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ソロストーブ

更新日:

少し以前のことになるのだが、
インターネットの動画サイトを見ていると、
並んでいる動画の中に、ミョーなものを見つけた。
サムネイル画像の中に、大きな字で「ソロストーブ」と書いてある。

そのサムネイル画像を良く見ると、
木製のテーブルの上に、丸い缶が置いてあり
その中で火が燃えていた。
もっと端的にいえば、業務用の大きめの空き缶の中で
火を燃やしているように見えた。
どうもよく分からないままに、そのサムネイル画像をクリックすると、
動画がスタートしたのだが、どうやらその内容は、
「ソロストーブ」というアウトドア用品の紹介動画であった。

動画の中では、中年の男性が黒い巾着袋の中から
ステンレス製の円筒を取り出し、その中に、
近くで拾ってきた小枝を詰め込んだ後、火をつけていた。
しばらくすると火がおこり、
男性はその円筒の上に、水を入れたケトルを乗せた。
どうやらこれで湯を沸かしてみよう、ということらしい。
だが、パッと見た感じ、ステンレス製の円筒は大きくなく、
むしろ上に乗せられているケトルの方が大きいくらいである。
当然、円筒の中に入れられている小枝の量も、大したことが無いので、
普通に考えてみれば、お湯を沸かすのはちょっと無理のように思える。
だが、見ていると小枝の燃える炎は思いがけず大きく、
ケトルの底面を焙り続けている。
だが所詮、燃えているのは小枝なので、
あっという間に燃え尽きてしまうだろうと見ていたのだが、
存外、炎の勢いは長く続き、小さな枝を2〜3本追加して
ほんの数分のうちに、お湯が沸き立っていた。
まあ、コップ1杯のコーヒーを入れるためのお湯を
沸かしていたようなので、ケトルの中に入っていた水の量も
少なかったのかも知れないが、お湯が沸いた後、
ケトルを下ろしてからも、円筒の中で炎は燃え続けていた。

自分の感覚からすれば、これは驚くべきことである。
我が家でも、畑に撒くための灰を作るために
庭に落ちた落ち葉や枯れ枝を、一斗缶で燃やすことがあるが、
動画で見た程度の量の小枝などは、
それこそあっという間に燃え尽きてしまい、
とてもお湯を沸かすほど、炎が持続することが無い。
一体、あのステンレス製の円筒は、
どういう仕組みになっているというのか?

その動画を見た後、さっそく「ソロストーブ」というワードで、
検索をかけてみると、動画の中で男性が使っていたのと同じような
ステンレス製の円筒の画像がたくさん出てきた。
ものによっては、名前が「ウッドストーブ」になっている。
「ソロストーブ」は「単独の、1人用ストーブ」
「ウッドストーブ」は「木を燃やすストーブ」というような
意味だろうか。
さらに「ソロストーブ」という言葉を調べていくと、
そのものズバリ、「ソロストーブ」という名前の
「ソロストーブ」を販売している会社も存在していた。
その会社のホームページによれば、
「アウトドアの愛好家であったジェフは、限られた装備の中で
 環境にやさしく、効率のよい、軽くて丈夫なストーブが無いものかと
 色々探しましたが、思うようなストーブが見つからず
 結局、自分で作ってみることにしました。
 実はこれがソロストーブの始まりです」
とある。
「ソロストーブ」という会社は、このアウトドア愛好家・ジェフが
「ソロストーブ」を製造販売するために、
立ち上げた会社だったわけである。

最初、「ソロストーブ」の紹介動画を見た中で、
その形状を「ステンレス製の円筒」と表現したが、
ホームページで紹介されている、その内部構造を見てみると、
どうやらこのステンレス製の円筒は、2重構造になっており、
ちょうどステンレス製の円筒が2つ、
重なるような形状になっている。
外側の円筒には、下部に丸い穴がいくつも開けられており、
そこから内部へ、空気を取り込めるようになっている。
内側の円筒は、底の部分に空気を取り入れる吸気口がある他、
上部の縁際に丸い穴がいくつも開けられている。
この2重構造の円筒に、取り外しの出来る「五徳」が付属していて、
これが「ソロストーブ」の全てである。

この内側の円筒の中に小枝などを入れて火をつけると、
火の熱によって空気の流れが起こる。
外側の円筒に開けられた穴から空気が吸い込まれ、
内側の円筒の底の吸気口から、燃焼室へと空気が流れ込む。
それと同時に、外側の円筒と内側の円筒の隙間を空気が上昇し、
内側の円筒の上部に開けられた穴から、さらに中へと流れ込む。
この穴から流れ込んだ空気が、燃焼室の上部で2次燃焼を起こし、
結果として強い火力を発生させているのである。
……。
ここで、ちょっと首をひねった人もいるだろう。
なんだ、2次燃焼って?
この「ソロストーブ」の大きな特徴である2次燃焼だが、
そもそも2次燃焼とは、一体、何なのか?
この「ソロストーブ」でいえば、燃焼室の底から空気を取り込み、
燃焼室内で小枝などが燃えているのが、1次燃焼ということになる。
1次も何も、それが全てだろう?と、思うだろうが、
多くの場合、この1次燃焼からは「煙」が出る。
この「煙」の中には、1次燃焼で燃え切れなかった不純物が
多く含まれている。
そのため、この「煙」をそのまま輩出すると、
まだ燃やすことの出来るものをムダにするのと同時に、
環境を悪化させることにもなってしまう。
この「煙」を再燃焼させることを2次燃焼という。
「ソロストーブ」でいえば、外側の穴から取り込まれ、
内側の円筒との隙間を通って、内側の円筒上部の穴から
高温になった空気が送り込まれることによって、
「煙」が燃焼する、2次燃焼が起こるのである。
つまり「ソロストーブ」の中では、1次燃焼と2次燃焼が
同時に起こっていることになる。
そのため、「ソロストーブ」が生み出す熱量は大きく、
しかも空気の流入量が、穴によって制限されているため、
一気に燃料が燃え切ってしまうことも無く、
高火力を、長時間維持することが出来るのである。

この「ソロストーブ」の説明を見ると、
思わず、なるほど!と思ってしまうが、
それと同時にこんなことも思ってしまう。
「あれ?これ、そんなに構造が複雑じゃないから、
 ひょっとして自分にも、似たようなものが作れるんじゃ?」
そう。
ちょっと大きさの違う、2つの円筒形の空き缶でもあれば、
それを加工して、組み合わせることによって、
同じようなものが作れそうなのだ。
もちろん、製品として販売されている「ソロストーブ」は、
空気の流れや、穴の大きさなど、細かく計算されているのだろうが、
その辺を適当に済ませた「雑」なものならば、
わりとすぐに作れそうである。
幸いに、手元にサイズの違う空き缶が2つあったので、
これに色々と手を加えて、似たような感じのものを作ってみた。

結果的にいえば、出来は微妙な所だった。
最大の問題は、使っている材料が小さいため、
燃焼室に充分なスペースが取れず、着火が非常に難しいこと。
小さな枝をちょっと入れただけで、燃焼室が溢れてしまうので
着火材でも使わない限りは、着火はかなり困難だろう。
もう1つの問題は、外側の缶と内側の缶の間のスペースが大きいため、
ここの空気が暖まりにくく、結果として2次燃焼が起こりにくいこと。
燃焼室で、ある程度の大きな火を起こさないと、
2次燃焼自体が始まらないという、かなり扱いの難しいものが
出来上がってしまった。

まあ、アウトドア(登山)はするものの、
その際に調理をする、ということがないため、
基本的に自分の登山スタイルでは
出番の無いアイテム、ということになるので、
これをさらにどうこうしていくつもりは無いのだが、
まあ、ちょっとした大人の火遊びである。

もちろん、アウトドアで調理を行なうタイプの人にとっては、
かなり興味深い新アイテムであることには、間違いない。

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