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塩○饅頭

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今回はタイトルに伏せ字がある。

「塩○饅頭」

この○の中に何の文字が入るか?

多分、普通の人は、何も思いつかないだろう。

和菓子にそこそこ興味のある人なら、塩『瀬』饅頭と答えるはずだ。

塩瀬饅頭は、日本における饅頭の元祖である。

世界における饅頭の元祖、ということになると諸葛亮孔明が出てくる。

世界最初の饅頭を作ったのは、彼だと言われているからだ。

孔明が作った饅頭は肉まんだった。

肉まんは現代日本でも一般的だが、日本で饅頭と言えば

基本的にアンコの入った饅頭をイメージする。

このアンコの入った饅頭の、一番最初のものが塩瀬饅頭だった。

塩瀬饅頭、というのは饅頭の種類ではない。

「塩瀬」という和菓子屋の、薯蕷饅頭のことをさしている。

この「塩瀬」の初代、林淨因こそがアンコ入り饅頭を作った人間だ。

林淨因。

中国の人だ。

12世紀の半ば、偉い僧侶が日本にやってきた時に、その弟子としてやってきた。

日本の仏教では肉食が禁じられているので、(日本以外では禁じられていない)

中国僧達は饅頭(肉まん)を食べることができない。

この問題の解決策として、林淨因が作り出したのが、日本式饅頭だった。

この時、林淨因が作ったのは、肉まんの代わりになるような塩味の饅頭と、

小豆を煮てつぶしたものに甘葛の汁を加えた甘い餡を入れた饅頭である。

塩味の饅頭は、明らかに肉まんの代用品ではあるが、

甘味餡の饅頭は、当時としては全く新しい味だったはずだ。

これこそ、後に日本のスイーツとしての不動の地位を築く、

日本式饅頭の誕生の瞬間だった。

林淨因は後に日本を去る。

だが、彼の子孫は饅頭屋を始め、現在の「塩瀬」へと続いていく。

彼の生み出した日本式饅頭は、多くの人に受け入れられ、

後に改良されて現在の塩瀬饅頭へと進化していく。

個人的な見解になるが、林淨因の最大の功績は、

小豆と甘味が合うことを発見したことだろう。

彼の作り出した小豆餡は、後の和菓子にとてつもない影響を与える。

何故なら現在に伝わる和菓子のそのほとんどには、

彼の作り出した小豆餡が使われているのだから。

まさに塩瀬饅頭は、現在日本に星の数ほどある和菓子のまさに根源なのである。

さて、塩瀬饅頭についてつらつらと書き連ねた。

これだけなら何もタイトルに伏せ字を使うことなどない。

タイトルの一部を伏せ字にしたのには意味がある。

「塩○饅頭」

この○の部分に「瀬」ではなく、「味」を入れる人がいる。

播州赤穂を中心にした、西播地方の人間である。

この地方に住む人々は、これを見て「塩味饅頭」と呼ぶだろう。

林淨因の作った塩瀬饅頭、そこから数限りなく枝分かれした先のひとつである。

塩味饅頭。

主に兵庫県赤穂市で販売されている和菓子だ。

半球形のピンポン球大の饅頭で、手に取ってみても柔らかさがない。

普通の饅頭と違っている所はまさにそこで、饅頭の皮が落雁である。

落雁とはよく仏前に供えられる、花などの形をした

砂糖と寒梅粉を固めた和菓子だ。

よくお盆の時期には、スーパーなどでも売られているので、

見たことのある人も多いだろう。

かなり堅そうに思えるが、口の中に入れてしばらくおくと、柔らかくなる。

味自体は全く砂糖の味になるので、落雁には和三盆など

良い砂糖を使うことが多い。

この落雁の中に、赤穂特産の塩を混ぜ込むことで独特の風味を出す。

さらに中に小豆餡を包み込むことで、味わいに変化を持たせてある。

江戸時代には、将軍家に献上されていたこともあるらしい。

一応饅頭とは名乗ってはいるが、和菓子の本の中にはこの塩味饅頭を

落雁として紹介しているものもある。

今回はひと文字違いの、2つの饅頭を紹介した。

饅頭界の始祖の直径にあたる、塩瀬饅頭。

かたや進化を続け、落雁の要素を取り入れたハイブリッドな塩味饅頭。

この2つを目の前に並べられ、選択を迫られればどうするか?

もちろん、しれっと両方食べてしまうのが正解だ。

饅頭は怖いのだから、残すなんてとんでもない。

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