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ガス器具展示会で火を再認識する。

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先日、郵便受けを見てみると、
ガス会社からの広告が入っていた。
DMではなく、お手製感溢れるチラシだった。

うちのキッチンコンロはガスコンロだし、
キッチンの蛇口からは、ガスで沸かしたお湯が出る。
風呂場のお湯もガスで沸かす。
うちでガスを使う器具はこれだけだが、
毎日のようにこれらを使って生活している。
我が家にとってガスは、電気とともに欠かせない、
基本エネルギーのひとつである。

広告を見てみると、
最新ガス器具の展示販売を行なうという。
しかし、うちで使っているガス器具は、どれも現役だ。
長らく使用しているが、
その間、故障など一度もなく、元気に働き続けている。
だからこのチラシを見ても、特に食指は動かなかったが、
チラシをよく見ると、こんな一文があった。

『ご来場されたお客様に、食パン一斤プレゼント!』

印刷されている写真で見てみる限り、
パン屋などで売られている、横に長い、
スライスされていない食パンだ。
スーパーなどで売っている食パンの、
3倍ほどの大きさがある。
ひょっとしたら、このパンもガス釜で焼いているのだろうか?
普段、米ばかり食べている自分にも、
そのパンの写真は、かなりウマそうに映った。
かくして、ふらふらと食パンにつられるようにして、
このガス器具展示会に出かけていった。
我ながら、笑ってしまうようなチョロさだ。
食パンプレゼントの企画を立てた人間の、思うつぼである。

ガス器具展示会場である、たつの市青少年会館につくと、
すでにかなりの人数が集まってきていた。
こう断じてしまうのはアレだが、
食パンにつられたチョロ仲間同士ともいえる。
だが会場に着くと、すでに用意されていた食パンは、
すでに全部出払ってしまったらしい。
がっかりしていると、パンは後日、届けてくれるという。
冷やかしで来ている身としては、やや心苦しい所だが、
せっかくなので、会場の中に入ってみることにした。

会場では、様々な器具が並べられ、
メーカーの営業マンたちが、懸命に商品をアピールしている。
「ガス器具展示会」と銘打っているだけあって、
やはりガスコンロの展示数が圧倒的に多く、
それに押されるようにして、ガス給湯器が並んでいる。
ガスコンロの前では、実際に調理をしてみせながら、
営業マンが熱弁を振るっている。
最近は、オール電化の電磁調理器や、
電気給湯器が幅を利かせていて、ガスの立場が危うい。
これらに対抗するべく、
コンピュータやセンサーで制御される、
最新のガスコンロたちが並んでいる。
地震や吹きこぼれなどに反応し、ガスを止めてくれる、
なんとも心強いコンロたちだ。
しかしそれらの最新式のコンロには、
ガス栓の他に、電源が必要となる。
コンピュータやセンサーなどは、電気制御だ。
オール電化や、電磁調理器に対抗するために、
電気の力を借りるというのは、なんとも皮肉なことだ。

会場にはガスコンロと、ガス給湯器の他にも、
様々なアイテムが展示してあった。
ちょっとそれらを挙げてみよう。

米。
太陽光発電システム。
ウォーターサーバー。
トイレ。
掃除機。
大型TV。

思わず、ガス器具の展示場にどうしてこんなものが?と、
首を傾げてしまうようなものばかりだ。
米とウォーターサーバーについては、
ガスを扱っている会社が、
これらの商品も扱っている、というだけの話だ。
だが、太陽光発電システムについては、
ガス会社にとっての怨敵、電気調理器の片割れのようなものだ。
どうしてこの会場に、これがあるのだろうか?
トイレと掃除機、大型TVについては、全くわからない。
最初は、
「ひょっとしてガス式トイレ?」
などという勘違いをしてしまった。
(ちゃんと見てみれば、電気式のトイレだった)
まさか、ガスのエネルギーで便座を温めるわけでもないだろう。

会場を見回してみると、一番多いのが60歳以上の老人たちだ。
安全に配慮したガスコンロの説明に、
目を輝かせるようにして聞き入っている。
若い世代は少なかったように思う。
若い世代にとっては、ガスコンロよりも電磁調理器なのだろうか。
もしそうならば、ガス会社が必死になって、
ガス器具の普及に力を入れるのがわかる。
このまま、世間の流れに任せていては、時代とともに、
どんどんとシェアが少なくなっていくだけだろう。
そうなってしまうと、ガスの未来はなくなってしまう。

会場で見ている限りでは、展示しているガス器具は、
どれも高い安全性を誇っており、
それを説明する営業マンたちも、
安全性について、その性能を力説していた。
やはり「火」を使うということは、
相当に危険な行為だと見られているらしい。
しかし逆にいえば、「火」を使っている点こそが、
電磁調理器がどんなに逆立ちしても及ばない、
ガスの大きな利点であるはずだ。
例えば、「トロロ」の回で書いたように、
食品のヒゲなどを直火で焼いて処理するような真似は、
電磁調理器では、絶対に出来ない。
いわば「火」こそが、ガス最大の弱点であり、
ガス最大の利点でもあるのだ。

今、「火」は世間から追い払われつつある。
家庭で使う様々な器具から、「火」が取り除かれている。
蚊取り線香は、電気式の蚊取りマットへと姿を変え、
仏壇で使うロウソクも、ロウソク型のライトへと姿を変えている。
全ては、「火」が危険である、という思想からきている。
しかし「火」は、太古より人間の側にあり、
その生活を支え続けてきた。
特に「食」と「火」は、切っても切れない関係だった。
今は、その関係すら、切れてしまいそうになっている。

うちのガスコンロはまだまだ現役で、
買い替えを必要とするような状態ではない。
だがいつか、これを買い替えることになっても、
自分はやはり、「火」を使う器具を選ぶだろう。

自分にとって、「火」は調理のベストパートナーだ。

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