べる人種である。

大方の場合は、洗ったコメの中に押し麦を混ぜ込み、
30分ほど吸水させた後に、普通に炊き上げた麦飯である。
これに季節の野菜などを刻んで混ぜ込んだり、
簡単なオカズなどを添えて食べているわけである。
カレーライスや丼ものを作るときも、大体、麦飯(野菜入り)で作るし、
酢飯を作って、寿司などを作ろうということになっても、
やはり麦飯に寿司酢を混ぜ込んで作る。

そこまでご飯(麦飯)食に徹底している自分だが、
まれに、この朝食の部分を、パン食にしてみることがある。
スーパーなどで、食パンやフランスパン(バゲット)などを買ってきて、
これらをトースターで焼いて食べるのである。
正直、腹もちの良さという点で考えてみれば、
ご飯のそれにかなうものではないが、いちいちコメを量って洗い、
水の量を調整して、さらにそこに押し麦と水を加える、なんていう
手間のかかるマネをしなくて良い分、
かなりお手軽に済ますことが出来るのが、パン食の良さである。

ただ、パン食の場合、困ることが1つある。
トースターなどで焼いたパンは、そのままでは食べられないことである。
まあ、食べて食べられないわけではないのだが、
やはり焼いたパンには、何か塗り付けて食べたいというのが、
大方の日本人の、偽らぬ本音では無いだろうか?
このパンなどに塗り付ける食品のことを、
広い意味で「スプレッド」という。
日本では、焼いたパンに塗り付けるものとして、
バター、マーガリン、ジャム、マーマレード、ピーナッツバターなどが
一般的であるが、これらは全て「スプレッド」だといえる。
これらの「スプレッド」のうち、1つ、あるいは複数を塗って食べるのが、
一般的な日本のパン食の姿では無いだろうか?
(チーズなどをのせて焼いたり、サンドイッチなどを作る場合もあるが、
 今回の場合、それらのことについてはスルーしてくれると助かる)

ただ、自分の様なにわかパン食の場合、
食パン一斤とか、バゲット1本でパン食をやめてしまうこともあるので、
この手の市販のスプレッドを買うと、余らせてしまうことになる。
バターやマーガリンなどは、油代わりに炒め物などにも使えるが、
自分はほとんど、油を使う炒め物などの料理をしないので、
これらはいつまでも冷蔵庫の中で残っている、ということになってしまう。

こういうことを避けるために、ちょっと発想を変えた。
パンのための「スプレッド」を、他のものに転用するのではなく、
他のものを、パンのための「スプレッド」として転用するのである。
早い話、身の回りにある様々な食品、調味料を「スプレッド」として
パンに塗りたくろうではないか、という話だ。
そうして色々試してみた。
醤油、味噌、塩、ソース、ケチャップマヨネーズ等々。
その結果、もっとも自分の好みにあっていたのが
「タルタルソース」である。

「タルタルソース」は、マヨネーズにみじん切りにした香味野菜と、
砕いたゆで卵を加え、これを塩・胡椒で味付けしたソースである。
マヨネーズに、様々な材料を加えているため
もったり、どろんとした、淡黄色をした状態になっている。
一般的には海老フライやカキフライ、アジフライなどの
魚介系のフライに用いられることが多いが、
その他にもチキン南蛮などの鶏肉料理に用いられることもある。
用いられる香味野菜としては、タマネギ、ピクルス(キュウリ)、
ケッパー、パセリ、チャイブなどが一般的だが、
この他にもオリーブのみじん切りやホースラディッシュ、
ディジョンマスタード、酢、レモン果汁、タラゴンなどが
用いられることもある。
マヨネーズが素になっているが、日本農林規格においては
「タルタルソース」はマヨネーズの分類には入っておらず、
「半個体状ドレッシング」ということになっている。

「タルタルソース」をいう名前の由来であるが、
実はこの「タルタル」の語源は「タルタルステーキ」のそれと同じである。
「タルタルステーキ」は、牛肉、あるいは馬肉を粗いみじん切りにして、
これをオリーブオイル、塩、胡椒で味付けし、
タマネギ、ニンニク、ケッパー、ピクルスなどをみじん切りにした薬味と、
卵黄を添えた料理である。
日本では獣肉の代わりに、マグロなどの魚肉でも作られることがあるが、
どちらも食べる際には、全体を均一になるまで混ぜ込んで
食べることになる。
一般的な説によれば、この調理法は「タタール人」、
つまり遊牧民族であったモンゴル人から伝わってきており、
そこから「タタール」、これが変じて「タルタル」となったとされている。

ここで「タルタルステーキ」に添えられた薬味を見てほしい。
一部に違いはあるものの、「タルタルソース」に混ぜ込まれる香味野菜と
非常によく似たラインナップになっている。
卵黄を添える、というのも、砕いたゆで卵を混ぜる行程と
どことなく似通っているともいえるだろう。
牛肉、馬肉のみじん切りをマヨネーズに置き換え、
「タルタルステーキ」の流儀に従って、これらを全て混ぜ合わせると、
「タルタルソース」が出来上がる、という塩梅である。
これら「タルタル」の名を冠する料理・ソースの類似性から考えるに、
「タルタルステーキ」の調理方法が、「タルタルソース」に
何らかの影響を与えていることは、間違いないだろう。
そこからこれを「タタール」風のソースという意味から
「タルタルソース」と名付けたのだと考えられる。

この「タルタルソース」という名前が、初めて文献の中に登場するのは
19世紀のことである。
フランスのシェフ、オーギュスト・エスコフィエが、
その料理本「ル・ギード・キュリネール」の中に、
現在の「タルタルソース」となるような用語を記している。
これはマヨネーズにマスタードやピクルス、ケッパー、
ハーブなどの香味野菜を加えて作る「レムラードソース」の
レシピの中に記されていることから、
恐らく「タルタルソース」は、「レムラードソース」の派生品として
作り出されたものだと思われる。
この他、イギリスの料理作家の著書の中には、
「タルタル・マスタード」なる用語も記されている。
こちらはオーギュスト・エスコフィエのものよりも数十年早いが、
その材料を見れば、マヨネーズも使われておらず、
「タルタルソース」とは、その実態がかけ離れている。
あるいは、この「タルタル・マスタード」から
「レムラードソース」が生まれ、さらに「タルタルソース」へと
変化していったのかもしれない。
日本では、昭和41年に初めて「タルタルソース」が
市販されていることから、おおよそ半世紀ほどの歴史があることになる。

現在、我が家では、たまのパン食の際、バターやマーガリンなどの
「スプレッド」の代わりとして、「タルタルソース」を用いている。
もちろん、パンに塗り付ける他にも、
蒸かして潰したジャガイモを「タルタルソース」で和えて、
ポテトサラダにしたり、
千切りにした大根を「タルタルソース」で和えて、
大根サラダにしたりと、活躍している。

ただ、ご飯に直接かけて食べるのだけは、未だに試したことが無い。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-歴史, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.