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緑のアジサイ

投稿日:

6月に入り、日本各地で梅雨入りが発表されている。

今年も、ジメジメとした雨の日々が続くのかと思うと、
結構、憂鬱な気分になってしまうのだが、
一時でも、そんな気分を晴らしてくれるのが、
淡いパステル調の色彩を見せる「アジサイ」である。
白、ピンク、青、紫と、小さな花が寄り集まったその姿は、
ジメジメした梅雨時の、一時の清涼剤である。

その「アジサイ」に、異変が起こりつつあるという。

先日、TVでこんなニュースが流れた。

「緑に変色… あじさい祭りも中止
 見頃を前に病気流行」

宮崎県の、ある「アジサイ」の名所で、
花の色が「緑色」になる病気が発生。
これが栽培されている「アジサイ」に広がって、
かなりの数の「アジサイ」が緑色になってしまったという。
……。
それって、あれじゃないの?
たまに白いアジサイが、ほんのりと
緑色を帯びていることがあるけど、それのことじゃないの?と、
思う人もいるだろう。
確かに、白いアジサイの場合、咲き始めのころなどは
花がうっすらと緑色を帯びていることがある。
これは花に葉緑素が含まれているためで、
花の成長とともにこれが分解され、本来の白い色に変化していく。
ピンクや青、紫の花にしても、やはり咲き始めのころは、
葉緑素の影響で緑色を帯びているのだが、
白い花の場合ほどは、目立たないようである。

ともあれ、もともと「アジサイ」という花は、
緑色を帯びている場合が多いので、
花が緑色になるといっても、
それほど深刻には受け止めないのかも知れない。
それに「アジサイ」には、花が「緑」色になる品種も存在している。
これなどは、病気に罹っているわけではなく、
全く健康な状態で、「緑色」の花を咲かせるのである。
なんだ、それじゃあ、病気のアジサイと、緑色のアジサイと、
見分けられないじゃないか、ということになるのだが、
写真で病気のアジサイと、緑色のアジサイを見比べてみると、
その緑色の具合が、かなり違っている。
もともと緑色の花をつけるアジサイの花は、
白いアジサイの咲き始めの様な、
うっすらとした淡い緑色を帯びている。
早い話、咲き始めのころの色を、維持し続けている感じだ。
これに対し、病気で緑色になったアジサイの色は、
恐ろしく鮮やかで、はっきりとした緑色である。
その緑色の具合は、「葉」のそれとほとんど変わらない。
もし、アジサイが病気に罹り、この「緑」色の花になった場合、
周囲の色にキレイに溶け込んで、花が無いように見えてしまう。

花が、まるで「葉」のような緑色に変化することから、
この病気は「葉化病」と呼ばれている。
「葉化病」は、ファイトプラズマと呼ばれる
細菌が原因で起こる病気で、感染すると
花が葉のような緑色になり、数年後には枯死してしまうという。
まるでヒーロー番組の必殺技のような名前の細菌だが、
ファイトプラズマが引き起こす病気は、かなりエゲツない。
一度、株がファイトプラズマに感染し、「葉化病」を発症すれば、
これを治療する方法というのは、一切なく、
出来ることといえば、「葉化病」にかかった株を根から引き抜き、
焼却してしまうことだけである。
感染すれば、必ず死ぬという意味では、
ある意味、人間の「癌」などよりも、タチが悪い。
もし、この「葉化病」に感染したアジサイの株を
そのままにしておけば、このファイトプラズマは
近くの健康なアジサイにまで感染する。
ヨコバイなどの昆虫によって、菌が媒介されるので、
「葉化病」に罹ったアジサイを放置しておくと、
思った以上の勢いで、広まってしまうこともあり得る。
もし、アジサイが「葉化病」に感染した、ということになれば、
一刻も早い対処が必要になってくるのだが、
先にも書いたように、アジサイの中には
「緑」色の花をつける品種もあり、
他の色のアジサイも、咲き始めのころは「緑」色を帯びているので、
その辺の判断が、即座に下しにくい。
これは本当に「葉化病」なのか?と観察しているうちに、
感染を拡大させたということも、あり得るのである。

6月に入ると、あちこちの家の庭先で、アジサイが花をつけ始める。
我が家の庭にはないものの、
近所の家の庭には、大きなアジサイが一株、植えられている。
自転車で近所を走ってみれば、それこそ、アジサイを植えている家は、
数えきれないくらい存在している。
これには理由がある。

その昔、「アジサイは死者に手向ける花」などと言われ、
(だから、現在でも、アジサイを多く植えているのは寺が多く、
 各地にアジサイ寺が存在している)
庭にアジサイを植えることは、忌諱される傾向があったのだが、
時代が進み、その手の言い伝えが「迷信」だとされるようになると、
アジサイは手軽な花として、庭に植えられることが増えた。
なんといってもアジサイは、挿し木によって、
わりと簡単に増やすことが出来る。
花の季節が終わった後、剪定をして枝を落としたら、
その落とした枝を地面に挿しておくと、
それで根付くことも多いのである。
一度根付いてしまえば、後は特に手を入れなくても
毎年、キチンときれいな花をつけてくれる。
(かつては、我が家にもアジサイの株があった。
 ちょうど畑の隅に植えられて(?)いたのだが、
 かなり大きく育ち、毎年の剪定も大変なので
 掘り起こして処分してしまった。
 今考えると、ちょっともったいなかったかも知れない)

ジメジメとした梅雨時のうっとおしい季節に、
涼感溢れるパステルカラーのアジサイは、ベストマッチだ。
庭に2〜3株植えておけば、それなりに格好もつく。
そんなワケで、アジサイはあちこちの家の庭に増えていったのだが、
今回のニュースを見る限りでは、
そのアジサイに、恐ろしい病気が流行りつつあるようだ。

現在、我が家の周りのアジサイたちは、ちょうど咲き始めくらいで、
多くの花は、まだ「緑」色を帯びている。
その「緑」色が、一刻も早く、ちゃんと消えてくれるように、
ただ祈るばかりである。

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