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マタタビ

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愛媛・石鎚山からの帰り道。
登山中に靴底が剥がれてしまった友人のため、
代わりの履物を購入すべく、愛媛のホームセンターへ立ち寄った。

これは別に、愛媛のホームセンターに限ったことではないのだが、
最近、「産直市」と称する地元特産品の販売コーナーを設けている
ホームセンターがある。
自分の地元のたつの市で言えば、
「ホームセンターアグロ龍野店」の中にある
「産直市」がそれにあたる。
ここでは、近隣の農家などが生産した農作物などを、
そのまま持ち込んで販売している。
農作物の1つ1つに生産者の住所・氏名が書かれており、
出所の明らかな農作物が買える上、
余計な中間業者が入っていないため、普通のスーパーの農産物よりも
安い値段で、これらを購入することが出来る。
地産地消を強力に推し進めることが出来、
地元住人にしても、新鮮な農作物を安価で購入できるという
うれしい仕組みが「産直市」で、自分も良く利用しているのだが、
この「産直市」が、立ち寄った愛媛のホームセンターにも、
設けられていたのである。

友人が履物を物色している間、
自分はこの「産直市」に入り込み、愛媛の農作物を物色してみた。
並べられている農産物の種類に関しては、
たつのの「産直市」に並んでいるものと、ほとんど変わらない。
たつの市のある播磨地域も、石鎚山麓の伊予地方も、
共に瀬戸内海という内海に面した、温暖な地域なのだから、
当然、生産される農作物も似通ったものばかりになる。
しかしそんな中、愛媛の名産品である蜜柑や、
その他の柑橘類を使用したジュースやマーマレードなどが並んでおり、
こちらの「産直市」との違いも見受けられた。

そうやって「産直市」を見て回っていた自分の目に、
見慣れない農産物が目に入った。
それはビニール袋に入った緑色の塊で、
何かの「実」のように見える。
サイズは3~4㎝ほどの楕円形で、
表面に傷が入り汚れているものもある。
少なくとも、たつのの「産直市」では目にしたことのない物である。
一袋の中に500g~1kgほど入っており、
値段は1000円前後であった。
珍しいので、これを手にとって良く袋を見てみると、
そこには「マタタビ マタタビ酒用」と書かれていた。

「マタタビ」といえば、多くの人は「ネコ」を思い浮かべる。
「ネコにマタタビ」という言葉もあるように、
「マタタビ」は「ネコ」の好物である、と認識している。
だが、改めて「マタタビ」って、どんなもの?と聞かれて、
その型状などについて、スラスラと答えられる人が
どれくらい居るだろうか?
以前、このブログで書いたことがある通り、
我が家では過去にネコを飼っていたことがある。
そのとき、妹か母親がネコの好物だということで、
「マタタビ」を持ってきたことがある。
このときの「マタタビ」は、
小さなビニール袋に入った粉末であった。
袋の中に入っている量もごく少量で、
人間の飲む粉薬の1回分よりも、少ないくらいであった。
この粉末を、ほんの少しだけ紙片などになすり付け、
ネコにその臭いを嗅がせるようにしてみた。
するとどうだろう。
たちまちに効果が現れ、ネコは狂ったようにその場で転げ回り、
喜んでいるのか、トチ狂っているのか判別しにくい状況となった。
その時の様子が、あまりにも普段の様子と違っていたため、
ネコに「マタタビ」をやったのはそれっきりで、
残りはネコに与えられる事なく、どこかに紛失してしまった。
あるいは、これはヤバそうだということで、
誰かが処分してしまったのかも知れない。

「マタタビ」は、マタタビ科マタタビ属の落葉つる性木本である。
別名を「夏梅」とも呼ばれるが、これはその花の型状が
梅の花に似ているからだろう。
楕円形の葉が、ツル状の枝に互生しており、
6~7月の初夏ごろに、直径2㎝ほどの白い花をつける。
花をつける季節になると、
枝先の葉の表面が白く変色することがあり、
自生している「マタタビ」をみつける目安になる。
雄しべのみつける雄株、雌しべのみつける雌株、
雄しべと雌しべの両方をつける両性株があり、
昆虫の媒介によって受粉する。
普通なら、両性株があるのであれば、
雄株も雌株も必要ないはずなのだが、
どういうわけか「マタタビ」には、この3種が存在している。
果実は3~4㎝ほどの、先の尖った楕円形をしており、
表面は平滑である。
青い実には強い辛みがあるが、熟して黄色くなると甘味が出て
そのままでも、美味しく食べることが出来るようになる。
ただ、舌に刺激が残り多くは食べられず、
せいぜい1つしか食べられないという話も多い。
つまり、甘いのは甘いがクセがあるので、
食べ続けるのは辛い、ということだろうか。
さらに果実の中には、表面がボコボコと不格好に膨らんだ
「カボチャ型」と呼ばれるものも存在する。
これは果実の中に虫が入り込み変形した物で、
「虫えい」と呼ばれる現象である。
「マタタビ」は、この「虫えい」が良く起こる植物で、
木によっては、ほとんど全ての実が「虫えい」になることもある。
つまり、この「カボチャ型」の果実は、
本来的には奇形とされるべき物であるのだが、
乾燥しにくく、中に有効成分が多く残されるために、
通常の健康な果実よりも珍重されて、値段も高い。
この「カボチャ型」の果実を熱湯で処理して乾燥させたものは、
漢方薬「木天蓼(もくてんりょう)」として、
古くから珍重されている。

本州、四国、九州、北海道の山地の林縁などに自生しており、
海外では朝鮮半島、千島列島などに分布している。
分布の状況から見るに、日本の在来植物であると考えられる。
文献上では、「本草和名」(918年)の中において、
「和多々比(わたたひ)」、
「延喜式」(927年)の中においては
「和太太備(わたたび)」と記されている。
貝原益軒の「日本釈名」(1699年)においては、
果実に長いもの(正常果)と平たいもの(虫えい果)があるので、
「マタツミ」の義であろう、と書かれている。
その名前の由来については、有名な言い伝えがあり、
「疲れた旅人が「マタタビ」の実を食べたところ、
 元気を取り戻して、また旅を続けることが出来た」という話から、
「また旅」となり、これがそのまま名前になったという話である。
ただ文献上の記述を見る限り、
「ま」たたびではなく、「わ」たたび(ひ)となっているので、
この言い伝えはやはり、後の創作であると思われる。
最近ではアイヌ語の「マタタヌブ」から来ているという説が
有力視されている。

さて、最初に書いた通り、「ネコ」に対して
一種の泥酔・興奮効果をもたらすとされている「マタタビ」だが、
実はネコに限らず、ネコ科の動物に広く有効であるとされている。
実証例は少ないものの、ライオンやトラなどで実験してみたところ、
ネコ同様の結果が得られたという話もある。
どうしてネコ科の動物が、
「そういう」状態になるのかということについては、
まだはっきりとは分かっていないのだが、
「マタタビ」にはネコの中枢神経を麻痺させる働きがあるため、
与えすぎると呼吸困難や心停止を起こし、
最悪の場合、死に至るケースもあるという。
また、ネコの中でも「マタタビ」の効果の少ない、
あるいは無いものもおり、メス猫や子猫には効果が薄いとされる。
ネコが喜んでいるように見えるからといって、
与えすぎてしまう様なことになれば、
それが命取り、ということにもなりかねない。

ネコに「マタタビ」を与える場合は、
くれぐれも慎重に行なうようにしたい。

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