雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

植物 雑感、考察

アザミ

投稿日:

前回の、「ヤッホー」連呼を聞いた少し前。

登山口である、岩屋谷公園から舗装された登山路を歩き、
やがて舗装もなくなった辺りを歩いていたとき、
登山道脇に、紫色の花がいくつか咲いていた。
ちょうど花のすぐ下側の部分が丸く膨らんでおり、
その上には、饅頭型のやや平べったい楕円形をした、
紫色の花がついているのだが、
ほぼ全方向に向けて、花と同じ色の突起が突き出しており、
パッと見た感じではウニのようにも見える。
「アザミ」である。

別に登山道に限らなくても、
「アザミ」はあちらこちらで見かけることが出来る。
それこそ、そこら辺の草むらに目をやってみれば、
独特の刺々しい形状をした紫色の花が、
緑色の中で、ひときわ異彩を放っているだろう。
早朝の山道を歩きながら、そういや「アザミ」って、
この季節の花だったっけ?と、首をひねった。
自分は、特に季節の草花に詳しいわけでもないのだが、
「アザミ」などは、何故だかいつでも咲いているような気がする。
特に野生の花を摘んで、花瓶に飾ったりするような趣味もないし、
何より、見るからに刺々しい「アザミ」には、
草刈りなどの特別な理由でもない限り、触ってみようとも思わない。
我が家の庭にでも、「雑草」として生えてきているのなら
話は別だが、そうでもない限りは、
特に関わりあうことのない野草である。
ただ、登山道で気になった、
「アザミ」って、この季節の花だっけ?という疑問については、
一応、調べてみようという気になった。
この辺り、山に登るようになってからは、
若干なりといえども、季節的なものに敏感になってきているようだ。

「アザミ」は、キク科アザミ属に類する、植物の総称だ。
全く同じように見えて、結構、種類の多い植物で、
単純に「アザミ」という名前の品種は存在していない。
主に北半球に広く分布しており、
世界中に250種以上が存在しているとされる他、
「アザミ」の名前を冠していても、
アザミ属に属していないものもある。
国内にも150種類以上の品種があるとされるが、
そのうちの50〜80種は、日本の原生種といわれており、
狭い地域のみに繁茂している、固有種も多い。
多年草なので、毎年地上部分が枯れ果てても、
地中に根が残っていれば、翌年も同じ場所に生えてくる。
花が枯れた後には、タンポポと同じような綿毛状の種を付け、
これを風に乗って飛ばすことによって、繁殖地域を広げていく。
我々が良く目にする「アザミ」の中で、
もっとも一般的なものが「ノアザミ」だ。
これを品種改良し、園芸種にしたものが「ドイツアザミ」である。
なんで「ドイツ」?と首をひねりたくなるが、
それもそのはず、この「ドイツアザミ」はドイツと全く関係がない。
じゃあ、なんで「ドイツアザミ」なんて
紛らわしい名前をつけたんだ?と、突っ込みたくなるが、
実は大正時代、花を売る際に、
オシャレな横文字を入れたいと考えた花商人が、
適当に考えたのが「ドイツ」だったのである。
「ドイツ」という言葉がオシャレなのかどうかは、
大いに疑問が残る所だが、大正時代においては、
オシャレな横文字なんて、その程度のものだったのだろうか?
あるいは、その花商人に
強いドイツコンプレックスがあったのかも知れない。

さて、登山中の自分が、
「アザミ」って、この季節の花だっけ?と首をひねった件だが、
調べてみた所、アザミの開花時期というのは、
情報元によって、かなり差があることが確認できた。
あるウェブサイトでは、開花時期を4〜7月としており、
また別のウェブサイトでは、開花時期を5〜11月としている。
開花している期間も、時期も、えらく差がある。
かたや4ヶ月、かたや7ヶ月。
かたや春から夏にかけてで、
かたや春から晩秋に至るまで。
両者の開花時期を重ねあわせると、ほぼ8ヶ月間である。
1年のうち、実に3分の2が開花時期ということになる。
まあ、この開花期間には、国内に繁茂している
何種類もの「アザミ」の開花期間を重ねあわせたものかも知れないが、
少なくとも、この開花期間を見る限りでは、
ある一定以上の気温があれば、
「アザミ」は花をつけることが出来るということらしい。

この「アザミ」という名前の由来については、いくつかの説がある。

1つは、もともと「アザム」という言葉があり、
この言葉には「驚きあきれる」や「興ざめする」という意味があった。
この花が美しいため、手折ろうとするとトゲに手を刺され、
痛い思いをしたことから「驚き、あきれて、興ざめする」という
「アザム」の言葉から変じ、「アザミ」になったとされる。
また、他の説では、沖縄の八重山地方では
トゲのことを「あざ」と呼ぶことから、
「あざぎ(あざ木)」、つまり「トゲの多い木」と呼ばれ、
これが変化していき、「アザミ」になったというものである。
どちらの説でも、結局は「アザミ」という名前になっているのだが、
その言葉の由来には大きな違いがある。
日本には、はるか昔から「アザミ」が存在していたので、
沖縄の「アザミ」が本土に伝わったとするには、
少し無理があると思われる。
ただ、逆に本土の「アザミ」の名前が
沖縄へ伝わったとも考えにくいので、
恐らくはもともと「アザ〜」という似たような名前であった所が、
いつのまにか「アザミ」で統一されてしまった、というような
話かも知れない。
ただ、どちらの場合にしても、「アザミ」の持つトゲが、
大きな特徴の1つとして捉えられている。

「アザミ」のトゲにまつわる話として、スコットランドの話がある。
かつてスコットランドがノルウェー軍に夜襲を受けた際、
「アザミ」のトゲを踏みつけたスコットランド兵の声で、
ノルウェー軍に追い討ちをかけることが出来た、というものである。
(これとは別に、スコットランドとイングランドが戦争していた際、
 「アザミ」のトゲでスコットランドを守った、という話もある)
これらのエピソードから、「アザミ」はスコットランドの
国花になっている。

日本国内の東北地方の一部の地域では、
この「アザミ」を食べることがあるらしい。
春には「アザミ」の若芽がスーパーマーケットなどに並び、
食用として販売されており、これらは主にみそ汁の具としてや、
天ぷらなどにして食べられる。
また根も食べることが出来、
こちらは「山ゴボウ」や「菊ゴボウ」と呼ばれている。
(ただし、根には強いアクがある)
「アザミ」には、野草独特の苦みがあり、
加熱調理するのであれば、トゲも気にならなくなるらしい。

そんなわけで日本に繁茂している、ほとんどの「アザミ」は
普通に食べることが出来る。
え?ホント?じゃ、ちょっと食べてみるか、と思った人もいるだろうが、
その際は、軍手などを着用して、しっかりとトゲ対策をしておかないと、
思わぬ「痛い目」にあうことになるだろう。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-植物, 雑感、考察

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.