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ポンジュース

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愛媛県について、あまり詳しくない人に、
「愛媛県といえば?」と尋ねると、
ほとんどの人が「みかん」と答えるだろう。

それほど、愛媛県の「みかん」は有名である。
実際に2014年度の
都道府県別「みかん」収穫量ランキングをみてみると、
1位の和歌山県とは30000tほど収穫量の差はあるものの、
137800tで、堂々の全国2位となっている。

では、「みかんを使った商品といえば?」と聞いた場合、
どういう答えが返ってくるだろうか?
存外、「みかん」というのは、そのまま食べることが多く、
これを商品に加工する、といっても、
せいぜい思いつくのは、皮と袋を剥いたみかんの実を、
甘いシロップに漬けた缶詰くらいではないだろうか?
「みかん」は、もっとも日本人に愛されていると
いっていい果物であるが、これを使った商品には、
これぞ定番と言えるものは少なく、
イマイチメジャーになりきれない、小粒な商品ばかりである。

その、みかんを使った少ない定番商品の1つが、
「ポンジュース」だ。
これは、日本人では知らない人がいないというほどの
「オレンジジュース」の代表選手であり、
同じ「オレンジジュース」のブランドである、
「バヤリース」や「QOO」、「なっちゃん」などをおさえて、
一番人気を誇っている。
(ちなみに、売り上げを比べたものではなく、
 あくまでも、どの銘柄のオレンジジュースが好きか?という、
 人気アンケートを元にした結果である)
人気の秘密は、愛媛県産みかん果汁100%という、
濃厚な味わいにあるようで、
サッパリした味わいがいい、という人には受けが良くない。
ただ、他ブランドのオレンジジュースが、
さっぱり感と爽やかさで勝負する中、
確かな素材の、濃厚な味わいをウリにしている「ポンジュース」は、
オレンジジュースの王道を行く商品であり、
他のブランドがサッパリ感や爽やかさを押し出すのも、
絶対王者の持つ濃厚な味わいと、同じステージで味を競うのを、
避けているのかも知れない。

ここの所、「石鎚山山行」から派生した、
愛媛県関連の記事を書いているのだが、
自分が同地で感じた「ポンジュース推し」の姿勢は、
驚くべきものであった。
SAに入れば、ポンジュース専用の冷蔵ケースが用意され、
大々的に「ポンジュース」が販売されているし、
コンビニエンスストアのジュース売り場でも、
「ポンジュース」がこれでもかと、その存在を主張している。
途中で寄ったホームセンターや、ドラッグストアでも、
こちら(たつの市)では考えられないほどのスペースを、
「ポンジュース」に割いていた。
もちろん、店に置いてあるオレンジジュースは
「ポンジュース」だけではなく、
それ以外の、愛媛産オレンジジュースも並んでいるので、
結果として、他では考えられないほど充実した
「オレンジジュース」コーナーを各所で目にすることになった。
ひょっとするとこれは、愛媛県民の「オレンジジュース」にかける
矜持なのかも知れない。

「ポンジュース」は、1952年(昭和27年)から発売されている
オレンジジュースの商品名である。
当時、愛媛県青果農業共同組合連合会会長であった桐野忠兵衛が、
「愛媛県のみかん産業をどのように発展させるか?」という
命題を抱え、アメリカの果樹産業の視察に出かけた。
そこで彼が目にしたのは、ジュース工場において、
オレンジ・タンゼリン・グレープフルーツなどが、
ジュースや缶詰に加工されていく姿であった。
彼は帰国後、早速、ジュース工場の創設に取りかかり、
わずか1年後には工場を完成させ、操業を開始した。
エラいハイペースな展開だが、この桐野忠兵衛という人は、
何でも思いついたことは、
すぐにやってみたくなる、という性格だったらしい。

この「みかん」をジュースに加工するという方法は、
単純に新しい商品を展開する、ということの他にも、
いくつかのメリットがあった。
例えば、これまでだと商品にならなかった、
小玉の「みかん」をジュースの原料として使用できる他、
「みかん」が穫れすぎて、値崩れを起こしそうな年は、
余分な「みかん」をジュースにしてしまうことで、
値崩れを防ぐことも出来た。
そうなると、「みかん」農家としては大歓迎だろう。
従来は捨てるしかなかった小玉「みかん」も出荷でき、
大豊作になっても、値崩れを起こさないのである。

この「みかんジュース」は、当時の愛媛県知事で、
松山藩藩主の血を引く久松定武によって、
「ニッ「ポン」1のジュースになるように」との願いを込め、
「ポンジュース」と名付けられた。
どうしてそんな微妙な部分から名前を取ったのか、
ちょっと頭をひねりたくなるが、
「ニチジュース」でも「イチジュース」でも、
あまり響きは良くない。
名前の意味合いよりも、音の響きを重視したのかも知れない。
「ポンジュース」が昭和27年の発売以降、
ロングセラーになっていることを考えると、
彼の判断は、かなり鋭かったことになる。
ただ、この名付けには異説もある。
この久松定武は、かつてフランスに住んでいたことがあり、
フランス語の挨拶「ボンジュール」の「ボン」に似ていることから
「ポン」ジュースにした、という説である。
だが、冷静に「ボンジュール」の言葉を見ると、
この言葉自体が「ポンジュース」に似ている。
これは想像になるのだが、
もともと「ボンジュール」という言葉に馴染みのあった彼が、
ジュースの命名を頼まれた際、この響きによく似た
「ポンジュース」という名前を思い浮かべた。
ただ、どうして「ポンジュース」なのか?と尋ねられた場合、
まさか「何の意味もなく思いついた」とは言えない。
そこでこの「ポン」のところに何か意味を持たそうとして、
ニッポンの「ポン」を持ち出してきた。
真実は、そんなところではないだろうか?

さて、現在では果汁100%ジュースとして
知られている「ポンジュース」だが、
実は、販売開始された昭和27年から昭和44年までは、
果汁100%ではなかった。
これは現在の基準(現在の基準では果汁100%でなければ
「ジュース」を名乗ることは出来ない)では
「ジュース」といえないのだが、
1967年にJAS法が改正されるまでは、
果汁100%でなくても「ジュース」を名乗ることが出来た。
本来的には、昭和27年が
「ポンジュース」誕生の年ということになるのだが、
公式的には、果汁100%の「ポンジュース」となった
昭和44年が、「ポンジュース」誕生の年となっている。

「石鎚山」に登る前、コンビニで昼食用の弁当と
登山中に飲むドリンクを買う際、愛媛県ならではということで、
いつもならスポーツドリンクを選ぶところを
「ポンジュース」のペットボトルを選んだ。
登山に「ポンジュース」は合わないか?とも思ったのだが、
濃厚な甘味と強い酸味は、疲れた身体に「効く」ウマさであった。

意外にも、登山と「ポンジュース」の相性は、
結構いいのかも知れない。

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