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フリーズドライ〜その1

更新日:

食品を長持ちさせる方法というのは、色々ある。

塩に漬け込む。
冷凍してしまう。
缶詰にしてしまう。
真空パックしてしまう。

どの方法を使っても、食品の消費期限を
大きく引き延ばすことが出来る。

塩に漬け込む方法は、一般的には「塩蔵」と呼ばれ、
肉や魚介類、野菜などを塩分濃度の高い状態にしておくことで、
細菌(雑菌)を繁殖させにくくする方法である。
魚介類を漬け込んだ「塩辛」、
野菜類を漬け込んだ「漬け物」などが、その代表的なものになる。
塩があれば、誰でも簡単に出来、
さらに塩自体が安価なので、非常に手軽な方法である。
問題は、保存した食品に、強い塩味がついてしまうことだろう。
そのため、どうしても調理方法が限定されてしまう。
ただ、保存中に熟成が進み、旨味が出てくるということもあるので、
保存よりも、こちらを目的とした「塩蔵」も、多く行なわれている。

食品を冷凍してしまう方法も、基本的には「塩蔵」と同じである。
「塩蔵」では、塩分濃度の高さによって
細菌などの活動を抑えていたが、
冷凍の場合、低温によってこれらの活動を抑えている。
塩分で抑えるか、低温で抑えるかというだけだ。
どちらも細菌などの微生物の活動を抑制することによって、
食品の腐敗を防ごうという方法だ。
ただ、塩を用意すれば良いだけの「塩蔵」と違い、
食品を冷凍し、それをそのままの状態で保存しておくには、
それなりの設備が必要になってくる。
さらに速度は遅いものの、冷凍状態ではあっても
品質は劣化していくので、これを過信しすぎることは出来ない。
また、解凍の技術によって、大きく品質に差が出ることもある。

缶詰は、食品を金属製の容器の中に入れて封をし、
そのまま加熱処理を加えたものである。
缶詰の中の微生物は、加熱処理によって全滅しているので、
常温のままでも、かなりの長期間、食品を保存することが出来る。
かなり優秀な保存方法なのだが、
これを行なうにはそれなりの設備が必要になるため、
個人レベルでこの方法を行なうのは、まず不可能だろう。
また、最近ではプルトップ式の缶詰が多くなり、
そういうことも起きなくなったが、
缶切りが無ければ、これを開けるのに、かなり苦労させられる。
(実は、缶詰と缶切りが発明されたのは同時ではなく、
 缶切りの方がかなり遅れて発明されたのだ。
 そのため、それまでの期間は、缶詰を開けるのに
 非常な苦労が伴っていた)

真空パック保存は、包装内の空気を吸引して抜いてしまうことで、
包装内を真空状態にしてしまう。
当然、パック内には酸素もなくなってしまうため、
これを必要とする微生物の活動を抑えることが出来る。
また、酸素が無くなることによって、
食品の酸化による劣化も抑えることが出来る。
現在では、家庭用の真空パック器も発売されており、
比較的簡単に真空パックが行なえるようになっている。

さて、ここまでにいくつかの食品保存の方法を取り上げたが、
1つ、もっともポピュラーな方法について、まだ取り上げていない。
そう、食品を乾燥させることによって、保存性を高める方法である。
これは食品の内部から水分を取り除くことによって、
細菌などの微生物が、活動できないようにするものだ。
そういう意味では、「塩蔵」「冷凍」「真空パック」などと
基本的な考え方は全て同じで、
何らかの方法を用いて、食品を細菌などの微生物が
生息できない状態にしてしまおうというものである。
「塩蔵」では塩分濃度で、「冷凍」では低温で、
「真空パック」では酸素の供給を無くし、
「乾燥」では水分を無くして、微生物の「生物」としての活動を
阻害している。

この「乾燥」という方法の優れている所は、
それ自体を行なうために、特に大掛かりな準備が要らない所である。
極端な話、肉・魚・野菜・キノコ・海藻類などを、
太陽光の元にさらしておけば、後は勝手に食品が乾燥してくれる。
ものによっては、乾燥させる前に塩をすり込んだり、
調味液につけ込んだりすることもあり、
それぞれ、保存性を高める意味や、味付けの意味がある
大豆や米などの穀物類にしても、収穫の後に
これらを乾燥させる行程を経て貯蔵されるため、
見方を変えれば、これらも乾物の一種と見ることも出来るだろう。

この「乾燥」という作業を、季節や天候に左右されずに、
1年中行なえるようにしたのが、いわゆる「機械乾燥」だ。
電気や石油などで温風を作り出し、
これを食品にあて続けることにより、
より、素早く、大量に食品を乾燥させることが出来る。
その利便性から「機械乾燥」は、食品の乾燥においては
現在、もっとも良く用いられている。

ただ、食品の中には、この「熱」による乾燥のやりにくいものがある。
例えば、水分を多く含んでいるような食品や、
飲料などの場合、これに熱を加えることによって
水分を全て飛ばしてしまうには、かなりの時間がかかる。
飲料などの場合、その構成物質のほとんど全てが水分である。
その水分を、加熱だけによって飛ばしてしまおうとすれば、
相当長時間、食品を強く加熱し続けなければならない。
早い話、ヤカンの中に入っているコーヒーの水分を無くそうと思えば、
ひたすらヤカンをコンロで温め続け、
常に沸騰状態にしておくのが、もっとも効率的である。
100度になったコーヒーの水分は、片端から蒸発していき、
最後にはコーヒーから水分を飛ばし切ったものが、
ヤカンの中に残ることになる。
これに再びお湯をかければ、ヤカンの中の「モノ」が再び水分に
溶け込んでコーヒーが再生されることになる。
……理論上は。
そう、あくまでも理論上の話である。
実際にこれをやってみれば、ヤカンの中のコーヒーは煮詰まり、
どんどんと濃厚になっていき、水分が綺麗に無くなる前に
ヤカンの底に焦げ付くというのが、現実だろう。
この焦げ付いたヤカンにお湯を入れてみた所で、
ヤカンの中の「モノ」が、再びコーヒーに戻ることは無い。
せいぜいが、かすかにコーヒーの臭いがする
焦げが浮いたお湯になるくらいのものである。
さらにいえば、普通にいれたコーヒーも
水分が無くなるまで沸騰させ続けるようなマネをすれば、
どうしたって、著しい品質の劣化は避けられない。
つまり、コーヒーのように水分が多く、風味の重要な食品の場合、
どうしても、普通に加熱して水分を飛ばしていては、
キチンと乾燥させることはできない、ということになる。

では、コーヒーの水分を上手く取り去るには
一体どうすれば良いのか?
要はコーヒーの水分だけを、出来るだけ素早く、
ほぼ一瞬の間に、気化させてしまえば良いのである。
そのためには、普通にヤカンの中で加熱するような方法では無理だ。
コーヒー自体を非常に気化しやすい形状、
つまり「霧」状にしてしまい、
これを高温な空間へと吹き出してやれば良い。
霧状になったコーヒーは、高温な空間の中であっという間に気化し、
コーヒーの中の水以外の成分が残る、という方法である。
この方法を、「スプレードライ」という。
乾燥させたい液体を、噴霧器でスプレーするため、
この名前がついた。
シンプルな方法なので、量産性も高いのだが、
加工時に熱がかかってしまうため、わずかに品質に影響が出る。
さらに言えば、液体と固体の混合物、
例えばみそ汁や具入りのスープなどの場合、
スプレーで噴霧することが出来ないという弱点がある。

ならば、みそ汁や具入りのスープは、乾燥させることが出来ないのか?
ということになると、実は、これもちゃんと乾燥させる方法がある。
そう、今回のタイトルである「フリーズドライ」である。

……と、ここまで書いておいてなんだが、
ちょっと文章量が多くなってしまったので、
ここから先は次回、ということになる。

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