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クマ VS ヒト、時間無制限1本勝負〜その1

更新日:

今年、たつの市の防災ネットには、
何度か「クマ出没」を知らせる緊急情報が載った。

もちろん、これまでだってクマの出没はあったし、
たつの市以外の近隣市町村、相生市や宍粟市、姫路市、
上郡町や佐用町などの防災ネットを見てみると、
たつの市と同等か、それ以上の頻度でクマの出没情報が載っている。
たつの市は、山間の新宮町から海沿いの御津町まで、
縦に長細い構造になっているが、クマの出没情報があったのは、
その中でも、もっとも北に位置する新宮町のみである。
ちょっとこれらを書き出してみよう。

・7月21日(金)、午後10時30分ごろ、
 新宮町栗町の施設内において、クマ1頭が目撃された。

・8月29日(火)、午後7時25分ごろ、
 新宮市千本の歩道上において、クマ1頭が目撃された。

どちらも夏期のことで、夜になってからの目撃例である。
クマのサイズ等についての情報が無いので、
クマの大きさを計り知ることは出来ないが、
幸いなことに、どちらの場合も、人が被害に遭うことは無かった。
目撃場所が、比較的近い場所にあることから、
同一個体である可能性も高いだろう。
当然、その後に猟友会などによって射殺された、
なんていう話も聞かないので、問題のクマは現在でも
その辺りに生息しているのかも知れない。
自分はたまに新宮町の山に登ることもあるし、
新宮町の山と、他地域の山は繋がっているため、
その範囲内で、クマの目撃例が増えてきているということになれば、
これはあまり気持ちのいい話ではない。

先日、少しでもクマに関する情報を得ようと、
図書館から「熊が人を襲うとき」という本を借りてきた。
この本は、ツキノワグマ研究家である著者が、
長い時間をかけて、熊が生息している県の図書館を尋ね、
そこでクマの被害を伝える新聞記事を調べ上げたものである。
彼の調べ上げたクマとの遭遇記事は1993件、
そしてその被害者数は、2255人ということなので、
確率的にいえば、1件につき1名以上の被害者が出ていることになる
この本の作者自身、46年間、クマを追い続ける中で
8回ほど襲われた、と書いているあたり、
(それが1993件に含まれているのかは知らないが……)
研究室にこもったり、データをいじっているだけの
学者のいうことよりも、よほど信憑性がありそうである。
本の内容としては、その大半が著者の調べ上げた
クマ被害の詳細と、それに対する著者のコメントとなっている。
それらの類例を統計し、それを著者の意見としてまとめているため、
内容的にはかなり実践的で、信頼度の高いものになっている。

この本を見て驚いたのは、
意外とヒトはクマと戦っている、ということだ。
ある者は武器を使い、ある者は仲間を呼び多人数で、
またある者は全くの徒手空拳で。
状況的にいえば、リアルに
「戦わなければ、生き残れない」そのものなわけなので、
「戦う」という選択肢を選ぶのも分かるのだが、
(まあ、「戦わない」という選択肢もあるのだが……)
その記録されている状況は、なんというか、
お互いが必死ではあるものの、どことなく滑稽な部分もあり、
また、どこか深く考えさせられる部分もある。
まあ、自分に害が及ばない状況から、
他者の戦いを眺めているという点からすれば、
これは、ある意味ではプロレスを見ているようなものでもある。
(被害に遭われた方達には、申し訳ないが……)

今回は、この本に納められたクマ遭遇事件をいくつか取り上げ、
これを自分的な、プロレス的な視点で見ていきたい。

最初の事例はこうだ。
「農作業中の女性が襲われ、クマは右足に噛みついて放さず死亡。
 長女も後頭部の皮を剥がされた」
……。
のっけから、エグすぎる事件である。
後頭部の皮を剥がされたという点に至っては、猟奇的ですらある。
実は現在でこそ、この手のエグイ表現は使われなくなっているが、
昔は、平気でこういう生々しい表現が使われていた。
ここで注目すべきは、足に噛みついたまま
ヒトを殺害してしまっていることだ。
恐らくは、噛みつかれたまま逃げることが出来ず、
出血多量で死亡に至ったのではないかと思われる。
クマに襲われ、どこをやられることが多いか?という視点でみれば、
まず一番多いのが頭部、続いて手腕、さらに足となっている。
基本的にクマに襲われた場合、この3部位に攻撃が集中するようで、
これ以外の部位も傷を受けることはあるのだが、その確率は低く、
大方、この3部位に大怪我を負うことになる。
プロレスであれば、頭部への攻撃というのは
それほど集中することはないのだが、
やはり命のかかった実戦は違うということだろう。
頭は、やはりそこが一番の弱点だから、
手足は、突出している部位で、攻撃しやすいということだろうか?
逆に考えれば、クマ対策にヘルメットがかなり有効だともいえる。
また、小型のクマ、若いクマは足へ攻撃して来ることが多いようだ。
これは頭部等へ攻撃が届かないためだろうか。
これまた、足首等をしっかりガードできる厚手の靴や、
丈夫な布地のズボンは、クマ対策として、それなりに有効そうだ。

次の事例。
「田んぼの畦を修理していたら、クマに遭遇。
 通報によって、村人20数人がかりで熊手でクマを撲殺した」
これも古い事件である。
現在なら、動物愛護団体が目を三角にして、抗議してきそうだ。
どうもクマは、相手が多人数だと目移りしてしまい、
積極的に攻撃して来ないらしい。
そのため、この事件ではヒト側に負傷者は出なかった。
まあ、プロレスでいえば、凶器攻撃だろうか?
もっとも、凶器というのであれば、クマの爪や牙なんかも、
これに含まれると考えていいから、人間側が何か得物を使った所で
これを卑怯といわれることも無いだろう。
昔のプロレスでは、悪役レスラーのチームが
相手をリング下に引きずり下ろし、
よってたかってパイプ椅子で叩くなんてシーンがあったが、
イメージとしてはこれを彷彿とさせる。
得物が「熊手」というのも、クマを相手にする武器としては皮肉だが、
長いリーチを活かし、相手の反撃の届かない所から
一方的に攻撃するという点では、戦術的に正しい選択だろう。
昔は、田舎の村にクマなどが出没した場合、
このように村総がかりでこれを撲殺して、その肉を食用にしたらしい。
また、クマの胆は、かなりの高額で取引されていたため、
村にとっては、ありがたい臨時収入になり得たため、
村人総出で、クマを撲殺するというようなことが行なわれていた。
逆にこういうことをしていたからこそ、
クマの方も人間を恐れ、人里に近付かないように
していたのかも知れない。

もちろん、こんな人間に有利な戦いばかりではない。
次の事例を見てみよう。
「キノコ狩りの男性が襲われ、ナタでクマを殴打したが
 腕、顔を引っ掻かれて重傷」
こちらも、ヒトが武器を持って攻撃した例だが、
人数的に1対1の戦いだったようで、クマの反撃をくらい
結果として重傷を負っている。
前例の「熊手」と比べると、武器の攻撃力は高そうだが、
どうやらこの攻撃では致命傷を与えることは出来ず、
かえってクマの逆上を誘ったようだ。
まあ、得物がナタということになると、リーチは短く、
距離的に、クマの方からも易々と反撃を繰り出されてしまう。
そういう場合、一撃で致命傷を与えられなければ、
状況的には、かなりマズいことになることがある。
もちろん、ナタなどの反撃でクマが逃げ出すこともある。
「キノコ採り中に夫がクマに襲われ重傷。
 妻が夫の腰からナタを抜き、斬りつけたらクマが逃げ、軽傷」
これなどは、その典型的な例だが、
こちらでは、2対1という人数的な優位が
クマを去らせた可能性もある。
得物にリーチがなく、人数で優位になっていない場合は、
迂闊な攻撃は避けた方がいいのかも知れない。

今回は数例、クマとヒトの戦いを挙げてみた。
次回もクマとヒトの戦いを、列挙していく。

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