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シャコ

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最近、「駅弁」というものが減ってきているらしい。

デパートなどでは、「駅弁大会」と銘打って、
日本全国の「駅弁」を集めた大々的なイベントが、
1つの定番になっているが、
肝心の駅での販売が、いまいち振るわないという。

ひとつには、列車の高速化が図られることにより、
列車での移動時間が大幅に減少し、
「駅弁」を買う機会自体が減ってしまった、
ということがあるだろう。
列車での移動の際、「駅弁」を買って食べるというのは、
相当の長時間を列車内で過ごすことが、
まず第1の条件といっていい。
列車内での時間が少なければ、
わざわざ弁当を買い込んで、これを食べようとは思わない。
列車が高速化され、目的地までの時間が短くなってしまえば、
当然、列車の中でゆっくりと「駅弁」を食べることは出来ない。
もうひとつには、列車の中での飲み食いを、
一種のマナー違反とみる風潮が強くなってきたことだろうか?
新幹線や特急列車など、停車駅の少ない
長距離路線の列車ならばともかく、
各駅停車や新快速など、これらを生活の足として
利用している乗客が多い路線などでは、車内での飲食は
マナー違反と見なされることも多い。
こういう状況を合わせて考えてみると、
「駅弁」を食べることが出来るのは、
ある程度の長距離を、しっかりと時間をかけて走る路線のみ、
ということになってしまう。
近年では、航空機や高速バスなど、
長距離の移動に使える移動手段も増え、
相対的に長距離の列車移動をする客は、減ってきている。
そういう客が減れば、当然、「駅弁」の売り上げも落ちることになる。

このような状況の中で、
各地の名物「駅弁」が、次々と消えていっているという。

実は、我が家から近いJR相生駅にも、
かつて名物「駅弁」があった。
それが「瀬戸のしゃこめし」である。
これは1971年に登場した「駅弁」で、
中身は、五目飯の上に錦糸卵を敷き詰め、
シャコの酢味噌和え・えび・ゆで卵・ひめ貝に、
グリンピースやサクランボを盛りつけたものであった。
先に書いた駅弁大会などにも出品されることがあったが、
「瀬戸のじゃこめし」と誤記されることもあったという。
(実際に「瀬戸のじゃこめし」という「駅弁」もあった)
JR相生駅の名物「駅弁」として、長らく販売を続けていたのだが、
2007年、調整元の倒産によって販売終了となってしまった。

さて、「駅弁」というのは、多かれ少なかれ、
その地方の「食」の特色を持っているものである。
その説でいえば、この「駅弁」のモチーフになっている「シャコ」は、
相生市にとって、ひとつのシンボルのようなものだといっても、
間違いないだろう。
現在、相生市の海産物の代表といえば、
大々的に養殖されている「牡蠣」をイメージしてしまうが、
少なくとも1971年当時、相生市の海産物として
代表的な位置にあったのは「シャコ」であった。
というのも、現在、相生漁業のメインとなっている牡蠣養殖は、
1971年当時にはまだ始まっていなかったからだ。
相生市相生湾での牡蠣養殖が始まったのは、
「瀬戸のしゃこめし」に遅れること7年、1978年のことである。
恐らく、現在の様に「牡蠣」が漁業の主力になる前は、
「シャコ」こそが、その主力であったに違いない。

「シャコ」というのは、シャコ科シャコ属に属する
節足動物の一種である。
口脚目(シャコ目)に属する種を総称して、
「シャコ」と呼ぶこともある。
甲殻類であるエビに、よく似た姿を持っており、
地方名の1つに「ガザエビ」という、
「エビ」の名前を持つものもあるのだが、
実際には、「シャコ」と「エビ」の類縁関係は遠い。
体長は12〜15㎝ほどで、体型は細長い筒状をしており、
腹部はやや平べったくなっている。
頭部・胸部・腹部のバランスでいえば、
頭部と胸部がやや小さく、腹部が大きく発達している。
頭部には、触角などがついており、
一見した所「エビ」のようにも見えるが、
「エビ」の持っているようなハサミはついていない。
その代わりにあるのが、刺のついた鎌のような捕脚である。
この捕脚の形から、英語名では
「mantis shrimp(カマキリエビ)」と呼ばれている。
歩脚は3対あり、腹部の下側には遊泳脚がついていて、
これを動かすことによって、推進力を得る。
殻の端々に鋭い棘を持っており、
下手に掴むと痛い思いをすることになる。

北海道から本州にかけての、内湾や内海の砂泥底に生息しており、
海底に坑道を掘って、その中で生活している。
肉食であり、小型魚類や、イソメ・ゴカイなどの多毛類、
貝類などをエサにしている。
小型魚類や、イソメ・ゴカイはともかく、
硬い殻を持つ貝類を食べるのは、一見した所、無理そうに思える。
だが、「シャコ」は、先述した捕脚にて
強烈な打撃を放つことで知られており、
この打撃によって、貝類の殻を砕いてしまう。
もちろん、貝類のみならず、同じように堅い甲羅を持つカニなども、
その打撃によって殻を破られ、「シャコ」のエサになってしまう。
まさに、海底の暴君といっていい。
「シャコ」をペットにしている人など、ほとんどいないだろうが、
ガラス製の水槽でこれを飼った場合、その捕脚の打撃によって、
ガラスにひびを入れられてしまうこともあるようだ。
一説によれば、そのパンチ力は
ピストルにも匹敵するというのだから恐ろしい。
実際に、生きている「シャコ」を触っていて、
指が切断された、なんていうことも起こるらしい。
鮮魚などを扱っている販売店では、
ときに生きた「シャコ」を置いている所もあるが、
好奇心半分で触ったりは、しない方が良さそうである。

さて、うちの両親の出身が相生市だったためか、
うちの両親は、たまに「シャコ」を買ってきて、
これを食べることがあった。
ただ、塩水で茹で上げただけの「シャコ」を手に取り、
1つ1つ、硬い殻を外していく。
当然、子供である自分の前にも
「シャコ」が用意されていたのだが、
子供が上手に「シャコ」を食べるのは、難しい。
「エビ」を食べるのにも似ているのだが、
「シャコ」は「エビ」に比べると、非常に殻が外しにくい。
子供の柔らかい手では、「シャコ」の殻についている刺が手に刺さり、
かなり痛い思いをするものの、一向に、殻剥きははかどらない。
こんなことを繰り返しているうちに、
幼い自分は、すっかり「シャコ」が嫌いになってしまった。

これが治ったのは、大人になってからのことになるのだが、
もう、そのころには、相生駅名物「瀬戸のしゃこめし」は、
すでに販売を終了してしまっていた。
返す返す、これを食べてみることが出来なかったことは、
残念でならない。

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