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電動アシスト自転車〜その2

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前回、日本国内で急速にそのシェアを伸ばしつつある
「電動アシスト自転車」について書いた。
今回は、その視点を海外に向けて、
他国の「電動アシスト自転車」について、書いてみたい。

さて、「外国」で「自転車」ということになると、
パッと頭の中に思い浮かぶのは、2つの地域だろう。

1つはヨーロッパ。
彼の地では、世界的に有名な「ツール・ド・フランス」を始めとした、
有名な自転車レースの行なわれ、これらに対する市民の関心も高い。
自転車の歴史は、いまだ200年ほどとかなり短いが、
その自転車が初めて作り出されたのも、
ヨーロッパ(より正確に言うのであれば、
1818年のドイツでのことである。つまり来年は、
自転車生誕200周年の記念年にあたるというわけである)で、
いわばヨーロッパは、自転車におけるパイオニア的な土地なのである。

ここで、少しだけ話を脱線させよう。
今、これを読んでいる人の中には、
自転車の歴史が、未だ200年に及ばないことを知って、
意外に思っている人もいるだろう。
なんといっても、「車輪」の歴史は古い。
紀元前5000年ごろにはすでに発明されており、
紀元前3700年ごろには、荷車として用いられていたというから、
(もっとも原始的な車輪は、轆轤として用いられていた)
コロコロと回る「タイヤ」には、ほぼ5700年近い歴史がある。
この5700年の歴史のうち、5500年間は、
4つの車輪か、もしくは車軸で平行に繋がれた2つの車輪としてのみ
使われてきていたということになる。
自転車は、車輪2つを縦に固定し、
これを人力で回転させる装置を取り付けたものである。
一見した所、非常に原始的な仕組みの様に思えるのだが、
自転車の基本的な原理には、
「縦に配置した2つの車輪を回転させると、
 横方向にも安定した力が生じる」
というものがある。
人間が、この車輪の不思議な原理を発見したのは、
かなり遅かったのである。
「自転車」が初めて作られたのが、
「自動車」の後であった、という事実が、
2輪車の原理が、いかに新しいものであるかを示している。
この不思議な原理によって成り立つ、
単純極まりない乗り物は、わずか200年の間に長足の進歩を遂げた。
そしてそれは、人々のもっとも身近で手軽な「足」として、
世界中に広まっていった。
その自転車200年の歴史の始まりの地こそが、
ヨーロッパなのである。

さて、先にも書いたように、そういう自転車発祥の地ということで、
ヨーロッパには、100年以上の歴史を持つ自転車レースもあり、
人々の関心も非常に高いのだが、
近年、この自転車レースに「電動アシスト自転車」を使った不正が
忍び寄っているという。
……。
「電動アシスト自転車」を知る人ならば、
いやいやいや、とツッコミを入れているかも知れない。
つまり、どんなアホな審判でも、
でっかいバッテリーやら何やらをゴテゴテ付けた自転車を
見逃すはずがないじゃないか、と。
なるほど、確かにこれは「電動アシスト自転車」を
見慣れている人なら、誰でも抱く疑問だろう。
それでなくても、自転車レースで使われるようなスポーツ自転車は、
走るのに必要のない余計なパーツを極力排し、
徹底した軽量化を図っているため、非常にスリムになっている。
それに比べ「電動アシスト自転車」は、
大きなバッテリーを始め、足回りがゴテゴテしているのが普通である。
スポーツタイプの「電動アシスト自転車」でさえ、
ある程度の容量のあるバッテリーを取り付けなければならないため、
やはりそこは、ノーマルの自転車と比べても
その違いは一目瞭然である。
それで、一体、どうやって不正をするというのだろうか?

実は、「電動アシスト自転車」が搭乗者をアシストする方法には、
主に2つのパターンがある。(日本では)
1つはチェーンを引っ張ることによって、アシストしてくれるもの、
もう1つは、クランク軸を直接モーターで回すタイプである。
では海外では?ということになると、
これにさらに2つのパターンが加わる。
ハブ軸を直接回すものと、
シートチューブにドリル型のモーターを仕込むものだ。
クランク軸とは、ペダルの中心にある軸で、
ハブ軸とは、車輪の中心にある軸である。
シートチューブとは、サドルからクランク軸までを繋ぐ
フレームのことで、ここにモーターを仕込むということは、
これもクランク軸を直接回すタイプの一種ということになる。
……そう。
勘のいい人は、すでにお気づきだろう。
このシートチューブ内にモーターを仕込んであるタイプの場合、
後はバッテリーさえ、うまく隠してしまえば、
全くノーマルの自転車と、変わらない見た目になってしまうのである。
仮に、かなり細長い形状のバッテリーを作り、
同じようにフレームの中に入れ込んでしまったら……。
基本的に、「電動アシスト自転車」には
小さな操作パネルもつくのだが、そんなものなら隠すのは容易い。
最悪、オンオフのスイッチだけを、
別のものに偽装して取り付けても良い。
実はすでに、この手の「電動アシスト自転車」を使った不正が
自転車レースの中で起こってしまっているのだ。
前回書いたように、本来、「電動アシスト自転車」は、
ペダルを漕ぐ力に応じ、それに対応した力でアシストをしてくれる。
早い話、「1」の力でペダルを漕ぐと、
「2」の力でアシストしてくれ、結果的に漕ぐ力は「3」になる
というようなものである。
小型化したモータや小型のバッテリーで、
どれくらいのアシスト力が得られるのかは分からないが、
たとえそれが、たった「1」の力であったとしても、
スポーツ選手の力は、単純に2倍になることになる。
仮に、どんなキツい薬品を使って選手にドーピングしたとしても、
その力が2倍になる、なんていうことは無いだろう。
そう考えれば、この「電動アシスト自転車」を使った不正が、
いかにエゲツないものであるかがわかる。

かつて、スイス出身のロードレーサー・カンチェラーラが、
試合中に、カメラでも追いかけきれないほどの猛アタックを見せ、
一気に後続との距離を引き離したことがあった。
そのあまりの速さに、自転車への不正な細工が疑われ、
試合後に、自転車への調査が行われるということがあった。
もちろん、不正な細工などは何も見つからず、
結果としてこの一件は、カンチェラーラの名声をグンと高め、
その凄さを語る伝説になっただけであったが、
そのときの笑い話が、笑い話で済まない時代になっているのである。

今後は、国内外の自転車競技において、
この手の「電動アシスト自転車」を悪用した不正が
増えてくるかも知れない。
選手達にはより高いモラルと、
大会運営者達には、より厳しいチェックが求められるようになる。

今回は、自転車発祥の地・ヨーロッパにおいて
「電動アシスト自転車」が生み出す、負の側面について書いてみた。
次回は、もう1つの自転車で有名な国の
「電動アシスト自転車」事情について書いていく。

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