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笑え!こっくりさん!

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自分が小学生だったころ、
夏休みになると、ちょうど正午くらいから、
TVで「あなたの知らない世界」というのをやっていた。

これは一般視聴者から寄せられた
「心霊体験談」をもとに、再現VTRを作成し、
これを見ながら、ゲストや番組司会者が
コメントを出すという番組であった。
うちの婆さんがこれの大ファンで、
夏休みの正午になると、
いつも婆さんと一緒にこれを見ていた。
さすがに「体験談」だけあって、
どの話も身近な感じがして、
子供心には、とんでもなく恐ろしい番組であった。

ただ、寄せられる話にはいくつかのパターンがあり、
わりとよくあった話としては、

「水子の話」
「丑三つ参りの話」
「狐憑きの話」

などであった。
そしてこれらと同じように、ひとつの定番ものとして

「こっくりさんの話」

があった。
この「こっくりさんの話」は、
大体、やらかすのが小学生くらいの子供だったので、
他の話よりも、いっそう身近に感じられた。
話としては、おもしろ半分に「こっくりさん」をやった
子供が、狐などに取り憑かれたりして、
おかしくなるというのが、多かった。
血まみれの幽霊などが出て来ないので、
見ている側としては、それほど怖い話ではなかったが、
やはり不気味な話ではあった。

さて、ここまで書いておいて今更なのだが、
ひょっとすると、
「こっくりさん」て、何?
と思っている人もいるかもしれない。
自分もやったことが無いので、リアルな体験談は書けないが、
一応、簡単に説明しておこう。

「こっくりさん」は、狐の霊を呼び出して、
占いのようなことをする、遊び(?)である。
は?霊?何、バカなこといってんの、と思われるだろうが、
本当にそういう風に言われているので、
ここの所は突っ込まずに、流してくれると嬉しい。

まず、紙を1枚用意する。
その紙に、鳥居マーク、はい、いいえ、男、女、
0~9までの数字、50音表を記入する。
この紙の上に10円玉を置き、
参加者全員の人差し指でこれを軽く押さえる。
この状態で
「こっくりさん、こっくりさん、おいで下さい」
というと、10円玉が勝手に動き出す、というものだ。
10円玉が動き出せば、こっくりさんにいろいろ質問する。
すると、10円玉がズズッと動いて、
紙の上に書かれた文字の上に移動し、答えてくれる。

……。
それって、誰かが動かしているんじゃないの?
と、思った人も多いだろう。
否定できない。
というより、自分もそう思っている。
しかし一応、公式(?)には狐なり何なりが、
動かしているということになっている。

世間的には、結構流行っている印象だったが、
実際にやっている所を見たのは、2~3回である。
横で面白く見ていると、
「あんたの邪念で、こっくりさんが来ない」
と、邪念呼ばわりされてしまった。
誠に理不尽な言いがかりだが、
そのせいで、こっくりさんの全行程は見たことが無い。

大人になって、今更ながらアレは何だったのだろうと、
ちょっと調べてみた。
紙に鳥居マークが書いてあったり、
やってくるのが狐だったりしたので、
漠然と神道か何かに関係があるのかと考えていたのだが、
調べてみると、全く関係がなかった。
なんと明治17年(1884年)に、
伊豆半島に漂着したアメリカの船員が、
地元の人間たちに、やって見せたのが始まりだという。
お前は漂着そうそう、何をやっているんだと、
突っ込みたくなる。
そう、こっくりさんは日本由来のものではなかったのだ。

こっくりさんは、もともとは西洋で行なわれていた
「テーブル・ターニング」という占いがもとになっている。
これは数人でテーブルを囲み、テーブルの上で手を重ねる。
そうすることによって、テーブルが動いたり、傾いたりする。
あれ?紙に字を書いて置かないの?と思われるだろうが、
「テーブル・ターニング」では、ウィジャボードと呼ばれる
日本の紙と同じような「板」を使う。
書いてあることも、はい、いいえ、アルファベット、数字と、
日本のものに似ている。
ただ、当たり前のことだが、鳥居のマークはついていない。
先に書いた、伊豆に漂着したアメリカ人は、
テーブルの代わりに、
お櫃を3本の竹の棒で支えたものを作り、
これを使って、テーブル・ターニングを行なった。
このとき、お櫃で作ったテーブルが、
こっくり、こっくりと動いたことから、
「こっくりさん」と名付けられた。
これに「狐(こ)」、「狗(く・犬の意味)」、
「狸(り)」の字をあて、「狐狗狸さん」とも書く。
こっくりさんをすると、狐が憑くとか、
低級な動物霊が憑く、などと言われるのは、
この当て字のせいかもしれない。

さて問題は、みんなが手で押さえている
10円玉なりテーブルなりが、
なぜ動くのか?ということだ。

当初は、これが霊の仕業である、と考えられていた。
さすがに現在で、この考え方をしている人は少ないだろうが、
自分が小学生だったころは、
霊の仕業ということになっていた。
この霊の仕業という説を除けば、
潜在意識によるものという説、
筋肉疲労により手が動いてしまう、という説がある。
どちらも、実に科学的にこの現象をとらえているが、
個人的には、誰かが動かしているという説をとりたい。
難しい学問をひねって考えたり、
ましてや「霊」なんてものを持ち出してくるよりは、
よほど現実的でシンプルな答えである。

さて、意外な出自を持っていた「こっくりさん」だが、
先述の名前の由来を見るに、
「こっくりさん、おいで下さい」
というのは、おかしい。
「こっくり」というのは、
簡易テーブルが揺れる音に過ぎないからだ。
狐が憑く、というわけだから、
当然やってきているのも狐だろう。
そうなると、正しくは
「狐さん、おいで下さい」
ということになる。

……いや、そもそもこれはアメリカ渡りなのだ。
そう考えれば、
「カムオン、フォックス」か、
「カムヒア、フォックス」となるのが、正しいはずだ。
それを踏まえた上で、
正しい「こっくりさん」を考えてみる。

テーブルの上に紙を置く。
もちろん、はい、いいえと、他のものも書いてある。
(鳥居は描かない、魔法陣みたいなものを描くと、
 雰囲気が出るかもしれない)
紙の上にコインを置き、
テーブルを囲んだ参加者が指で押さえる。
そして
「カムオン!カムオン!フォックス!」
「カムヒア!カムヒア!フォックス!」
と、英語で呼びかける。
この際、大げさなボディランゲージを心がけると、
ますます本場っぽいことになるはずだ。

……。
どうも、今までの「こっくりさん」と違い、
随分と明るく、おバカで、楽しそうなことになってしまった。

かつての「あなたが知らない世界」の出演者たちは、
危険なので「こっくりさん」をしてはいけない、
遊びで「こっくりさん」をしてはいけない、
と深刻な顔でコメントしていたが、
彼らは、「こっくりさん」がアメリカからやってきたことを、
知っていたのだろうか?
恐らくは、知らなかったのではないだろうか?
だからこそ、正体不明のものを恐れるように、
「こっくりさん」を恐れたのではないだろうか。

どんなに恐ろしげなものでも、真実を知ってしまえば、
恐ろしさがなくなってしまうこともある。
「こっくりさん」は、まさにそういう類いのものだった。

以上、邪念による「こっくりさん」の分析・考察である。

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