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イカスミ

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先日、地元のスーパーへ特売品の卵を買いに行き、
そのついでに店内をプラプラと見て回っていたら
同じく特売品になっているカップヌードルを見つけた。

自分は普段、あまりカップヌードルは食べないのだが、
特売になっていたカップヌードルは、
自分の好きなシーフードヌードルであり、
しかも通常だと200円近くするBIGサイズが、
98円で販売されていたため、とりあえず1つ購入してしまった。
……。
そんなに安かったのなら、1つといわず、
いくつかまとめて買っておけばいいのに、と思う人もいるだろう。
自分も普通なら、そうしていたかも知れない。
そうしなかったのには理由がある。
特売されていたシーフードヌードルが、
普通のシーフードヌードルではなく、
「イカ墨ブラックシーフード」と銘打たれていたからである。
普段は白いカップヌードルのケースが黒く塗られており、
その上にトボケたイカのイラストと、青、黄、黄緑、オレンジの
墨が飛び散っていて、かなり異様なカップデザインである。
見ようによっては、サイケデリックでもある。
このカップヌードルのような商品は、
定期的に新しい「味」の新商品が市場に投入される。
そこでの人気が高ければ、毎年、季節的にリリースされる商品となり、
さらに人気を得れば、常時販売される定番商品となる。
この「イカ墨ブラックシーフード」も、その手の商品だろう。
この手のものは、物珍しさもあって、
一定量の売り上げが見込めるものである。
ところが、新しい「味」が不評だった場合、
全くリピーターがつかずに、大量の在庫が出る場合がある。
そういうものは、特売品として一気に安値で売り払われる。
……。
そう。
ここまで書けば、分かってもらえるだろう。
目の前に積み上げられている「イカ墨ブラックシーフード」は、
そういう商品である可能性が高い。
で、あるならば、安いからといって易々と大量買いをするのは
考えものである。
それが「ハズレ」の味であった場合、
複数買いしてしまっているとダメージが大きい。
こういった「攻め」の姿勢の新商品は、
それが良さそうでも悪そうでも、とりあえず1つだけ買うのがいい。

さて、今回、シーフードヌードルの新しい味として発売された
「イカ墨ブラックシーフード」。
基本的には、通常の「シーフードヌードル」に
「イカ墨」を加えたもののようだ。
「イカスミ(墨)」は、イカが水中に排出する粘性の高い
黒褐色の液体のことである。
この液体は、主にイカが外敵に襲われるなど、危機に陥った際に
これらから逃れるために吐き出される。
イカ釣りをしていて、イカが釣れた場合にもこれを吐き出すので、
とりあえずピンチになったら吐き出すものらしい。
スミを吐くといえば、タコなども同じような行為をするが、
タコのスミは粘性が低く、一気に広がって
煙幕のような働きをするのに対し、
イカのスミは粘性が高いため、最初は一所に留まって、
時間と共に広まっていく。
これはイカのスミが、タコのそれの様に煙幕の目的ではなく、
自分の分身(のようなもの)を瞬時に作り出して、
敵がそれに気をとられているうちに、逃げ出すためだと考えられている。
もちろん、これが広がれば相手の視界を遮る働きもあるだろうから
ある意味では、イカのスミは2段構えの逃走能力だともいえる。
このスミは、エラの間にある墨袋(墨汁嚢)から吐き出される。

イカスミの色素成分は、メラニンである。
これはヒトも持っている色素であり、
肌が太陽光に当たっていると日焼けするのは、
太陽光に含まれている紫外線を、メラニン色素が吸収して、
体を守っているためである。
ヒトのみならず、まれにこのメラニンが全く合成されない個体がおり、
これらは「アルビノ」と呼ばれる。
これらの「アルビノ」は、通常の個体と比べ、脆弱なものが多い。

このイカスミ、メラニンの他にアミノ酸を含んでいる。
このアミノ酸は旨味成分の1つで、
イカスミが食材として利用されるのは、
このアミノ酸の旨味を料理に加えるためである。
主に地中海地方で用いられることが多く、
パスタソースやパエリアなどの味付けに用いられる。
日本には、中世にポルトガルの宣教師によって
「イカ墨汁」として伝えられた。
まあ、恐らくはイカスミそのものが持ち込まれたというワケではなく、
イカスミが食材として使えるという知識が、伝えられたのだろう。
江戸時代には、イカスミを用いた郷土料理なども作り出されている。

イカと同じようにスミを吐くタコであるが、
実はこのタコのスミも、イカスミ同様に食べることが出来る。
ただ、イカスミと比べても、アスパラギン酸やグルタミン酸など
旨味成分となるアミノ酸を多く含んでいるのだが、
こちらはイカに比べて取り出しにくく、量も少ない。

またイカスミは食用に用いられるだけでなく、
「墨(スミ)」の名前とおり、顔料としても用いられていた。
イカスミから作られた顔料は、一見、真っ黒の様に思えるが、
実際には黒みの強い茶色である。(黒褐色)
この色を「セピア色」というが、
これはコウイカのラテン語読み「セピア」に由来している。

さて、スーパーで購入した「イカ墨ブラックシーフード」であるが、
買って帰ってよく見てみると、フタの部分に小さな小袋が貼付けてあり、
それに「イカ墨ペースト」と印刷されている。
量はかなり少なく、他のカップ麺で良く見られる「調味油」などよりも
ずっと少ない。
このわずかな量の「イカ墨ペースト」を、仕上げに投入するらしい。
カップのフタを開けてみると、
中は全く普通の「シーフードヌードル」だ。
黒さの欠片も無い。
ひょっとしたら、スープなどの味付けが変わっているのかも知れないが、
この状態では、その辺りの違いは明確ではない。
どうやらここにお湯を入れて3分待てば、
全く普通の「シーフードヌードル」が出来上がり、
そこに前述の「イカ墨ペースト」を混ぜることで、
「イカ墨ブラックシーフード」に変わるらしい。
早速、お湯を入れて3分。
ノーマルな「シーフードヌードル」が出来上がった。
そこに先の小袋を破り、「イカ墨ペースト」を投入する。
乳白色のスープの上に、真っ黒なペーストが乗っかり、
それを箸先で、全体に混ぜ込んでいく。
「イカ墨」の威力は凄まじく、
あっというまにカップの中が黒く染まった。
……。
はっきりいって、見た目は極端に悪くなった。
ひとくちスープをすすってみると、
わずかにイカスミらしき風味が加わっているようだ。
だが、イカスミ投入による風味アップと、
見た目のイメージダウンを、引き比べてみると、
どうも、イメージダウンの比率の方が大きいようだ。
なるほど、これがこの商品の欠点か。

「イカ墨ブラックシーフード」の味わい自体は、
実は普通の「シーフードヌードル」と、そう大きく変わらない。
もし自分の場合と同じように、BIGサイズのものが
100円ほどで売られていれば、買っておいて間違いはないだろう。
複数買いしても大丈夫だ。
「イカ墨ペースト」を入れて気に入らなければ、
2つ目以降は、これを入れずに、
ノーマルな「シーフードヌードル」として食べればいい。

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