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電動アシスト自転車〜その1

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自転車で図書館に行き、駐輪場に自転車を停めて
ふと周りを見回してみると、
いつも何台かの、「電動アシスト自転車」が停まっている。

自分がよく行く揖保川図書館は、
揖保川沿いのアクアホールという施設の3階にあるため、
駐輪場はこのアクアホールのものを使うことになる。
ここの駐輪場はコンクリートの壁に屋根のついたもので、
チェーンロックをかけられるように、
壁際に金属製のバーが設置してある。
かなりしっかりとした造りの、立派な駐輪場なのだが、
残念なことにここに停まっている自転車の数は、
いつも、ほんの数台だけで、駐輪状況はガラガラの状態である。

どうしてこういうことになるのか?といえば、
この揖保川図書館(と、いうよりアクアホールか)を
利用する人たちは、そのほとんどが車でやってくるからである。
アクアホールには、かなり広い駐車場が2つあるため、
マイカーでやってきても、駐車場が満車で
停められないなんていうことは、まず起こらない。
(アクアホールでイベントが行われる場合は、
 その限りではないが……)
で、あれば、みんなマイカーでやってくるのは、当然のことだろう。
龍野図書館や新宮図書館などは駐車場が狭く、
車で行っても、これを停める場所が無いようなこともあるが、
揖保川図書館では、まずそういうことは起こらない。
広大な駐車場があるために、運転にあまり自信のない人でも、
他の車に気を使うことなく、自由に駐車することが出来る。

そういうわけもあって、揖保川図書館の駐輪場には、
いつも数台の自転車しか停まっていないのだが、
その数台のうち、2~3台が「電動アシスト自転車」なのである。
ちょうどサドルの下辺りに、大きく特徴的なバッテリーがついていて、
それが「電動アシスト自転車」であることは、一目で分かる。
この揖保川図書館の駐輪場を、
世間の縮図とするのはちょっと乱暴だが、
ここの様子を見る限りでは、世間に出回っている自転車のうち、
3分の1ほどが、「電動アシスト自転車」だということになる。

「電動アシスト自転車」というのは、
電気の力によってモーターを回し、
人間が自転車を漕ぐのを「アシスト」してくれる自転車のことである。
以前は「電動サポート自転車」と呼ばれていたこともある。
あくまでもモーターの力は補助的なものであって、
メイン動力である「人力」を、助けるというのが、その建前である。
では、この「電動アシスト自転車」についているモーターは、
一体どれくらいの力で、人間をアシストしてくれるのか?

実は、これはかなり厳密に決められていて、
人間の力を「1」とした場合、
モーターが出していいのは、最大で「2」の力までである。
もちろん、常時、「2」の力でアシストしてくれるわけではない。
自転車が走り出して、時速10kmになるまでは
「2」の力でアシストしてくれるのだが、
スピードが時速10kmを超えると、
徐々にアシストの力は弱くなっていく。
大体、時速17kmくらいで、アシストの力は「1」になり、
時速24kmを超えると、アシストの力は無くなってしまう。
つまり時速24kmを超えた時点で、
「電動アシスト自転車」は、ただの「自転車」になってしまうわけだ。
(もちろん、モーターやらバッテリーやら、
 重量のかさむ機械が付属しているので、
 ただの自転車よりは、走りにくいものになるが……)
もちろん、ここでいう「1」や「2」の力というのも、
センサーによってペダルを踏む力が計測され、
そこから出された数字である。
弱い力でペダルを漕げば、弱い力でアシストされ、
強い力でペダルを漕げば、強い力でアシストされる。
もちろん、強い力だと自転車はあっという間に加速して、
時速10kmを超えるので、そこからは
アシスト力が下がっていくことになるが……。
だが「電動アシスト自転車」が、
「2」の力でアシストしてくれるようになったのは、
実は比較的最近のことで、2008年のことである。
「電動アシスト自転車」が初めて世に出た1993年から11年間は、
あくまでも人の力「1」に対し、
「1」までのアシスト力しかなかった。
これは技術的な問題云々の話ではなく、
日本の法律でそう決められていたのである。

もちろん、これには理由がある。
基本的に自転車というものは、車道を走らなければならないのだが、
日本ではどういうワケか、自転車が歩道を走っても
あまり厳しいことは言われない。
というか、場所によっては歩道を走るように
警察に指導されることもある。
(自分自身、そう指導されたことがある)
世界的に見ても、こういう例はかなり珍しく、
ほとんどの国では、自転車はきっちりと車道を走るか、
あるいは自転車専用レーンを走行している。
恐らくこれは、日本と世界とで、
自転車の捉え方が違っているのだろう。
日本では自転車を、歩行者のパワーアップバージョンとして捉え、
外国では自転車を、自動車のパワーダウンバージョンとして捉える。
同じ自転車であっても、日本と外国とでは、
その立ち位置のカテゴリー自体が、異なってしまっているのだ。
だから日本の自転車は、特に悪びれることもなく歩道を走行する。
この、歩道を走行するという点が、日本の「電動アシスト自転車」に
弱いアシスト力しか許さない大きな理由なのだ。
人が歩いている歩道を走行する自転車に、
強い力を与えてしまえば、歩行者の危険は爆発的に増大する。
そういう日本の自転車事情を考慮すれば、
自転車に強い力を与えないことは、ある意味、当然のことなのである。

では、どうしてこれが「2」に変わったのか?
実は、従来型の、人の力「1」に対して、
「1」の力でアシストする「電動アシスト自転車」では、
坂道などを登る際、どうしてもパワー不足に陥り、
登ることが出来なくなってしまっていたからだ。
自転車に乗って坂を登ることが出来なければ、
どうしたって、自転車を下りて、押して上がるしかない。
そうなると、普通の自転車より遥かに重い「電動アシスト自転車」は、
普通の自転車よりも、過酷な乗り物になってしまう。
ある程度、ペダルを漕ぐ力が強ければ、
相対的にアシストの力も強くなるので、
力のある人は、楽々登っていくことが出来るものの、
逆に力のない人は、弱いアシストしか受けられず、
坂を登れない、ということになるわけである。
これでは全くの本末転倒である。
「電動アシスト自転車」は、
力の弱い人をアシストするためのものではないのか?
そういう声に押されるようにして、2008年、
時速10kmまでの低速でのアシスト力を
倍である「2」にしたのである。
だが将来、「電動アシスト自転車」に乗っている高齢者が
さらに歳を重ね、その力がさらに弱まるようなことがあれば、
もっと「電動アシスト自転車」に力をという声が、
出てくるかも知れない。

現在、自転車に乗らない多くの人は、
「電動アシスト自転車」とは、体の弱った人でも楽に乗れるように
作られており、事実、
そういう人ばかりが乗っていると思っている節がある。
実はこれは大きな間違いで、「電動アシスト自転車」展開に
大きな影響を与えたのは、老人というよりは主婦層である。
それも、小さな子供を育てている、比較的若い主婦層だ。
彼女等は、自転車に子供を1人、ないしは2人乗せて、
幼稚園の送り迎えや、買い物などに出かけていく。
そういう子育て主婦にとっては、自転車にアシストがつくことは、
まさに願ったりかなったりである。
なんせ、日々の生活の中でも大変な自転車の運転が、
格段に楽になる。
一時、自転車に子供を2人も乗せては、車体がふらついて危ない、
という声も上がったが、少子化対策にもなるということで、
子供2人乗せは、認められることになった。
早い話、自転車に乗れる子供の数に、
国の未来がかかっていると判断されたわけである。
そうなってくると、子供2人、大人1人、
さらに荷物を載せた自転車はとんでもない重量となってしまうのだが、
そこの所をカバーする形で、「電動アシスト自転車」が普及した。
(ちなみに子供2人を乗せることによる、車体のふらつきに関しては、
 ハンドル軸上に付ける子供用シートの登場で、
 完全に解決されている)
現在でも、この主婦層というのは、
「電動アシスト自転車」のマーケットにおいて、
大きな部分を占めている。

これとは別に、最近、新たな客層を掘り起こしているのが、
スポーツタイプの「電動アシスト自転車」である。
え?スポーツなのに、アシストしてもらうの?
という気分になるかも知れないが、
実はここ最近、国内外を問わず、
この手の「電動アシスト自転車」が
急激に伸びてきているのである。
たしかに、自転車競技に命を賭けてます、なんていうガチ勢ならば、
「電動アシスト自転車」スポーツタイプは無いかも知れない。
しかし、そうでない場合、
わりとライトなユーザーであれば、
これは結構「アリ」である。
先にも書いたように、「電動アシスト自転車」が
アシストしてくれるのは、漕ぎ出しの部分と登り坂である。
ここの所は、いわば、自転車を漕ぐ上で
もっとも力を必要とする所で、もっとも疲れる所である。
そこの所にアシストが入るとなれば、
正直、これはかなりのアドバンテージだ。
ハイブリットカーだって、発進の部分を電力で行なうことにより、
大幅な省エネに成功している。
これを人間に当てはめてみれば、加速がつき、
スピードに乗った美味しい所だけ自分の足で漕ぎ、
疲れる所には、全てアシストが入るのである。
たまのサイクリングだって、その距離がグンと伸ばせるし、
キツい坂があって敬遠していたコースなども、
難なく選ぶことが出来るようになる。
一気に、そのパフォーマンスが高まるのである。
これほど楽しいことはないだろう。
最近では、各社ともスポーツタイプの「電動アシスト自転車」を
次々とリリースして、市場は右肩上がり状態である。

と、ここまで、「電動アシスト自転車」について、
色々と書いてきたが、これはあくまで日本国内の話である。
実は現在、「電動アシスト自転車」は、
世界的にその需要が伸びつつあるのだが、
次回は、国外の「電動アシスト自転車」について目を向けてみたい。

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