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歴史 雑感、考察

バブル

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前回、「チューリップ」について書いた際、
オランダで巻き起こった「チューリップバブル」についても触れた。

人々が「チューリップ」の美しさに狂い、
珍しい花を作り出そうと品種改良に熱中し、
投機家たちは、その球根を高値で買い漁ることによって、
「チューリップ」の球根は、信じられないくらい高騰した。
ヒドいときには、球根1つで家が買えたという。
球根の価格は際限なく上がり続け、
そしてある日、突然この価格が大暴落した。

これだけだと、ちょっと分かりにくいかも知れないので、
これを現代の感覚に直して、話をしてみよう。

今、チューリップの球根の値段が、
ホームセンターの園芸コーナーで
1個100円で販売されているとする。
あるとき、突如として球根の値段が高騰し、
翌日には球根の値段が、1個1000円になっていた。
たった1日で価格が10倍になったわけである。
さらにその翌日、球根の値段は1個10000円になっていた。
またしても、1日で価格が10倍になったのである。
さらに翌日には10万円、さらに翌日は100万円、
さらに翌日には、球根の価格は1個1000万円になっていた。
5日連続で、球根の価格は10倍ずつ上昇しているのである。
当然、ここは明日になると、
球根の価格が1億円になると考える所である。
そう考えた自分は、家を売り、1000万円の現金を作って
チューリップの球根を1個購入した。
何、明日になれば1000万円の球根の価格が、1億円になり、
これを売れば、9000万円のもうけが出る。
しかし翌日、球根の値段は1個100円に戻ってしまった。
手元に1個ある球根の価値が、
一夜にして1000万円から100円になったわけである。
999万9900円の損失ということになる。
まさにシャボン玉の様に膨れ上がった価値が、
パチンと割れてしまったわけである。

オランダで起こった「チューリップバブル」では、
このような目にあった人が、大勢いたということになる。
どうして、このようなことが起こってしまったのか?

先述した例を見ても分かるように、
球根の値上がりの仕方は、全くもって異常というしかない。
(もちろん、話を分かりやすくするために
 かなり極端な値上がりの仕方をさせただけで、
 実際の「チューリップバブル」では、
 もうちょっとゆっくりとした、値上がりだったのだろうが……)
ものの値段というのは、需要と供給の関係、
原材料費や人件費の高騰などによって、値上がりすることもあるが、
投機目的の資金がここに投入された場合、
これらの条件での価格上昇を上回る
異常な値上がり方をすることがある。
その異常な値上がり方が、さらに投機家たちを呼び込み、
それがますます値上がりに拍車をかけることになる。
こういう風に、投機によって
実体経済から大きくかけ離れた勢いで、
ものの価格が上がって行く状態が、
いわゆる「バブル経済」と呼ばれるものである。
「チューリップバブル」の場合、この「もの」にあたるものが
「チューリップ」の球根であったということで、
多くの「バブル経済」では、この「もの」が、
不動産や株式であったりする。

前回書いたように、オランダで起こった「チューリップバブル」が
史上初めて起こった「バブル経済」だったといわれているが、
この「バブル経済」というのは、歴史の上では何度も起こっている。
面白いのは、その全ての「バブル」がはじけて終わっている所だ。
と、いうより、それがはじけて初めて、
それが「バブル経済」であったと、分かるといった方がいい。
つまり、株式なり、不動産なり、チューリップなり、
その価格が上がっているだけでは、それが「バブル」なのか、
実体経済の範囲でのことなのかが、判別できないということらしい。
少なくとも「バブル」の場合だと、投機家たちが過剰に群がり、
激しい売買を行なっているため、
ある程度の見通しはつきそうなものだが、
たとえ投機家たちが蟻のように集っていても、
暴落を伴わない以上は、あくまでも実体経済に則した
経済活動となるらしい。
オランダでの「チューリップバブル」を始めとして、
歴史上の有名な「バブル」を挙げてみると、

・17世紀の日本において、貨幣改鋳によって起こった
 「元禄バブル」
・1719年、フランスのアメリカ植民地開発によって起こった
 「ミシシッピ計画」
・1720年、イギリスで起こり、「バブル」の語源にもなった
 「南海泡沫事件」
・1840年代にイギリスの鉄道施設の際に起こった
 「鉄道狂時代」
・明治時代初期、日本の軍需用に
 ウサギの食肉毛皮需要が高まることによって起こった
 「ウサギバブル」
・1920年代、アメリカのウォール街で起こり、
 世界恐慌の引き金となった「狂騒の20年代」
・1980年代後半から1990年ごろにかけて、
 日本の株と土地が値上がりした、いわゆる「バブル景気」
・2000年代中ごろ、アメリカを中心に起こり
 サブプライムローン問題によって崩壊した「不動産バブル」

などがある。
比較的最近のものでは、いい加減になっているものの、
一定以上過去のものでは、しっかりと名前がついている所が面白い。
ひょっとすると日本の「バブル景気」や、
サブプライムローンの「不動産バブル」についても、
後々、ちゃんとした名前がつけられるのかも知れない。

こうして並べてみて見ると、やはりそのほとんどが
株式や不動産、あるいは土地開発やインフラ整備を
「バブル経済」の原因にしている中、
「チューリップ」を原因とした「チューリップバブル」や
「ウサギ」を原因とした「ウサギバブル」は、
どこかのどかで、ほのぼのとしたものを感じさせる。
(もちろん、これで大損をした人たちにとっては、
 のどかでも無く、ほのぼのもしていないのだろうが……)

「バブル経済」は、その崩壊後に深刻な不景気をもたらすため、
各国とも、これを防ごうと色々な経済政策を行なうが、
現在でも度々「バブル」が起こっている所を見ると、
本質的に有効な対策があるのかどうかは、不明である。
むしろ、インターネットの普及によって、
投機家たちの投機先が広く世界中に広まり、
さらにリアルタイムで株価の状況が見れるようになったため、
ひょっとすると、ますます「バブル」は
起きやすくなっているのかも知れない。
どちらにしても、これから先も「バブル」が発生し、
それがはじけるということは、無くなりそうもない。

個人的な意見を言わせてもらえれば、
「チューリップバブル」や「ウサギバブル」のような、
どこか牧歌的な響きをもつ「バブル」を見てみたい気もするが、
その後に訪れる深刻な不況のことを考えれば、
やはり「バブル」を望むわけにもいかない様だ。

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