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乗り物 雑感、考察

車酔い

投稿日:

By: __U___

ちょっと前の新聞記事に、こういう見出しがあった。

「車酔い続出で伝統の伊勢断念
 姫路の小6修学旅行」

……。
見出しだけでは、よく分からないかもしれない。
実は、姫路市の小学校の修学旅行は、
ずっと昔から、「伊勢・奈良」というのが伝統であった。
自分が小学校のころの修学旅行が、「奈良・京都」だったので、
同じ西播地区の小学校でも、姫路市とたつの市では
修学旅行の行き先も、変わってくるものらしい。
これは、¥姫路市内の小学校、ほぼ全てが、
約60年間続けてきた行事だったのだが、
その行き先が、来年から「奈良・京都」に変更になるという。

どういう経緯で、60年間続いてきた「伊勢」を
「京都」へと変更することになったのか?

姫路市の小学校の修学旅行には、長年、JRの列車が貸し切られ、
この貸し切り列車に乗って、「伊勢・奈良」へ訪れていた。
6年前、この長年利用されてきた貸し切り列車が故障した。
この貸し切り列車には、旧国鉄やJRの通常運行では使われない、
予備の車両を使っていたのだが、肝心の気動車が老朽化で故障、
代替車両が見つからなかったため、
翌年から全行程をバス移動へと切り替えた。
ところがである。
この長距離のバス移動によって、「車酔い」を起こす子供が続出、
完全に体調を崩し、保護者が迎えにくるという事態も
度々起こるようになった。
そのため、姫路市内の小学校校長会は、
2年前から行き先の変更を検討しており、
より移動距離の短い、「京都・奈良」へと旅行先を変更し、
今年に入り、ようやく来年以降の宿泊場所のめどが立ったという。

ただ、今回の修学旅行先の変更について、
「祖父母の時代から、修学旅行は伊勢だったのに……」
と、変更を惜しむ声が、PTAから相次いでいるという。

記事による所では、これまでの修学旅行では、
市内の最寄りの駅から列車に乗り奈良へ向かい、東大寺を見学した後、
さらに列車で伊勢へと向かう。
翌日、夫婦岩で日の出を拝み、
伊勢神宮や鳥羽水族館を見学した後、
再び、列車で姫路へと帰ってくる、というものだったようだ。
伊勢についてから、あちこち回るのに
バスを使っていたかどうかはわからないが、
これらの観光名所も、すべて鉄道の沿線にあるので、
ひょっとしたら全て、列車を使っていたのかもしれない。
ただ、列車しか使わない場合、
どうしてもある程度は、行動が制限されてしまうことになる。
「奈良・京都」とバスで回っていた自分たちの修学旅行では、
同じ1泊2日の行程であったにも関わらず、
もっと多くの観光地を回っていたからである。

今回、大きな問題になったのが、児童の「車酔い」である。
大抵の場合は、車から降りてしばらくすれば回復するものだが、
そうならず、親に迎えにきてもらう児童が続出した、ということは、
相当に酷い状態だったものだと思われる。
(もちろん、親が「車」で迎えにくるのであれば、
 結局、帰りの行程でも「車酔い」に悩むことになるのだろうが……)

実は、今回、この話を聞いたとき、
自分の子供時代のことを思い出し、憂鬱な気分になった。
何を隠そう、自分も子供のころは、ひどい「車酔い」に
悩まされていたからである。
自分の「車酔い」は筋金入りで、
自宅から龍野の市街地へ移動するだけでも、
気分が悪くなることが度々であった。
実際に車に乗っている時間など、10分程度のものなのだが、
それだけで酷い吐き気を催し、ぐったりとしてしまう。
もちろん、これは家の車に限ったことではなく、
学校行事で乗る大型バスの場合も、同じだった。
遠足や潮干狩り、修学旅行など、
何か校外でのイベントがあるごとに、バスを使った移動があったが、
その度ごとに、「車酔い」を繰り返している始末であった。
どうも自分は「乗り物酔い」しやすい体質だったようで、
車に乗っては酔い、船に乗っては酔い、というのを繰り返していた。

この自分の「乗り物酔い」は、
中学、高校と進んでも改善されることはなく、
正直、当時の自分は乗り物に乗るのが、かなり苦痛だったのだが、
あるときを境に、これがパッタリとなりを潜めてしまった。
それ以降は、車を使っての長距離移動であっても、
よほど体調が悪くない限り、車に酔うようなことは無くなった。

「車酔い」を含む、「乗り物酔い」というのは、
乗り物の揺れ、加速、減速などの速度変化によって引き起こされる
自律神経の失調状態を言う。
難しい言葉を使っているが、実際に身体に起こる症状としては、
頭重感、あくび、生唾、吐き気、顔面蒼白、手足の冷え、
ふらつき、冷や汗などである。
もちろん、吐き気が強くなった場合は、嘔吐してしまうこともある。
自分の場合は、手足の冷えと、冷や汗以外の症状が、全て出ていた。
顔面蒼白に関しては、「車酔い」になっている状態では
自分の顔色を確かめるような余裕が無かったので、
はたしてどういう顔色をしていたかは、いまだに分からないままだが、
恐らくは、青い顔をしていたものと思われる。
どういうわけか、我が家の3人兄弟の中で
「乗り物酔い」をするのは自分と妹だけで、
弟は全く酔うことは無かった。
また、同じように「酔う」といっても、妹の症状は
自分に比べれば随分と軽く、酷い状態になるのは
決まって自分1人であった。
つまり、「乗り物酔い」をするかどうか?ということに関しては、
遺伝とか、血筋というものは、あまり関係が無いようである。
「車酔い」してしまった場合、これを直す一番の方法は
車を降りることである。
車を降りてしまえば、かなり酷い酔い方をしていても、
いつも5〜10分ほどで回復していた。
ただ、先の小学校の「車酔い」の例を見てもわかるように、
それぞれの回復時間には個人差というものがあるようで、
ひどい「車酔い」状態を続けた場合、
そのまま体調を崩してしまうこともあるようだ。

一体、何故、このような症状が起こるのか?
もっともよくいわれているのは、耳の奥にある三半規管が、
乗り物の揺れや、加速、減速などの速度変化によって
刺激されて起こる、というものである。
先にも書いたように、自律神経が失調状態に陥っているわけだ。
学問的に言えば「動揺病」、「加速度病」とも呼ばれる。
わかりやすくいえば、目で見ている情報と、
三半規管で感じている情報の「ズレ」が、
この状態を生み出しているわけだ。
ただ、「乗り物酔い」のメカニズムには、この他にも諸説あり、
実は完全に解明されていないというのが、本当の所である。
我が家の3兄弟のように、ひどく「酔う」体質の人間と、
全く「酔わない」体質の人間が存在しており、
それ以外にも、車には酔わないものの、
船には酔うなどといったことも起こりうるので、
誰が、どの乗り物に「酔う」のか?ということに関しては、
はっきりと決めつけてしまうことは出来ない。

この「乗り物酔い」に関して、もっとも古い記録では、
遙か紀元前にまで遡ることが出来る。
スピードなどに大きな違いはあるものの、
当時、すでに船は存在していたし、
ゾウやラクダに騎乗する場合でも、「酔う」ことはある。
日本では、平安時代の牛車で「乗り物酔い」を起こす貴族のことが
書物の中に描かれている。
同じ船であっても、蒸気船は帆船よりも
「船酔い」しやすいといわれており、
帆船の時代には、それほど目立たなかった「船酔い」が、
蒸気船の時代には、大きな社会問題になったこともあった。
(ちなみに、帆船時代に「船酔い」が無かったわけではなく、
 大航海時代の有名な船長の中にも、
 ひどい「船酔い」をしたという記録の残る人物もいる)
歴史の中で、人間は移動手段として船、馬、馬車など、
様々な乗り物を作り出したが、それらの誕生と同時に、
「乗り物酔い」もまた、生み出されたわけである。
これをどう抑えていくか?ということは、
遙か古代から、人間にとって大きな課題だったのだ。
その古い課題が、いまだに完全に解決していないのは、
やはり、この「乗り物酔い」という症状には、大きな個人差があり、
全くかからない人も多いのと、症状は酷くても、
それが他の病気と違い、治るのも早いためであろう。
「乗り物酔い」を防止する方法については、
様々な方法が「有効」であるとされているが、
残念ながら、すべての「乗り物酔い」に効くという方法は、
いまだ見つかっていない。
そのため、「乗り物酔い」の酷い人間は、様々な方法を試して
その中から自分にあった方法を見つけていく必要がある。

さて、ここで自分の「車酔い」が、
起こらなくなったことに目を向けてみる。
自分の場合、あることをきっかけにして、
「車酔い」がほとんど起こらなくなった。
それ以前と比べてみると、「車酔い」の発生率は雲泥の差である。
一体、自分が「車酔い」をしなくなったきっかけとは、
何だったのか?
実はシンプルな話で、大学生になり、普通自動車の運転免許を取得し、
車を運転するようになってから、
それまでのことが嘘のように、「車酔い」は発生しなくなった。
もちろん、自分が運転する車だけでなく、
両親や兄弟、友人などが運転する車についても同じである。
それまで、10分ほど車に乗っていただけで
気持ちが悪くなっていたことを考えれば、
驚異的な改善状況である。
恐らくは、車の運転を覚えたことにより、
視覚等の外界からもたらされる情報と、
体内の三半規管の感じる情報の間に、
「ズレ」が無くなったためだと考えられる。
それまで、あの手この手と色々試してみても、
全く効果がなかったことに比べると、
驚異的な改善効果である。
同じように、自分で運転をするようになってから
「車酔い」をしなくなったという話は、あちこちで聞くことが出来る。
恐らく「車酔い」体質の改善方法としては、
もっとも効果的な方法だろう。

ただ、この方法には大きな欠点がある。

その方法上、18歳未満の人間はこの方法が使えないこと、
「車酔い」対策としてのみの目的で行なうには、
お金がかかりすぎること、である。

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