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自分の友人には「食いしん坊」が多い。

料理番組や料理マンガなどに出てくる食べ物を見て、
これを食べてみたいというのは、まだわかるとして、
野生のシカイノシシ、カモやキジスッポンを見ても
食べてみたいという。
いや、野生のシカやイノシシ、カモやキジは
一応「ジビエ」という食材ではあるし、
スッポンは高級料理として、
これを専門に扱っている店もあるくらいだから、
こちらもまあ、分からない話ではない。
(ただ、車にはねられたシカなどを見て、
 「かわいそう」よりも先に
 「持って帰って食べてみたい」になるのは、
 どうかと思うが)
ただ、その対象がヌートリアなどになってくると、
こちらの理解の範疇を越えてくる。
一般的な日本人の感覚でいえば、
ヌートリアなどは、最近、あちこちの川などで増えてきた
不細工な外来生物という認識があるだけで、
これを見て、食べてみたいと食欲を漲らせるというのは、
かなり特異な例といえるだろう。

ただ、そんな友人であっても、かつてイタチを捕獲した際、
食べるか?と聞いても拒否されたし、
屋根裏に巨大なアオダイショウが出没した際も、
これを食べてみたいと言うこともなかった。
自分の感覚からすれば、ヌートリアもイタチもアオダイショウも
同じようなものではないかと思うのだが、
どうもヌートリアと、イタチ・アオダイショウの間には、
友人本人にしか理解できない「壁」があるようだ。

そういう友人だから、もちろん、植物についても
自分の食べないようなものにまで手を伸ばしている。
各種山菜類や野草類については、まだわかるとしても、
芽吹き始めた柿の木の写真を送った際に、
新緑の柿の葉を見て「食べたい」といわれたときには、
さすがにちょっと引いてしまった。
また、この友人に影響されたのか、
別の友人と車で町中を走っていた際、
その友人がキレイな花をつけている藤棚を目にして、
「うまそうだ」と口にしたのを聞いたときには頭がクラクラした。
さすがにそこで出てくる第一声は「きれいだな」ではないのか。
どうも自分の周りには、
ややアレな「食いしん坊」が多いようである。

藤(ふじ)は、マメ科フジ属に属するツル性の樹木である。
ツルは他の木に巻き付きながら登っていき、
その樹上に広がる性質を持っている。
栽培種では、この性質を利用して人工の「棚」に絡み付かせ、
「藤棚」にする場合が多い。
基本的に日光を好む性質であるため、
栽培するのであれば陽当たりのいい場所が最適であるが、
野生のものは日陰からでも陽光を求めてグングン伸びていくように、
日陰に植えても、育たないなどということはない。
大方の藤は、他の木なり、支柱なりに
巻き付くようにして伸びているが、
この巻き付き方には、右巻きのものと左巻きのものがある。
通常「藤」とされているものは、
右巻き(上から見て時計回り)に巻きついており、
これを別名「ノダフジ」という。
これとは逆に左巻きに巻き付いているものは
「ヤマフジ」と呼ばれる別種となる。

開花時期は4月中旬から5月の中旬にかけてで、
紫色の花が、幹の方から先端に向かって咲き進む。
花序は長くしだれており、その長さは20㎝くらいのものから
長いものでは80㎝に及ぶものもある。
花は薄い紫色をしており、「藤色」という色名は
これに由来している。
基本的に花が咲くのは上記の時期に1回だけだが、
夏になると、ほんのわずかながら、新しい枝先から、
花が咲くこともある。
ツルはとても強く、古墳時代の巨大な石棺なども
木ぞりに載せられた後、この藤のツルで作った藤縄で
引っ張られたらしい。

日本に生息している「藤」は、日本の固有種で、
日本が原産国ということになる。
もちろん、日本以外にも「藤」は存在しているが、
それらは日本のものと同じフジ属に属してはいるものの、
別の品種ということになる。
日本国内では、本州、四国、九州などの
低山地帯や林などに分布している。
もちろん、栽培品種も多く、そのほとんどが「藤棚」という形で
栽培されているが、鉢植えでも栽培することは可能である。

最初に書いた通り、この「藤」の花は食べることが出来る。
食べ方として有名なものは天ぷらだが、
それ以外にも酢の物やおひたし、
甘酢漬けにして食べることも出来るようだ。
味の方については、食べた人のほとんどが、
ほんのりとした甘味があると評している。
こういう風に聞くと、思わず「藤」の花を
採りにいきたくなるかも知れないが、当然、公園など
公共の場所に植えられている「藤」の花を採っていると、
管理者に厳しく叱られることになる。
山などで自生しているものであれば、
そう、うるさいことを言われることもないだろうが、
「藤」はその特性から結構な高所に花をつけることが多く、
これを上手く採取するためには、
採りやすい場所に咲いている花を、まず見つける必要がある。
自分の経験からすれば、林道沿いなどには
わりと手頃な花が咲いていることが多いが、
場所によっては、足場が不安定な場所もある。
欲を出して足を滑らせ、
急斜面を転がり落ちるようなことが無いようにしたい。

さて、この「藤」だが、実は花の他に、実も食べることが出来る。
マメ科、というだけあって、細長いサヤの中に
緑色に斑模様のはいったマメが数粒入っている。
ちょっと見には、黒大豆の枝豆のようにも見える。
味わいも枝豆に近いようで、
フライパンなどで炒めて塩をふれば、美味しく食べることが出来る。
だが、油断してはいけない。
実はこの「藤」の実には、毒が含まれている。
毒といっても、命に関わるほどのものではなく、
精々が腹を下す程度のもので、
これとても、ある程度の量を食べなければ効果は出ない。
逆にその昔、その効果を
下剤として利用していたという話もあるくらいだ。
江戸時代には、貴重な糖質として重宝されていたらしく、
当時、「藤」の実を食べることは、当たり前のことだったらしい。

すでに花の季節は終わってしまったが、
秋にはたくさんのサヤをぶら下げる「藤」。
花よりも食べられることの少ないというミョーな実だが、
これを敢えて食べるというのであれば、
それなりの覚悟を持って、自己責任でやってほしい。

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