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大麻

投稿日:

By: Manuel

今から1ヶ月とちょっと前、国民的な人気を誇る
某刑事ドラマに、かつてレギュラーとして出演していた
元女優が逮捕された。

逮捕容疑は「大麻取締法違反」。
まあ、わかりやすくいうと、
大麻を隠し持っていたということだ。
押収量は数十グラム。
一見、少量のように思えるが、
ニュースなどでは多量といわれていたので、
大麻としては、結構な量であるらしい。
押収物の中には、大麻を吸うためのものと思われるパイプがあり、
どうも大麻を吸っていた形跡があるようである。

実は、彼女は今年行なわれた参議院選挙に出馬。
「医療用大麻の解禁」を訴えて選挙活動をしていたが、落選。
無論、医療用大麻の解禁を訴えるだけなら罪にはならないが、
現在の日本では、大麻の所持は違法である。
彼女は、この選挙の以前から
「医療用大麻」を認めないのは人権侵害、
というスタンスで活動しており、
恐らく、厚生労働省の麻薬取締部から
マークされていたのかも知れない。

さて、今回問題になった「大麻」だが、
実は日本では、古くから栽培されていた植物である。
「麻(あさ)」といえば、絹や木綿よりも古くから布に加工され、
衣料やその他の用途に、広く用いられてきた。
この「麻」を採るための植物こそが、「大麻」なのである。
大麻草の茎は繊維として利用され、
その種子は食用、種子からとれる油は食用としての他に、
燃料としても使われてきた。
そういう意味では、日本人にとっては
非常に身近な植物であったといえる。
これが日本で規制されるようになったのは、第2次世界大戦後、
アメリカの影響による所が、非常に大きい。
これにより、日本での大麻栽培は姿を消した。
(限定的な範囲では、現在でも栽培されている)

日本における「大麻」栽培は、非常に長い歴史があり、
その歴史は紀元前にまで遡る。
江戸時代に、木綿栽培が全国に広がるまでは、
絹と麻が、主要な繊維材料だったのだが、
絹は当時から高級品であり、身分の高い人間しか利用できなかった。
つまり、それ以外の一般庶民の衣服に関しては、
そのほとんどが麻で作られていたし、
衣服以外の繊維製品、糸・縄・網・布などに関しても、
そのほとんどが麻で作られていた、と言うことを考えると、
日本の歴史には、欠かせない産業植物であったわけだ。
江戸時代に、安価な木綿が普及した後も、
麻繊維の持つ強度は重宝され、「大麻」は栽培され続けた。
これが、戦後、アメリカの指導によって、
全面的に禁止されてしまったわけである。

……。
ここで1つの疑問が浮かぶ。
そんなに古代から「大麻」が栽培されていたのなら、
当然、これを吸引することも出来たわけである。
日本人は、そんなに古代から「大麻」を吸引していたのだろうか?
だが、日本の歴史を見直してみても、
そこには「大麻」吸引の話は出てこない。
どうやら日本には、「大麻」を吸引する文化は生まれなかったらしい。
どうも日本で栽培されてきた「大麻」は、
幻覚成分であるTHC(テトラヒドロカンナビオール)の含有量が
少なかったらしい。
ただ、麻畑では麻酔い(あさよい)と呼ばれる
精神作用があることは知られており、
忍術書として知られる「萬川集海」には、
「大麻」の葉を乾燥させて粉にした、
「阿呆薬」の製法が記載されている。
なんとも、身もフタもないネーミングの薬だが、
これを食事などに混ぜて、薄茶3服ほど摂取させると、
「気が抜けて、うつけになる」と書かれている。
これらのことを見る限りでは、日本の「大麻」にも
それなりの幻覚作用を引き起こす成分が、含まれていたようである。
神道では「大麻」は神聖な植物として扱われており、
日本に「大麻」吸引の文化が生まれなかったのは、
ひょっとしたら、このことが影響しているのかも知れない。
(実際、神道の影響の弱くなった戦後からは、
 大麻を吸引目的で栽培する者も、多く現れている)

さて、「大麻」が「麻」という字を使っている所から、
この「大麻」こそが、「麻薬」の代表的なもの、
と考える人もいるかも知れないが、実はこれは間違いである。
アメリカの指導によって「大麻」が規制される以前、
「麻薬」の「麻」という字は、「痲」を使っていた。
「痲薬」だったわけである。
この「痲」という字には、「痺れる・麻痺」という意味があり、
(この「麻痺」という字も、かつては「痲痺」と書かれていた)
その主原料とされているのは「大麻(マリファナ)」ではなく、
芥子である。
それがどうして「麻薬」になったのか?
戦後、1949年に「当用漢字表」が定められたのだが、
「痲」の字は、ここからあぶれてしまった。
そのため、字形のよく似ている「麻」の字が
宛てられることになったのである。
だから本来的な意味でいえば、
「大麻」は「麻薬」ではないということになる。
ちなみに「麻酔」という言葉にも「麻」の字が使われているが、
この「麻酔」は、1949年以前から、「麻酔」であった。
じゃあ、「大麻」には「麻酔」効果があるんじゃないの?と、
思ってしまうが、マリファナ成分であるTHCには、
麻酔作用はない。

さて、最初の方で書いた「医療大麻」だが、
実はこれは特定の「大麻」の種類を指している言葉ではない。
これは「大麻」に含まれている成分を利用した
生薬療法のことを指していて、治療方針の1つである。
だから「医療大麻」って何?ということになれば、
ごく普通の「大麻」です、ということになる。
アメリカやヨーロッパの国の中には、
この「医療大麻」を解禁している国もある。
国によるが、一定量以下の分量であれば、
嗜好用ということで、「大麻」を持つことを容認している国もある。
アメリカなどは、州によって「大麻」の法整備が全く
違っているので、結構ややこしいことになっている。
ただ、ある程度「大麻」を容認している国であっても、
栽培や、運転時の服用などを禁じている所がほとんどだ。
では、この「医療大麻」、一体どんな症状に効果があるのだろうか?
調べてみた所、更年期障害から癌まで、幅広く効果があるようである。
てんかん、頭痛、腰痛、肥満、脱毛症など、
ジャンルを問わず、本当に何にでも効くようだ。
ただ、大きくその効果が謳われているのは、
鎮痛、癌の抑制・治療、不眠症などが多い。
今までの経験からすると、この手の幅広い薬効を謳う薬は
怪しげなものが多かったのだが、
どうもこの「大麻」も、それらと同じなのかもしれない。

この「大麻」に対する各国のスタンスも、
それぞれの国ごとに、それぞれの基準を設けているのだが、
大まかに分類すると、欧米ではこれを積極的に解禁している所も多く、
アジア・アフリカでは、これらを違法としている所が多い。
積極的な国としては、オランダが挙げられる。
1976年に寛容政策を始めたオランダは、
コーヒーショップで処方箋やライセンスに関係なく、
「大麻」を購入できるようになっている。
コーヒーショップで大麻?と、驚く人もいるだろうが、
ここでいうコーヒーショップとは、いわゆる喫茶店のことではなく、
「大麻」の販売所のようなものである。
我々の良く知っているコーヒーショップは、
一般的にはコーヒーハウスと呼ばれており、
大麻の販売所とは、全くの無関係である。
逆に「大麻」に厳しい国としては、タイが挙げられる。
タイの法律では、麻薬生成、販売に関わった場合は死罪、
麻薬組織に対しては、証拠不十分でも法的手続きを経ずに、
超法規的な殺害が行なわれるという。
厳しいというか、ムチャクチャである。
2003年のタクシン首相政権時には、
わずか3ヶ月の間に、麻薬事犯ということで
2500名が殺害されている。
恐ろしいことに、後の調査では、
そのうちの半分以上、1400名が
麻薬事犯とは無関係であるとされている。

さて、賛否様々な意見のある「大麻」。
調べてみた所では、効果があるという意見も、
効果がないという意見も、かなりの数が入り混じっており、
その効果のほどを推し量るのは、正直不可能である。
ただ、世界的に見れば、たしかに「大麻」の規制は
緩められる方向に動いている。

果たして日本で、「医療大麻」が
認められるかどうかはわからないが、
それまでは、「大麻」に手を出すのは止めておこう。

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