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生きた「景品」

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先日、ネットの情報サイトを見ていたら、
こんな記事が目についた。

「クレーンゲーム『もふもふハムスター』
 景品は生きたハムスター、批判受け撤去」

ゲームセンターに良く置いてある、クレーンゲームの筐体の中に
ケースに入ったハムスターが景品として入れられており、
これを見たお客の1人がネット上で拡散し、
店に対して非難の声が起こったため、
これを撤去した、という話であった。
ひとつ、誤解がないように書いておかなければならないのは、
ハムスターの入ったケースそのものをクレーンで掴んで、
穴の中に落とすといったものではなく、
あくまでも筐体の中に展示されているハムスターは
景品見本であり、実際はボールをすくって落とし、
そのボールの種類いかんによって、ハムスターがもらえるといった
方式だったようである。
ただ、やはり置かれている場所が、
クレーンゲームの筐体の中ということで、
大きな音や光に、ハムスターが常時さらされている状況であったため、
その点が、第2の問題点とされたようだ。
……。
では、第1の問題点とされたのは何だったのか?ということになるが、
それはもちろん、生き物をゲームの景品にするという
行為そのもの、ということらしい。

生き物を景品にする、という行為自体は、
何も今回、始まったことではない。
これまでにもクレーンゲームの景品として、
様々な動物が、あの筐体の中に入れられ、
場合によっては、それがおもしろがられ、
場合によっては、それが問題視されたりしてきた。
もちろん、生き物を景品にするというのは
何もクレーンゲームに限ったことではなく、
祭りの屋台などで見られる金魚すくいや、ひよこ釣り、
うなぎ釣りといったものも、生き物を景品にしている。
これらの屋台と、ゲームセンターのクレーンゲームでやっていることに
何か違いがあるのか?ということになれば、
本質的には両者とも同じことをやっているといえる。
もちろん、動物愛好家の中にはクレーンゲームと同じように、
屋台での金魚すくいなども、動物虐待だと主張している人もおり、
そこら辺はなんとも線引きの難しい所なのだが、
法律的なことを言えば「動物愛護法」というものがあり、
その中で客体(意思・行為の目的となるもの)とされているのは

「牛、馬、めん羊、山羊、犬、猫、家ウサギ、ニワトリ、
 家バト及びアヒル」

となっており、さらに付け加えて

「人が占有している動物で、ほ乳類・鳥類・または
 は虫類に属するもの」

と決められている。
つまり金魚はこの法律からあぶれてしまっているため、
どういう扱いをしても、「動物愛護法」には抵触しないというわけだ。
ただ、この法律上で言うのであれば、
今回、問題になったハムスターは、
「人が占有している動物で、ほ乳類」ということになるので、
「動物愛護法」の客体として含まれている。
ただ、法律上の虐待がどういうものかといえば、

「みだりに殺し、または傷つける」
「みだりに給餌又は吸水をやめることにより衰弱させる」
「遺棄」

となり、今回のゲームセンターの場合では、
これらの条件に当てはまるような直接的な行為は、
行なわれていなかったようなので、
同法に抵触することは、ないと思われる。
(先に書いた通り、音や光の刺激の強い筐体内に展示されていた点は、
 ハムスターにストレスを与えたかもしれないが……)

ただ、法律ではないものの、
「社団法人全日本アミューズメント施設経営者連合会」という
ゲームセンターなどが所属している組織の取り決めの中に、
「ゲームセンター等における景品の取り扱い要領」というのがあり、
その中に定められている提供してはならない物品の中に、
「動物愛護の精神に反する生物」というものがある。
今回の件は、これに抵触している可能性がある。
もちろん、これは法律ではなく、
あくまでも連合会による内部的な取り決めなので、
これに反したからといって罰則があるわけではなく、
さらに、この連合会に所属していない場合には、
この取り決めに従う必要もない、ということになる。

先にも書いたように、今回の件のみならず、
ゲームセンターのクレーンゲームの筐体の中には、
様々な動物が「景品」として、放り込まれている。
どういう動物たちが、「景品」とされているのか?
ちょっと例を挙げてみよう。

まず、ひところ、ちょっと話題になった「伊勢エビ」。
これは水槽の中に水が張ってあり、
その中に生きた「伊勢エビ」が数匹、入れられている。
これを、クレーンを用いて捕まえようというものだ。
もちろん生きているわけだから、クレーンで捕まえようとしても
危険を察知すると、すぐに動いて逃げてしまう。
だから難易度は、かなり高い。
捕まえた「伊勢エビ」は景品として貰うことが出来るのだが、
さすがにこれをペットとして扱う人間はいないだろう。
持ち帰られた「伊勢エビ」に待っているのは、
晩ご飯のオカズという運命である。
同じような系統のものとしては「ロブスター」や、
「毛ガニ」、「サザエ」、「ホタテ」などがある。
どれをとっても、ペットとしての用はなく、
全て食材として用いられる生き物たちである。
「サザエ」や「ホタテ」は、
ほとんど動かないから良いようなものの、
「伊勢エビ」「ロブスター」「毛ガニ」は、
クレーンで掴もうとしても、あっという間に逃げ去ってしまう。
難易度が高く、その分、見返りも大きい「景品」といえる。

もちろん、今回のハムスターのように
ペットとして飼育してもらうことが前提の「景品」もある。
昔、一大ブームを巻き起こした「ウーパールーパー」、
現在では天然物はすっかり姿を消した「カブトムシ」、
小型のフグ「ミドリフグ」、
真ん丸な金魚「ピンポンパール」などである。

魚類・両生類・昆虫類は、「動物愛護法」には引っかからないので、
ここに取り上げたものをクレーンゲームの景品としても、
動物虐待といわれることはない。(法的には)
ただ、食材としての「景品」であれば、
その後の始末の仕方は簡単で、食べてしまえば問題ないのだが、
ペットとしての「景品」であれば、
当然、「景品」を手に入れたその瞬間から、
生き物を世話しなければならない、ということになってしまう。
「カブトムシ」などは、どんなに生きても
1年以上生きることはないだろうが、
「ウーパールーパー」や「ミドリフグ」、「金魚」となれば、
寿命も5〜10年ということになってくるので、
気軽な気持ちでこれを手に入れてしまうと、
飼育用具やエサ代などの出費がかさみ、
非常に面倒くさいことになってしまう。
「ミドリフグ」などは、塩分を含んだ水と
適切な温度で育てなければならないため、
飼育にかかる手間も、大変なことになる。
生き物を飼うということは、
それだけの責任と覚悟を持たなければならないわけなのだが、
それだけの覚悟のある人間は、
肝心のペットをクレーンゲームで入手しようとは考えないだろう。
そうなると、クレーンゲームでこれらを手に入れる人たちは、
生き物を飼う覚悟が充分に出来ていない人たち、ということになり、
ペットを手に入れた側にしても、手に入れられた側にしても
不幸な結果、ということになってしまう。

ペットを「景品」という形で手に入れるということは、
やはり望ましいことではないようだ。

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