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セイタカアワダチソウとススキの戦い。

更新日:

田んぼの畦を覆いつくしていたヒガンバナが、ほぼ無くなってしまった。

これは季節のことなので、どうということもないのだが、

それと入れ替わるようにして、目立つようになってきたのが、

セイタカアワダチソウである。

ひょろっと背の高い、まるで棒切れのような茎に、

葉が何枚もついている。

そしてその先端には、淡く黄色い花がついている。

それも形のはっきりとした花ではなく、なんか房のような黄色い花が、

円錐状に集まっている。

セイタカアワダチソウの最大の特徴は、その繁殖力で、

休耕田や空き地、河原などでは、一面にセイタカアワダチソウが

広がっている所もある。

「セイタカアワダチソウ」とカタカナで表記しているが、

漢字では「背高泡立草」と書く。

背が高く、花が泡立っているように見えることから、

この名前が付けられた。

一説には、綿毛状の種子をつけた姿が、

泡立っているように見えたともいわれる。

花か、種子か。

どちらが正しいのかははっきりしないが、

確かに花も種子も泡立っているように見える。

セイタカアワダチソウは、

キク科アキノキリンソウ属に属する、多年草である。

え、セイタカアワダチソウって、毎年枯れてるんじゃないの?と、

思われるかもしれないが、実は枯れたように見えても、

地下茎という形で生き残っている。

そして翌年には、その地下茎から、新しいセイタカアワダチソウが生えてくる。

つまり、セイタカアワダチソウは種子と地下茎の、

2種類の繁殖方法を持っているということになる。

北アメリカが原産地であり、日本には明治時代末期に持ち込まれた。

目的は切り花用の、観賞植物としてであった。

しかし、この時に持ち込まれたものは、ほとんど拡散しなかったようだ。

これが本格的に日本に入ってくるのは、第2次世界大戦後のことである。

アメリカ軍からの輸入物資に、種子が付着していたのが原因で、

日本中に広がっていった。

昭和40年代には、植物学者の中にも、

セイタカアワダチソウの脅威を訴える人がいたのだが、

国はこれに対し、全く対策をたてなかったので、

現在のように日本中に大繁殖することになってしまった。

それにしてもなぜ、セイタカアワダチソウは、

こんなに爆発的に広がっていったのだろうか?

実は、セイタカアワダチソウは、毒をまき散らしているのだ。

それも、根の先から地中にまき散らしている。

毒、といっても他の植物の成長を阻害する物質のことで、

これをアレロパシーと呼ぶ。

これによって、他の植物の成長を遅らせ、結果として生存競争に勝利する。

旺盛な繁殖力だけではなく、他者の足を引っ張っているのである。

なかなかに、悪辣な植物である。

もっとも、この毒の効果はセイタカアワダチソウ自身にも効くので、

ある意味で、捨て身戦法であるともいえる。

なお、この毒は植物だけでなく、ミミズやモグラにも効く。

そのため、セイタカアワダチソウの繁殖し始めた場所では、

他の植物は成長を阻害され、ミミズやモグラなどの動物も駆逐され、

ただセイタカアワダチソウのみが、大繁殖する結果になるのである。

このセイタカアワダチソウに押されるようにして、

それまでの日本在来植物たちは、数を減らしていった。

だが、皮肉なことが起こりはじめる。

滅ぼすべき他の植物が無くなっても、

「毒」を出し続けたために、今度はセイタカアワダチソウ自身が、

この「毒」の影響によって、滅び始めたのだ。

捨て身戦法は、敵がいなくては成立しない。

敵のいない捨て身戦法は、ただの捨て身である。

そして、そんな中で、在来種の反撃が始まった。

ススキである。

セイタカアワダチソウに圧倒されていたススキだが、

敵が弱ってきた際に、セイタカアワダチソウの毒を体内に取り込み、

これを中和し始めたのだ。

さらに土に栄養素を与えることにより、自らの勢力圏を広げていく。

ススキによって、セイタカアワダチソウが駆逐された場所では、

ミミズやモグラが復活し、さらに他の在来種も姿を見せ始めた。

少しずつではあるが、セイタカアワダチソウが入ってくる以前の姿に、

戻り始めたのである。

現在、セイタカアワダチソウは自らの毒で弱り、

ススキに追われるようにして、その勢力圏を減らし始めている。

恐らくは将来、かつての強烈な繁殖力を押さえられたまま、

一定数の数を保持する種へと、変わっていくだろう。

日本の生態系の中に、とけ込んでいくのだ。

どんなに強いものであっても、勝ち切ることはできず、

適度に弱って、生態系の中に組み込まれていく。

日本の自然の、懐の深さを感じずにはいられない。

ちなみに、日本でセイタカアワダチソウに反撃したススキだが、

どういうわけか、現在、北アメリカで凄い勢いで繁殖しつつある。

向こうでは、セイタカアワダチソウが在来種、ススキが外来種だ。

はたして北アメリカのセイタカアワダチソウは、ススキに反撃し、

自らの祖国の生態系を、守ることはできるのだろうか?

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