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ハロウィン〜カボチャ

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By: nubobo

前回、「ハロウィン」の成り立ちと、
キリスト教との複雑な関係について書いた。
今回は、この「ハロウィン」に欠かせない
カボチャとの関係について書いていきたい。

前回、「ハロウィン」がもともと、古代ケルト人たちの祭である
「サムハイン祭」であったことを書いた。
この祭は、古代ケルト人たちにとっては、
大晦日とお盆を併せたようなものだったのだが、
日本のお盆とは違い、霊魂の他に、魔女や精霊も
あの世からやってくると考えられていた。
これらの悪霊に対抗する手段として、
彼ら(魔女やお化け)の格好をしたり、夜通しで火を焚いたりした。
前者が後に、「ハロウィン」の仮装の元になり、
後者はカボチャのランタンの元となった。

しかし、ちょっと待ってほしい。
前者が仮装の元になったというのは、スッキリと納得できるにしても、
後者がカボチャのランタンの元になったというのは、
いささか唐突に過ぎる。
その間の課程が見事に跳ばされてしまっており、
何故、カボチャだったのか?ということについても
全く不明なままである。

順序立てて考えていこう。

悪霊たちを寄せ付けないために、
一晩中、火を焚いているというのは結構疲れる。
通常の焚き火では、風が強かったり、雨が降っていたりしたら
火を焚き続けることさえ、困難になってしまう。
だから、焚き火の代わりに、火をランタンで灯し続けるというのは、
理にかなっている。
では、どうしてそのランタンが、
カボチャをくりぬいたものになったのだろうか?

実は、もともと「ハロウィン」のランタンに使われていたのは、
カボチャではなかった。
では何が使われていたのか?というと、それはカブであった。
カボチャの場合と同じように、中をくりぬいたカブを
「ハロウィン」の際のランタンとして、用いていたのである。
どうしてカブをランタンにする、
なんてことが始められたのかは分からないが、
存外、ちゃんとしたランタンを用意できなかった人たちが、
代わりに身近な野菜を使って、
これをランタンの代わりにしたということかも知れない。

どうして、これがカボチャでなかったのか?ということになると、
それは、この祭が古代ケルト人たちによって行なわれていたころ、
まだ、彼らの住むヨーロッパには、カボチャが無かったからだろう。
カボチャは、中南米が原産の野菜である。
当然、コロンブスが新大陸を発見し、
その後に、カボチャがヨーロッパに持ち込まれるまで、
他の野菜が使われていたのは当然といえる。

このランタンが、カボチャ製に変わるきっかけとなったのが、
ヨーロッパ人達によるアメリカ大陸への入植である。
ここで、「ハロウィン」とカボチャが交錯した。
カボチャは、カブに比べても身肉が固く、
サイズも大きく、色もオレンジ色で華やかである。
中身をくりぬいてランタンに加工するのも容易く、
カブで作ったランタンに比べ、見栄えも上々である。
たちまち、アメリカでカボチャを使ったランタンがメジャーになり、
やがてこのカボチャがヨーロッパにも持ち込まれ、
それと一緒に、カボチャのランタンも広まっていった。
カボチャは生命力が強く、わりと簡単に育てることが出来る上、
カブに比べても、遥かに長期間保存しておくことが出来る。
また、実は甘く、しっかりとした食べごたえがあることから、
カボチャはヨーロッパだけではなく、世界中に広まっていった。
(ランタンに使われることの多い、巨大なオレンジ色のカボチャには
 あくまでもランタン用としてのみの用途に用いられる
 味の良くないカボチャもある)

さて、「ハロウィン」ではすっかりお馴染みとなった、
カボチャの中身をくりぬき、顔をつけたランタンであるが、
実はこれには、ちゃんと名前がついている。
その名を「ジャック・オー・ランタン」。
これを日本語に直訳すると、
「ジャックのランタン」とか「ジャックの提灯」ということになる。
この「ジャック」という男の名前が、
ランタンにつけられるようになった話を見てみよう。

その昔、ジャックという名前の、口が巧く、ずる賢い男がいた。
彼は怠け者であったが、持ち前のずる賢さで
悪魔を相手に、十字架を使った罠を仕掛けた。
罠にかかった悪魔に対し、ジャックは
死んでも地獄に堕ちない身にしてもらった。
やがてジャックは死に、死者の門へと赴いたのだが、
彼はそこで、死者の天国・地獄行きを決める聖ペテロをだまして、
まんまと生き返ることに成功した。
生き返ってからも、彼の行状は改まることなく、
最悪な性格のまま人生を過ごし、再び死んで死者の門へと向かった。
そこでジャックはペテロから、
「お前は天国へ行くことも、地獄へ行くことも出来ない」
と告げられ、暗い闇の中を漂うことになった。
そんなジャックを哀れんだ悪魔は、地獄の業火の中から
赤々と燃える石炭を1つ取り出し、彼に灯りとして手渡した。
この灯りをカブの中に入れて、
ジャックは今日も、暗闇の中を1人、歩いているという。

この由来からしてみれば、「ジャック・オー・ランタン」というのは
特にカボチャのランタンだけを指していっているのではなく、
カブを使ったランタンでさえ、この名前を冠していることになる。

さて、先にも書いた通り、ランタンに加工されるカボチャは
大方の場合、お世辞にも美味しいとはいえない味である。
しかし、やはり「ハロウィン」といえばカボチャ、ということで
「ジャック・オー・ランタン」とは別に、
様々なカボチャを使った料理やお菓子が作られている。
その中でも有名なものが、カボチャを使ったパイ、
パンプキンパイである。
北アメリカでは、すっかり定番のお菓子となり、
「ハロウィン」のみならず、クリスマスの際にも作られる。

日本のスーパーの「ハロウィン」コーナーを見ても、
様々なカボチャ味のお菓子が並んでいる。
日本では、カボチャ味のお菓子というのは、
それほど一般的なものではないため、
この時期にしか食べることの出来ないお菓子といってもいいだろう。
ランタンを作ったり、仮装したりはしなくても、
年に1回、タップリとカボチャ味のお菓子を食べて、
季節感を感じてみるのも、いいかも知れない。

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