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氷ノ山登山〜その4

投稿日:

ぎっくり腰と吐き気を抱えながら、苦闘2時間弱、
我々はついに「氷ノ山」の山頂にたどり着いた。

「氷ノ山」の山頂には、はるか遠くからでも見える
とんがり屋根の避難小屋が建っており、その小屋の前に
そこが山頂であることを示す「柱」が立っている。
標高1510m。
兵庫県内においてはもっとも高い山であり、
県境をともにしている鳥取県においても、
「伯耆大山」に次ぐ、第2の標高の山となっている。
兵庫県側、鳥取県側両方から登ってくることが出来るが、
今回、我々が登ってきたのは、数ある登山道の中でも
もっとも初心者向けとされている「氷ノ越登山道」である。
これは「氷ノ山」の西麓、鳥取県若桜町からの登山道になっており、
家族連れなど、かなりの人数がこのコースで「氷ノ山」に登ってくる。

「氷ノ山」の山頂は、なだらかで広々としており、
そこに背の高いササが生い茂っている。
ササの間に、登山道と広場(?)が散在しており、
登山客たちはこの広場の部分に腰を下ろして、昼食を摂ったり
休憩したりすることができる。
さすがに兵庫県でもっとも高い山だけあって、
360度全ての方向に展望が広がり、最高の眺めが楽しめる。
「氷ノ山」の周りの山々は、どれもなだらかな山容の山が多く、
のどかな雰囲気である。
「氷ノ山」を中心とした一部の山々には、
5月初旬の現在でも、しっかりと雪が残っており、
周りの夏山風景とあわせて、登山客に不思議な景色を見せてくれる。
山頂付近は、人が多く訪れるためか雪も完全に溶け切っており、
(少し南へ外れれば、同じような場所でも雪が残っていたが……)
雪の上に座り込んでの食事、ということにはならなかった。
山頂の避難小屋から少し南へ下れば、
展望台と休憩所を兼ねたようなトイレが設置してあるのだが、
どうもこのトイレは季節によって使用不可になるらしく、
我々が「氷ノ山」に登ったときには、
まだ使えない旨の張り紙が貼られていた。
(例年であれば、この時期には使えるようになっているらしい)

食事を摂り、ひとしきり体を休めた後、速やかに下山を開始する。
なんといっても、こちらはぎっくり腰と体調不良だ。
下りにも、それなりの時間がかかることは、容易に想像できる。
(とはいっても、「氷ノ越」で一面の銀世界を目の前にして、
 初の雪山歩きということで、体調不良とかいっている場合では
 なくなっていたのだが……)
腰の痛みのために、スピードの上がらない友人の速さにあわせて、
ノロノロと坂を下って行く。
登ってくる際にも書いたが、頂上から8合目くらいまでは、
比較的、雪が溶け切ってしまっている場所も多く、
安心して下ることが出来るのだが、そこから「氷ノ越」までは
ほとんどが雪上の下りということになる。
ここの所を、ぎっくり腰の友人を連れて、
どのように安全に下るか?ということを考えながら、
8合目の仙谷コースの分岐地点まで戻ってきた。
ここで少々眺めの休憩を取っていたのだが、
その間に自分たちを追い抜いて行く人たちを見ていると、
自分たちが登ってきたルートから、大きく左側に外れて行く人が多い。
もちろん、方向的には仙谷ルートではなく、
「氷ノ越」ルートである。

休憩を終えた我々2人は、
他の登山者が歩いて行った後を追いかけるように、
登ってきたルートから左側に大きくずれて、進んで行った。
すると、どうだろう。
我々が「氷ノ越」から8合目まで歩いてきた雪上ルートとは別に、
もう1本、8合目から「氷ノ越」へ向かうルートが現れたのである。
しかもこちらのルートは、所々に雪が残っているとはいえ、
コースの大部分はすでに雪が溶け切り、
地面が露出しているではないか。
コース自体が周りより一段低くなっているため、
場所によっては雪解けの水がちょろちょろと流れ、
小川のようになっている箇所もあるのだが、
それでも、雪の厚く積もった上を進むよりは、
遥かに安全に下って行けそうである。
我々は、迷わずそのコースを通って下山することにした。

場所によっては、傾斜の急なそのコースを進んで行くと、
我々の前に1つの標識が姿を見せた。
それが、「氷ノ越」登山道の7合目の標識であった。
そう。
なんのことはない。
我々が登るときに通った雪上ルートは、本来の登山道ではなく、
今、我々が下っているこのルートこそが、
本来の登山道だったのである。
では、どうして本来の登山道から離れた雪上に、
登山者の踏み跡がついていて、
多くの人がそこを登って行っていたのか?

実はこれは、雪山登山と夏山登山の、ルートの違いに起因している。
しっかりと決められたルートを、
標識に従って登って行く夏山登山と違い、
雪山登山では、そこまでかっちりとしたルートは定まっていない。
なぜなら、厚く降り積もった雪によって、
夏山登山道に設置されている案内標識などは、
全て雪の下に埋まってしまい、
決められたルートを正確に辿ることは、かなり難しいからだ。
その代わり、というわけではないが、
雪山では背の低い灌木などは
すべて雪の下に埋もれてしまっており、
これらの上を歩くことも可能になるため、
コース取りは、夏山に比べて格段に自由になる。
結果として、雪山の登山ルートは、雪の積もっている状況によって
その時々に、登りやすいルートを自分で見つけて歩くことになる。
普通の登山道が、雪に埋もれてわかりにくくなっている代わりに、
登山道以外の場所も同じように埋もれて、
歩くことが出来るようになっている。
結果として、夏山とは全く別のルートが、
積雪によって新たに作られるわけである。
今回、我々が「氷ノ越」から8合目まで歩いた雪上ルートは、
そういう雪山時期の登山コースの1つだったものだと考えられる。

ともあれ、雪の少ない下山ルートを確保できたことは大きい。
足下は雪解けの水でぬかるんでいるが、
それでも雪の上を歩くよりは、危険度が低そうである。
なるべく、ぬかるんだ場所を避けるようにしながら歩を進め、
ようやく「氷ノ越」の避難小屋まで戻ってきた。
ちょうど「氷ノ越」の少し手前辺りで5合目標識があったので、
下りでいえば、すでにコースの半分を越えたことになる。
「氷ノ越」のベンチで休憩をとった後、
キャンプ場の駐車場目指して、やはりぬかるんだ登山道を下って行った。

結局、ぎっくり腰をかばうようにして歩いていたためか、
友人は膝痛も起こしてしまい、登ってくるとき以上に
ペースを落として下山することになった。
途中、老人や子供にも抜かれながら、ヨタヨタと下山し、
駐車場に辿り着いたのは、
下山開始から3時間近くたったころである。

さて、ぎっくり腰のせいで常時、ペースの落ちていた友人と違い、
初めて雪山に挑戦する緊張感からか、
自分の体調不良は収まっていた(気にならなくなっていた?)のだが、
無事に下山を完了すると、これが一気にぶり返してきた。
結果として、帰りの車の中では、
ぐったりと寝込むような状態になり、
行き帰りと運転してくれた友人には、申し訳ない結果となった。
結局、家に辿り着いて、即座に寝込むことになったのだが、
念のために熱を測ってみると、しっかりと熱も出ていた。
体調不良を押して山に登った「ツケ」だろうか。

全く想定外の展開で、雪山(といっても、本格的なものではない)に
挑戦することになってしまった、「氷ノ山登山」だったが、
今回は山行自体は成功したものの、
ぎっくり腰に体調不良と、コンディションは最悪だった。
これらが悪化することによって、大事になっていた可能性もある。

次からの山行では、
もっと慎重にならなければいけない。

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