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石鎚山〜その4

更新日:

2時間半ほどの時間をかけて、
石鎚山山頂山荘のある弥山に辿り着いた。

ここには石鎚山山頂山荘の他に、
石鎚神社の頂上社も建てられている。
山荘の横には2基の風車が設置されており、
山頂に吹く風を受けて、猛烈なスピードで回転している。
ひょっとしたら、山荘の電力を賄う風力発電かも知れない。
石鎚神社の頂上社は、弥山山頂に建てられており、
その土台となっている岩場には、鎖場で使われていた
ゴツい鎖が巻き付けられている。

この頂上社にお参りした後、
当然、ここから400mほど離れた石鎚山の最高峰、
天狗岳を目指すつもりだったのだが、
同行している2人のメンバーは、どうも乗り気でない。
というのも、弥山から天狗岳の間は
かなり鋭い岩峰になっており、
場所によっては刃物の上を渡る様な、かなり危険な箇所がある。
さらにいえば、弥山からかなり急な下りになっており、
先ほど恐ろしい思いをしてクリアしてきた鎖場と
同じ様な鎖場を下らなければならない。
(もちろん、60mもある様な鎖場ではなく、
 せいぜい10mそこそこの下りなのだが……)
どうも2人は「鎖場」というのに、
苦手意識が出来てしまったらしく、
天狗岳の登頂は諦めて、山頂山荘で待っているという。
これから向かう先が危険なのは確かなので、
さすがに一緒に行くことを勧めることも出来ない。
仕様がなしに、自分1人で天狗岳の山頂を目指すことになった。

まず、最初の難関は10mほどの下りの鎖場だ。
鎖のかけられている様な急斜面というのは、
登るよりも下る方が、ずっと難しい。
手をかける場所はまだしも、
足を置く場所が見えにくいからである。
さらにいえば、ここの岩場もまた、
シトシトと降る雨でジットリと濡れて、滑りやすくなっている。
かなり慎重に足場を探し、ゆっくりとこの鎖場を下る。
辺りに濃い霧が立ちこめているため、
鎖場の下ですらおぼろに霞んでいる。
当然、400mほど先にある天狗岳の姿など見えるはずはなく、
かなりの急斜面であるはずの左右でさえ、
霧の中に隠れてしまっている。
このため、「弥山から天狗岳までのルートは、かなり怖い」という
前評判はそれほど意味を持たないものになった。
ほんの10mほど下は、霧に包まれて真っ白なのだ。
これでは高度感など全く感じず、怖さなど感じることもない。

雨と霧という誠に悪い条件ながら、
弥山から天狗岳までの道には、結構人がいた。
やはりせっかく石鎚山に登ったのだから、
少々条件が悪くとも、最高峰である天狗岳を踏みたいという、
人間は多いようである。
危険なことで知られる弥山→天狗岳ルートだが、
実際歩いてみて、本当に危険に感じたのは
弥山から下る鎖場と、天狗岳に近い一部分だけである。
それ以外の場所は、平らな場所こそ少ないものの、
左右に結構幅があり、木やササが生い茂っている。
ただ、天狗岳の前辺りになると、これらの植物が一切なくなり、
純粋な岩場だけになる。
(もっとも深い霧の中で見たことだから、
 実際にはちょっと離れた所に、
 木やササも生えているのかも知れないが……)
天狗岳の写真を見てもらえば分かるが、
そこだけは尖った岩塊が斜めに突出しており、
そこに至る一部分は、刃の上を移動している様な感じになる。
先ほど登ってきた「二の鎖」と違うのは、
縦に移動するのではなく、横に移動しないといけない点、
さらにここには鎖などの手がかりになるものが何もなく、
純粋に岩に張り付くようにして、移動しなければならない点だ。
刃の様な岩場を越え、斜めに尖った岩塊を登り切ると、
そこが西日本最高峰、石鎚山系天狗岳頂上となる。

本来ならば、360度の大展望が楽しめるのだろうが、
周りに濃い霧が立ちこめているため、
360度、足下以外は真っ白である。
これでは感動もへったくれもない。
だんだんと雨脚が強くなり始めていることもあり、
ほんの15秒ほど山頂に立った後、早々に下山を開始する。
山頂から少し歩いて下った後は、
再び岩にへばりつき、斜め下方向へと下りて行く。

岩肌が濡れているため、よりしっかりとした手がかりを求め、
斜め下方向へグイーッと手を伸ばしていたときであった。
急に身体に強い力がかかり、
突き飛ばされるように下方向へつんのめった。
一瞬、誰かに突き飛ばされたのか?と思ったのだが、
何のことはない、上半身を下方向に向けて伸ばしていたため、
リュックサックがペロンとひっくり返り、
その反動で身体が引っ張られただけであった。
弥山について一服した際、
リュックを下ろして飲み物を飲んだのだが、
その後、リュックを背負い直した際、
胸部分のホールドをロックし忘れていたのである。
あわてて、胸のホールドをロックし直した。
あわやリュックサックに突き落とされて、死んでしまう所であった。

思わぬ命の危機を乗り切り、難所を抜けた自分は
弥山の鎖場まで戻り、最後の岩場を攀じ登った。
すでに雨はかなり激しくなってきており、
洗面器をひっくり返した様な雨である。
じきにバケツをひっくり返した様な雨になるだろう。
ちょうど鎖場を登り切った所で、友人が待っていた。
急いで山頂山荘の中に避難し、そこで雨具を脱ぎ、
濡れた身体を拭いてから、弁当ということになった。

山荘の中で弁当を食べている間、
外の雨はますます強くなり、
それこそバケツをひっくり返した様な雨になった。
昼食を食べ終わった我々は、山荘の中で休憩しながら
雨脚の弱まるのを待っていたのだが、
いつまでも待っても、雨の弱まる気配がない。
時間が午後2時を回り、そろそろ下山を始めないと
明るい間に下山できない時間となった。
我々は再び雨具を着込み、覚悟を決めて下山を開始した。
メンバー1人の靴の裏が剥がれかけるというトラブルもあり、
自分を先頭にノロノロとした下山である。

まず第1の難関は、鎖場の迂回路だ。
金属製ではあるものの、
しっかりと滑り防止加工がなされているので、
ツルッと滑って奈落の底へ、ということは起こりにくいだろうが、
谷側に手すりがないので、足を踏み外せば
やはり命はない。
ここで何人かの登山客とすれ違ったが、
ここ以降では、もう登ってくる登山客はいなかった。

二の鎖小屋まで戻ってからは、木道を中心としたトラバースになる。
雨に濡れた木道は良く滑り、非常に危険だ。
スリップしないよう、慎重に木道を下って行く。
右手には100m以上の切り立った岩壁。
かなり強い雨が降ったため、その所々に滝が出来ており、
場所によっては、その滝が木道に当たって、
盛大にしぶきを上げている。
かなり危険ではあるが、そこを越えて行かないと
土小屋に戻ることは出来ない。
しばらくトラバースを続けて行くと、やがて周りに樹木が多くなる。
周りに木やササが多くなってくると、
所々で、大きなウシガエルが姿を見せる。
いきなりササや草がガサガサッと動き、
ウシガエルがノッソノッソと歩く。
普段はほとんど水気もない様な高山に、
これだけの数のウシガエルが生息しているとは、
ちょっとした驚きである。

途中、第1~第3のベンチで小休憩をとりつつ、
おおよそ2時間の時間をかけて、無事に車にたどり着いた。
幸いなことに、雨脚は途中で弱くなっていたので、
パンツの中までびしょ濡れになる、
なんていうことにはならずに済んだ。
車で着替えを済まし、今度は石鎚スカイラインを走って下山した。
さすがに、あの走りにくい県道40号線を、
再び30kmも走る気には、ならなかったからだ。
石鎚スカイラインは、石鎚山の西側へ
大きく回り込むように続いているため、
走行距離は大きく伸びることになるのだが、
道は終始、立派な2車線道路なので、
走っていてもストレスが少ない。
石鎚山から大きく西側へ回り、松山市へと入り、
そこから松山自動車道へ上がり、たつのへと向かった。

台風の接近と、それにともなう雨という、
悪天候のもと行なった「石鎚山登山」。
鎖場や天狗岳の岩場が濡れて危険度が増したり、
展望がほとんど効かないというデメリットもあったが、
それでも楽しい所の多い登山であった。

もし次回があるのなら、
展望のいい晴れ渡った日にロープウェールートから登り、
全ての鎖場に挑んでみたいものである。

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