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名画カード、復活

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ちょっと前の話になるのだが、
ネットのニュースサイトでこんな記事を見かけた。

「永谷園のお茶漬け 『名画カード』復活
 19年ぶり再登場」

永谷園の「お茶漬け」といえば、
日本では知らない人がいないというくらいのメジャー商品である。
歌舞伎の幕をイメージしたパッケージは、
スーパーのふりかけコーナーの一画を陣取っており、
その絶対的な存在感を、見せつけている。
まあ、考えてみればそれも当然の話で、
永谷園は「お茶漬け」商品の国内シェア80%以上を占めている。
「お茶漬け」界のドンといっても良い存在である。
その商品群の中でも「お茶漬け海苔」は、
年間2億5千万食を売り上げているのだから、
まさに驚異的な売り上げといって良いだろう。

江戸時代中期、永谷宗円が京都・宇治で「煎茶」を発明し、
「永谷園」として、お茶の製造販売を始めた。
明治時代になると、「永谷園」は東京に進出し、
9代目にあたる永谷武蔵が、昆布茶、アイスグリーンティー、
海苔茶を発明して、「永谷園」のお茶は一層人気を集めた。
だが、太平洋戦争勃発によって、「永谷園」は一時閉店することに。
戦後、10代目・永谷嘉男は「永谷園」の復活を図り、
ご飯に海苔茶をかける、という発想から
1952年に「お茶漬け海苔」を作り出し、
これを大ヒットさせた。
以降、「永谷園」は様々な商品の開発を続け、
現在では、200種類以上の商品を手がけるようになっている。

この「永谷園」の商品の中に、一時期、
オマケとして1枚ずつ、カードが入れられていた。
これが、いわゆる「名画カード」である。
安藤広重の「東海道五十三次」55枚を始めとして、
喜多川歌麿44枚、東洲斎写楽44枚、
葛飾北斎「富嶽三十六景」46枚などの、
いわゆる浮世絵のシリースの他、
ルノワール40枚、ゴッホ・ゴーギャン44枚、
印象派(マネ・スザンヌ・ドガ・スーラ)44枚などの
西洋画シリーズ、この他にも
シルクロード・中国編47枚、竹久夢二44枚、
日本の祭り50枚などのカードが、シリーズものとして、
商品の中に入れられていた。
この「名画カード」といえば、
「お茶漬け」の中に入っていた、というイメージが強いのだが、
実際には、「お茶漬け」の他にも、「みそ汁」や「お吸い物」、
「チャーハンの素」や「すし太郎(ちらし寿司の素)」の中にも、
これらのカードは入れられていたのである。
実に、10種類、全458種類のカードの内の1枚が、
各種「永谷園」商品の中に、入れられていたわけでである。
……。
いくらなんでも、カードの種類が多すぎない?と、
思った人もいるだろう。
この手のカードなどについては、
昔からコンプリートを目指す人がいたのだが、
それにしたって、全458種類とはただごとでない。
もし、1枚の重複もなくカードを集められたとしても、
少なくとも458個の商品を購入しなければならないのである。
「永谷園」の商品群の中で、もっともメジャーと思われる
「お茶漬け海苔 4袋入り」で、定価が120円(税抜き)なので、
これだけでカードをコンプリートしようと思えば、
最低でも54960円分、
「お茶漬け海苔」を購入しなければならない。
実にお茶漬け1832杯分である。
1日1杯お茶漬けを食べるとしても、5年かかる計算だ。
これにカードがダブったり、
欲しいカードが手に入らないという条件が重なってくると、
このカードコンプリートは、まさに一生かかって
成し遂げられるかどうかという話になってくる。

ところが、このカードをコンプリートしたという人は、
意外と多かった。
何故か?
別に、「永谷園」商品の購入に命をかけた人が、
多かったわけではない。
実は、中に入っているカードの端が応募券になっており、
これを15枚集めて送ると、10種類のうち好きなセットが、
毎週2400名に当たっていたのである。
当時、これに応募した人の話を見てみると、
毎週2400名に当たるというのは、
出せば必ず当たるといっていいほどの確率だったそうだ。
(稀に外れることもあったという)
このカードを集めている人が、常に何千・何万といるわけがなく、
また、ひととおりコンプリートした人が、
同じセットを貰うために、再び応募するようなことも無かったのだろう。
そうなると、カードをコンプリートするために
このプレゼント企画を使うのであれば、
150枚のカードを集めればいいということになる。
(まあ、それでも600食分のお茶漬けを
 食べることにはなるのだが……)

だが、そもそも「永谷園」は、どうしてこのようなカードを、
商品の中に入れることを始めたのか?
最近では、お菓子と一緒にシールやカードなどを同封し、
これらを「揃えたい」という心理を利用して購買欲を刺激する、
子供向けのお菓子なども多く発売されているが、
これらと同じだったのだろうか?

実は1952年に発売された、同社の看板商品「お茶漬け海苔」は、
当初、機械ではなく、手作業で作られていた。
そのため、商品の検査確認を終えたものに、
確認印を押した無地の検印紙を、封入していたのである。
この検印紙に、「日本文化・芸術に興味を持ってもらう一助になれば」
という思いで、「東海道五十三次」を印刷したのが、
この「名画カード」の始まりとなった。
以降、先に書いたように、国内の浮世絵のみならず、
海外の画家の作品や、竹久夢二、シルクロードや日本の祭りの写真も
印刷されるようになり、10シリーズ、全458種類の
「名画カード」となっていった。
これが、昨今のお菓子のオマケと、その目的を異にしていたことは、
「出せば当たる」といわれるほど当たった、
プレゼント企画を実施し続けていたことでも明らかである。

だが、1952年から33年に渡って続けられてきた、
この「名画カード」は、1997年、
「キャンペーンとしての役目を果たした」として、終了してしまった。
プレゼント企画にしても、累計応募数が
500万口を越えていたというから、
この「名画カード」が、いかに人気があったのかが分かるだろう。

この「名画カード」が、19年ぶりに復活した。
「永谷園」の広報によると、
顧客からの復活の要望が寄せられていたことと、
和食のユネスコ無形文化遺産登録や、クールジャパン、
2020年東京オリンピック開催に伴う日本文化の再評価など、
国内外の注目が集まっていることから、
日本文化を身近なところから実感してもらう機械になれば……
ということで、「名画カード」復活となったらしい。

今回の復活では、「東海道五十三次」の
55枚のカードが封入されており、
昨年11月出荷分の「お茶漬け」主力商品から、順次、
カード入りのものへと切り替わっているという。
ちなみに今回も、「東海道五十三次」フルセットのプレゼント企画が
開催されており、対象商品のパッケージについている応募券、
3枚1口で応募することが出来る。
過去のプレゼント企画よりも、かなり応募しやすくなっている。
ただ、今回のプレゼント企画は、11月1日〜1月31日までの
3ヶ月間だけで、毎月1000名にしか当たらない。
過去の企画のように、送れば当たるということには、
なりそうにない。

このフルセットを狙ってみたい、という人は、
キャンペーン期間の終了が迫ってきているので、
早めに応募した方が良いだろう。

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