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泡盛〜その2

更新日:

前回、友人から沖縄土産に貰った「泡盛」を、
その飲みやすさから、あっという間に飲んでしまった話を書いた。
(もっとも、友人に貰った「泡盛」は、
 50ml入りの小瓶だったため、飲みやすい・飲みにくいに関わらず、
 あっという間に飲み終わることになっていたとは思うが……)

折角、「泡盛」を飲むのだから、
どうせなら「泡盛」がどのような経歴を持つ、どのような酒なのか、
興味の赴くままに調べてみた。
今回は、それらの話になる。

まず、「泡盛」という酒の特徴を挙げてみよう。
細かい特徴は色々あるのだろうが、大きなものだけを挙げてみると

・米(タイ米)を原料にしている
・黒麹菌を用いる
・仕込みは1回だけで「全麹仕込み」という
・単式蒸留器で蒸留する

といった所である。

最初の「米(タイ米)を原料にしている」という点だが、
実は最初からタイ米(インディカ種)を使っていたというワケではない。
琉球王朝時代のことは、はっきりと分かってはいないものの、
どうやら元々は「唐米」と呼ばれる中国産の米や、
朝鮮産の米が使われており、さらにこれに「粟」を混ぜていたらしい。
(「泡盛」の名前の由来説の1つに、
 「粟」を使っていたからというものがあるくらいである)
元々、沖縄の米が使われていたらしいが、明治時代ごろにはすでに
材料米の輸入を行なっていたらしい。
だが、明治時代の末期に「唐米」の値段が上がり、
その代わりにベトナムやミャンマー、台湾など、
アジア各地の米を輸入して「泡盛」の原料に使うようになった。
大正の末期にタイ米(インディカ種)が輸入され、
「泡盛」造りに使われるようになり、
昭和に入るとすっかり定番化してしまった。
それまで使われていたジャポニカ種と違い、
硬質米であったタイ米はサラサラとしており、
米麹にしたときに作業がしやすく、
アルコールの収穫量も多かったのが、その理由らしい。

次の「黒麹菌」を用いる、というものであるが、
これは沖縄の桑の木についていたものらしく、
古くはこれを採取して酒を造っていたようである。
九州などで良く作られる「焼酎」は「白麹菌」、
日本各地で作られている「日本酒」は「黄麹菌」で作られており、
「黒麹菌」で造られている酒というのは、世界的に見ても珍しい。
この辺りは、他ではマネの出来ない「泡盛」ならではの特徴といえる。

この「黒麹菌」を使って作った米麹に、水と酵母を加えて
醪(もろみ)にして、2週間程アルコール発酵させる。
「泡盛」以外の焼酎では、この「仕込み」の行程を
2回に分けて行なっており、
1回の行程で全てを仕込む「泡盛」のやり方は、
「全麹仕込み」と呼ばれ、「泡盛」の大きな特徴となっている。

こうして発酵した醪を蒸留させると、「泡盛」の完成となる。
蒸留の際に使われる蒸留器は、「単式蒸留器」といわれるもので、
これを使って1度だけ、蒸留が行なわれる。
そのため「泡盛」は、分類上、単式蒸留焼酎の一種ということになる。
この単式蒸留焼酎というのは、
かつては「焼酎乙類」と呼ばれていたもので、
ひょっとしたら、こちらの呼び方の方がしっくり来るという人も
多いかもしれない。
この蒸留を何度も繰り返す程、酒の中に含まれている様々な成分が
取り除かれて、純粋なアルコールに近くなっていく。
つまり、蒸留を1回しか行なわない「泡盛」には、
醪の中に含まれている成分が程よく残っているため、
その独特の味わいになる、というわけである。

こうして出来上がった「泡盛」は、もちろん、
そのまま飲んでも良いのだが、これを飲まずに大切に管理しておけば、
酒自体がどんどんと熟成していき、さらに独特の味わいを作り上げる。
そして、その熟成期間が3年を越えたものは
「古酒(クース)」と呼ばれることになる。
造った酒をすぐに飲まず、これを寝かせて熟成させるといえば、
ワインやウイスキーなどを思い浮かべる人も多いだろう。
もちろん、ワインやウイスキーなども、長期間寝かせることによって
熟成が進み、味わいが変化していくのだが、
実はワインやウイスキーの熟成は、樽によって進められており、
ひとたびこれを瓶詰めしてしまうと、
そこからはほとんど熟成が進まない。
「泡盛」はこれらと違い、
酒そのものが熟成を進める力を持っているため、
瓶詰めで購入した「泡盛」を自宅で保管していても、
熟成させることが出来る。
もちろん「泡盛」メーカー各社も、それぞれに「泡盛」を寝かせ、
「古酒」を製造しているのだが、あまりに長期間、
「泡盛」を保管し続けると、アルコール分が減ってしまい、
腐敗してしまうことがある。
これを防ぎ、長期保存を可能にさせたのが「仕次ぎ」という方法だ。
これは一定期間ごとに1つずつ、「泡盛」を瓶で保存しておき、
もっとも古い瓶から一定量取り出して飲用し、
その減った分を1つ新しい瓶から補充し、
その補充した瓶が減った分を、
さらに1つ新しい瓶から補充するという形で繰り返していく。
そうして1番新しい瓶の減った分に、
「泡盛」の新酒を補充するという方法だ。
これを行なうことによって、減ったアルコール分が新たに増やされ、
一定のアルコール分を維持することが出来るようになる。
かつては、この方法で長期保管された200年もの、300年ものの
「泡盛」が存在していたらしいが、
太平洋戦争の沖縄戦の際、これらを保存していた蔵も破壊され、
ほとんどが失われてしまう結果となった。
(ちなみに現在では、ごくわずかに戦火をくぐり抜けた
 150年ものの「泡盛」が、もっとも古い「古酒」であるが、
 これは非売品ということになっているので、飲むことは出来ない)

かつて「泡盛」が県外(本土)へ出荷されていたとき、
売れ残って古くなった「泡盛」が、沖縄へ返品されていたという。
まあ、普通の酒(日本酒)であれば、当然、
古くなれば風味も落ち、味も劣化するので
これを返品するのは普通のことかもしれないのだが、
「泡盛」の場合は、瓶詰めの状態であっても普通に熟成が進み、
味が良くなる。
このことを知らなかった本土の業者が、
わざわざ「泡盛」を送り返していたのであるが、
「泡盛」メーカーにしてみれば、普通の「泡盛」が
より価値のある「古酒」になって返ってくるのであるから、
笑いが止まらなかっただろう。
もちろん、やがて本土の業者も「泡盛」が熟成によって
味が良くなり、より価値のある「古酒」になることを知り、
「泡盛」を送り返すことは無くなった。
売れ残れば売れ残る程、価値が出てくるというのだから、
業者にとってはありがたい商品に違いない。

さて、今回は「泡盛」の特徴、製造工程などを紹介した。
次回は歴史的な観点から「泡盛」を見ていこうと思う。

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