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帰ってきた(?)ウルトラマン

更新日:

By: Joe Wu

特撮ヒーロー番組のタイトルというのは、非常に単純だ。

一部の例外を除いて、そのほとんどが
「主人公の名前=番組タイトル名」
という図式になっている。

ちょっと変わったパターンとしては、
主人公の名前に「戦え!」などの言葉がついている場合や、
主人公の二つ名とも言える
「愛の戦士」やら「正義の使者」などという肩書きが、
付け加えられているものだろう。
これらの肩書き付きの場合、作品中で主人公が名乗りを上げる際に、
この肩書きも含めて名乗りを上げることが多い。
本来であれば、こういう二つ名の様な肩書きは、
主人公が自ら語るものではなく、
主人公の周りの人間たちが、畏敬の念をこめてつけるものなのだが、
これが特撮ヒーローとなった場合、
主人公自ら、「人呼んで〜」などと肩書きを口にする。
面白いことに、主人公が名乗りの際、
「人呼んで〜」などと、肩書きを口にしたとしても、
実はその肩書きを、作中において、誰も口にしないようなこともある。
そういう場合、見ている側としては、
何ともいえない気分になってしまう。

さて、特撮ヒーロー番組の2大看板作品とも言える
「ウルトラマン」シリーズと、「仮面ライダー」シリーズにおいても、
「主人公の名前=番組タイトル名」という図式は、
しっかりと踏襲されている。
まさに特撮ヒーロー番組のお手本、といいたくなるのだが、
実はそのお手本の中に、1つだけおかしな例外がある。
それが「ウルトラマン」シリーズの第3作目、
「帰ってきたウルトラマン」である。

この「帰ってきたウルトラマン」は、
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」に続く、シリーズ第3作目だ。
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と続いた後に
「帰ってきたウルトラマン」とくれば、
当然、これを初めて目にした人は、
第1作目のヒーロー「ウルトラマン」が帰ってきて、
第3作目の主人公に返り咲いた、と思うだろう。
だが、「帰ってきたウルトラマン」で登場したウルトラマンは、
明らかに第1作「ウルトラマン」で登場した彼とは違っていた。
もちろん、顔や必殺技の数々など、
第1作目の「ウルトラマン」に似ている所はあるものの、
スラリとした細身だったボディは肉付きが良くなり、
酷く猫背だったファイトスタイルは、
スッキリとした直立スタイルへと変わった。
身体の模様も、以前のデザインを踏襲はしているものの、
デザイン自体はマイナーチェンジしていた。
もちろん、これだけだと「ウルトラマン」の彼と、
「帰ってきたウルトラマン」の彼が別人だとは断言できないだろう。
肉付きが良くなったのは、彼が少々太っただけかもしれないし、
猫背が治ったのは、ゼットンに敗れた自分のファイトスタイルを
見直して、これを改良したのかもしれない。
身体の模様の変化にしても、ひょっとしたら彼らの身体の模様は、
定期的に変動するのかもしれない。
だとすれば、第1作「ウルトラマン」に出てきた彼と、
第3作「帰ってきたウルトラマン」に出てきた彼が、
別人であるとは、言い切れないではないか。
なんといっても彼は宇宙人。
我々地球人の理解の外にいる、生き物なのである。

だが、この同一人物説は、
作品中でキッパリと否定されることになった。
なんのことはない。
ナックル星人とブラックキングに敗れ、
捕らわれの身となっていた彼を助けるために、
「ウルトラマン」で主人公を張っていたウルトラマンが、
劇中に登場したのである。
これでは、「帰ってきたウルトラマン」の主人公である彼が、
前作の主人公とは別人物であることは、確実である。
というか、現・主人公である彼を助けるために、
先々代の主人公であるウルトラマンがやってきたのだから、
これこそ本当の「帰ってきたウルトラマン」だろう。
では、今「帰ってきたウルトラマン」で主人公を務めている
あの微妙なソックリさんは何者なのか?

実は「帰ってきたウルトラマン」の作品中では、
彼は地球の人間からは、ずっと「ウルトラマン」と呼ばれ続けていた。
確かに作中には、先代のウルトラマンも登場するのだが、
それは地球人の目の届かない場所でのことなので、
作中の地球人は、ウルトラマンが2人いる所を目にしておらず、
「帰ってきたウルトラマン」の放映中は、
先代ウルトラマンやウルトラセブンが、彼を助けにきていたことも
知らずじまいだったのである。
シリーズを通して、先代ウルトラマンと彼が、
人類の前に並んで姿を現したのは、
続く「ウルトラマンA」でのことだ。
異次元人ヤプールの罠に落ち、
ゴルゴダ星にて磔にされたウルトラ4兄弟。
ヤプールは、その姿を東京上空に映し出すのだが、
シリーズの中で、先代ウルトラマンと彼が別人であることが、
初めて地球人に認知されたはずの一瞬であった。
同一人物説も出ていた先代ウルトラマンと彼が、
仲良く並んで磔にされているのである。
地球上では、ウルトラ兄弟が磔にされているという
ショッキングな映像が流れているにも関わらず、
別人説を唱えていた人たちが、
それ見たことかと喜んでいたかもしれない。

だが、ここで問題が1つ浮上する。
先代も彼も、その呼称している名前は「ウルトラマン」と、
同一のものなのだ。
これでは作中の登場人物たちも、視聴者も混乱してしまう。
現在のシリーズを知っている人の中には、
「帰ってきたウルトラマン」の方の彼には、
「ウルトラマンジャック」という名前があるじゃないか、
と思った人もいるだろうが、この「ジャック」という名前は、
1984年、長兄であるゾフィーを主人公とした映画が作られた際に、
突如として使い始められた名前であり、
TVシリーズ「ウルトラマン80」の放映時点では、
彼にはまだ、ちゃんとした名前が無かったのである。
……。
ちゃんとした名前が無かった、と書いた。
つまり、ちゃんとしていない名前ならあった、ということである。
作中での彼の呼ばれ方は「ウルトラマン2世」と、
「新マン」である。
なんというか、両者ともしっくり来ない。
「ウルトラマン2世」では、まるで彼が先代の息子のようだし、
(もちろん、先代と彼の間に、そんな関係はない)
「新ウルトラマン」の略である「新マン」も、
他のウルトラマンたちと名前を並べたとき、激しく見劣りしてしまう。
視聴者たちの呼び方はさらに多岐に渡っており、
作品名そのままの「帰ってきたウルトラマン」や、
「帰マン」「帰りマン」などとも呼ばれた。
かくいう自分も「帰ってきたウルトラマン」と、
作品名そのままの名前で、彼を呼んでいたのである。

そもそも、先代のウルトラマンが帰ってきたわけでもないのに、
どうして番組タイトルに「帰ってきたウルトラマン」などと
名付けたのか?
いわば、ここの所が、この問題の急所である。
答えは非常に簡単で、元々の企画案では、
本当に先代のウルトラマンが帰ってきて、
主人公に返り咲く予定だったのだ。
そのため、番組タイトルも、
そのまま「帰ってきたウルトラマン」となった。
だが、これでは商業的に旨味が少ない。
新ヒーローが登場すれば、それらの人形など、
新しい玩具を売りに出せるが、旧ウルトラマンが主人公では、
旧作の玩具を持っている子供たちは、
新しい玩具を欲しがらないだろう。
そのため、急遽、番組の主人公は
新ヒーローということになったのだが、
どういう手違いがあったのか、
番組タイトルはそのままでスタートしてしまった。
そのため、別に誰も帰ってきていないのに、
「帰ってきたウルトラマン」という、
おかしなタイトルの番組になってしまったのである。

ただ、自分がまだ子供だったころ、
そういう大人の事情を知らない中で、
どうしてウルトラマンジャックが「帰ってきたウルトラマン」なのか、
一応の答えを出していた。
その元になったのが、第18話「ウルトラセブン参上!」である。
この話の中で、ウルトラマンジャックは
初の宇宙怪獣・ベムスターとの戦いに破れ、
逃げ出してしまうのである。
(一応、無くなったエネルギーを補給するために、
 太陽へ向かったことになっていたのだが、
 子供の目には、ベムスターに負けたウルトラマンが
 逃げ出したようにしか見えなかった)
ウルトラマンのいなくなった地球。
暴れ回るベムスターを相手に、MATの隊長はただ1人、
マットアロー2号でベムスターと戦い続けていた。
全く効かないものの、辛抱強くベムスターの攻撃をかわし、
こつこつとミサイルを撃ち込み続ける。
だが、ついにベムスターの攻撃をかわし損ねて被弾、
マットアロー2号はコントロールを失い、墜ちていく。
そこに間一髪、ウルトラセブンから新兵器・ウルトラブレスレットを
貰ったウルトラマンが駆けつけ、マットアローを受け止める。
それを見た隊長が、ぽつりと呟く。
「ウルトラマンが……、帰ってきた……」
子供心に、あ、だから「帰ってきたウルトラマン」なのか、と、
ミョーに納得してしまった。

もちろん、この解釈は間違いではあるのだが、
個人的には「帰ってきたウルトラマン」のエピソードの中でも、
大きなターニングポイントとなった話でのことだけに、
わりと気に入っている解釈である。

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