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タワーマンション火災

更新日:

先日、TVのニュース番組を見ていると、
イギリス・ロンドンの西部で発生しているタワーマンション火災が
中継されていた。

現地は深夜12時をまわった深夜らしく、辺りは真っ暗なのだが、
その中で、巨大なタワーマンションが燃え上がっていた。
それもただの燃え上がり方ではない。
燃えている姿を見る限りでは、マンションのほとんどの窓から
炎の色が溢れており、外壁も派手に燃え上がっている。
言葉は悪いが、これ以上はないというくらいの丸焼けである。

正直言って、最初に燃えているタワーマンションを見たとき、
「え?なんでこんなに燃えてんの?」と、
思わず首をひねってしまった。
無論、大なり小なり差はあるかも知れないが、
どんな大きなビルであっても、どこかから出火した場合には、
ただちに消防署に連絡が行き、消防隊が駆けつけてくる。
それこそ火災が確認され、通報されてからは、
ものの10分とかからないうちに消防隊が駆けつけ、
ビル内に乗り込んで、ただちに消火を開始する。
少なくとも、かなりの時間、
火災を放置したままにしておかない限りは、
ビル全体に火が回って、全ての部屋が燃えるなんていうことは
起こらないはずである。
実際、日本でも大きなビルで火災が発生することもあるが、
そういう場合でも、建物全体が炎上するなんていうのは
見たことがない。
大方、2〜3フロアの一画が燃えるかも知れないが、
ほとんどの場合は、その程度の類焼で食い止められる。
だが、今回のイギリスのタワーマンションの場合、
まるで消火活動をせず、燃えるに任せるままにしてしまった如く
見事にビル全体が燃え上がってしまっている。
一体全体、何が起こったらこんなことになってしまうのか?

そのままニュースを見ていると、色々な情報が入ってきた。
それによると、驚くべきことに、出火からほんのわずかな時間で、
火がビルの全体に燃え広がったという。
いやいやいや。
タワーマンションというのは、鉄筋コンクリートで出来ている。
いくらどこかで火が出たといっても、
それが易々と建物全体に広がる、なんていうことは無いはずだ。
紙と木でできた、日本の古い家ではないのである。
だから、あまりに派手なビルの燃え方を見た当初、
自分はちょっと前の事件のように、今回の火事も、
テロではないのかと思ってしまったのである。

自分と同じように考えている人は多かったようで、
この火事を伝えるネットニュースのコメント欄には、
「どうして、こんな酷い燃え方をしているんだ?」
「ひょっとして、これはテロではないのか?」
という意見も、多く見られた。

しかし、時間が経つにつれ、新しい情報が伝えられた。
それによると、今回、火災の起こったタワーマンションは
1年ほど前に大規模な回収が行なわれ、
外壁なども張り替えられたという。
その際、張り替えられた外壁が、見栄えを重視した
燃えやすい素材が使われた、というものであった。
なるほど、確かにあの燃えていた様子を思い返してみると、
ビルの外壁が、異常なほどの炎をあげていた。
普通、鉄筋コンクリート造りのビルが燃えたとしても、
あのように直に外壁が燃え上がるようなことは、そうそう無いだろう。
さらに、この外壁と建物の間に空間が出来ており、
より、燃えやすくなっていた可能性があるという。
……。
こうなってくると、この災害については
「人災」だったのではないか?という疑問も出てくる。
だが、時間が経つにつれ、さらに驚くべき事実が明らかになる。

なんと、建物に備えつけられていた火災報知器が作動せず、
さらにスプリンクラーのような消火設備も、
取り付けられていなかったという。
火災が起きたのは、現地時間の午前1時ごろで、
4階で冷蔵庫が爆発して、火が出たらしい。
冷蔵庫が爆発するというのも、突っ込みどころ満載だが、
問題は火災の発生した時間である。
午前1時ごろといえば、もう、マンションの住人のほとんどが
すでに床についている時間である。
そんな時間に火事が起こり、もし火災報知器が作動しなければ、
火災が起こっていることにすら、気がつかない人がほとんどだろう。
27階建てのタワーマンションの、
4階という低層階で燃え始めた火は、
燃えやすい外壁を一気に伝わって、上層階に燃え広がる。
火災報知器が作動しなかったとすれば、
多くの住民が火災に気がついたのは、火と煙がやってきてからだろう。
スプリンクラーが作動して、火が広がるのを抑えていたならば、
この段階でも避難することが出来ただろうが、
これが無かった以上、すでに通路や階段は火の海だったと思われる。
そうなってしまうと、火事に気付いても、
すでにその段階で、避難が不可能ということになってしまう。
現場を目撃していた付近住民の話によれば、
窓や屋上から灯りを振り、助けを求める様子も見られたという。
さらにやりきれないことには、何人もの追いつめられた住人が、
ビルから飛び降りた姿も目撃されている。
そのまま火の海の中に留まっていては、間違いなく命を落とす。
しかし、ビルから飛び降りたとしても、
やはり地面に激突して命を落とす。
だが、少なくともビルの下には救急車も消防も来ているのである。
ひょっとしたら、重傷でも命さえあれば、
すぐさま病院に運んでもらえて、万が一にも助かるかも知れない。
そんなかすかな希望にすがって、高層階から飛び降りたとすれば、
とんでもなく過酷な二択である。

だが実際、燃え続けるマンションの中に居続けても、
助かる見込みは少ない。
彼らが住んでいるのはタワーマンション。
それも27階建てという、高層建築物なのである。
地上からは懸命の放水によって、消火作業が続けられているが、
消防車のポンプが水を飛ばせるのは、せいぜい10階程度である。
それより上を消火する場合は、ホースを担いで建物の中に入り、
上層階まで登っていかなければならないが、
ビル全体が炎に包まれ、建物の崩壊の危険もあるとなれば、
消防隊員を建物内に突入させることも出来ない。
そうなるともう、出来るのは火が燃え尽きるのを待つくらいだが、
それまでに、確実に命は無くなっているだろう。

このタワーマンション火災発生から2日。
燃え続けた火はようやく消し止められ、火災は終わったが、
残っているのは、真っ黒に焼け焦げたビルのみである。
後は、消防隊員が焼け跡の調査に入るだけだ。
すでに30人以上の住民の死亡が確認されているが、
まだまだかなりの数の住民が、行方不明になったままである。
あまり考えたくはないが、その大半は、
この焼け跡の中で発見される可能性が高い。
ロンドン警察のカンディ署長は15日、
死者は100人を超えるか?という質問に対し、
「3桁に達しないことを祈りたい」と答えていたが、
もうここまでの大被害になると、3桁に達していようが、いまいが、
正直、全く関係が無いようにも思える。

このタワーマンション火災が鎮火した現在、
住民からは、行政に対する怒りが噴出している。
以前から求めていた防火対策が施されなかったこと、
外観のみを重視して燃えやすい外壁を取り付けられたこと、
さらには火災が起きた際、部屋の中で待機するように
行政から指導されていたことなど、
被害にあった住民が激怒するのは、無理もない話である。

イギリス政府は、被災者のために
およそ7億円の支援を行なうことを決定したが、
住民らの心の中の怒りの火は、まだまだ鎮火することは無いようだ。

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