ここまで2回にわたり、
「ライダー」シリーズの怪人デザインについて、
組織ごとに、分析・検証してきた。
今回は「仮面ライダーストロンガー」以降の怪人デザインについて、
見ていきたい。
「ストロンガー」の敵組織もまた、
「アマゾン」のそれと同じように前期と後期で別組織となる。
前期の組織「ブラックサタン」は、
ショッカー以来の「ライダー」を作った組織だったのだが、
ショッカーのように2号ライダーや、
ショッカーライダーを製作する様なことはなかった。
この「ブラックサタン」の製作する怪人は、
「奇械人(きっかいじん)」と呼ばれる。
「機械」と「奇怪」をかけているようである。
カンガルーをモチーフとした「奇械人ガンガル」、
オオカミをモチーフとした「奇械人オオカミン」、
サソリをモチーフとした「サソリ奇械人」など
そのほとんど全てが動物をモチーフにしているのだが、
ただ1体だけ、苔をモチーフにした「奇械人モウセンゴケ」がある。
一体、何を考えてそんな「奇械人」を作ったのか、理解に苦しむ。
この「ブラックサタン」は26話で壊滅し、
これに変わって登場してくるのが「デルザー軍団」だ。
「デルザー軍団」は、構成員が全て幹部怪人という
異色の組織である。
「ジェネラルシャドウ」、「鋼鉄参謀」、「荒ワシ師団長」など、
名前の一部に「役職名」が入っている。
(一体だけ、「蛇女」という例外もあるが……)
ジェネラルや大元帥などの「役職」はいいとして、
隊長や団長などは、やや押し出しが弱い。
スフィンクスの子孫や狼男の末裔、
フランケンシュタインの子孫など、
割と有名な「モンスター」の末裔を名乗っていることが多かった。
随分と欲張った組織であるが、
さすがに一体一体の怪人の力量は高く、
最終的にはライダー軍団と「デルザー軍団」の総力戦になった。
「仮面ライダー(新)」の敵組織は「ネオショッカー」。
ネーミングからして「仮面ライダー」の「ショッカー」と
関係がありそうだが、実は全くの別組織である。
恐らくは、「ショッカー」の名前だけ拝借したものと思われる。
怪人のデザインについても、「ショッカー」に似通った所があり、
「ガメレオジン」、「クモンジン」、「コウモルジン」と、
動物モチーフ+「ジン」となっている。
実際には、この後「キノコジン」、
「アオカビジン」などが出てくるので、
動植物モチーフ+「ジン」ということになる。
この「ジン」は、恐らく「人」のことではないかと思うのだが、
そこら辺は、はっきりしていない。
「ショッカー」の「~~男」みたいなものだろうか。
最初の大幹部・ゼネラルモンスターが倒されるまでは、
この「~~ジン」パターンが続くのだが、
第2の大幹部・魔神提督が登場してからは、
「~~ジン」シリーズは、だんだん使われなくなっていく。
魔神提督が大幹部に就任してからは、
「サイダンプ」、「クラゲロン」など動物をモチーフにしたものや、
「トリカブトロン」、「キギンガー」など植物モチーフのもの、
「ヒカラビーノ」、「オカッパ法師」など怪物モチーフ、
「コゴエンスキー」、「グランバザーミー」など
モチーフ不明なものなど、無秩序状態になってしまう。
はっきりいって、何でもありである。
この辺り、ゼネラルモンスターと魔神提督の性格が表れている。
「仮面ライダースーパー1」も、前期と後期で敵組織が変わる。
前期が「ドグマ」、後期が「ジンドグマ」である。
名前が似ていることから、
何か繋がりがあるのでは?と思ってしまうが、
特に2つの組織が繋がっている様なことはなかった。
「ドグマ」の怪人は「ファイヤーコング」、
「カメレキング」、「スパイダーババン」など、
動物をモチーフにした怪人で固められている。
ただ、1匹だけ「ツタデンマ」という、
植物と電話機がモチーフの怪人がいるのだが、
一体、どういう経緯でこの怪人を作ったのだろうか?
仮面ライダースーパー1自体が、少林寺拳法を使う設定だったので、
この「ドグマ」の怪人は様々な格闘技を使う武闘派が多い。
その点で言えば、主人公の設定を最大限に活かすことの出来る
敵組織であったといっていい。
だが「ドグマ」は番組前半を持って壊滅してしまい、
これに続くようにして新組織「ジンドグマ」が登場する。
この「ジンドグマ」、名前だけを聞いていると、
いかにも「ドグマ」のパワーアップ版のように聞こえるが、
実際には、「ドグマ」とは全く関係のない新組織である。
この「ジンドグマ」、どういうわけか、
今までの悪の組織に無いパターンの怪人を作り出した。
それらを挙げてみると、
「キラーナイブ」、「ジシャクゲン」、
「グラサンキッド」などである。
モチーフになっているのは、ナイフ、磁石、サングラスと、
全て日用品ばかりである。
「V3」のときに「動物」+「道具」というパターンがあったが、
「ジンドグマ」のそれは、
そこから「動物」の要素がキレイに抜けている。
この「ジンドグマ」には4人の大幹部が同時に存在しており、
毎回、その中の1人が自らの配下の怪人を出撃させていた。
だが、4人の大幹部ごとの怪人の特徴というのはなかったので、
怪人の製作に、大幹部たちは関わっていなかったらしい。
次の「仮面ライダーZX」は、ちょっと変わった作品だ。
他の「ライダー」のように、TVによる放送が行われず、
雑誌上でひとつの絵物語として、ストーリーが展開していった。
(一応、1回だけTVスペシャルが放映された)
この「ZX」の敵組織の名は「バダン」。
幹部は暗闇大使、ただ1人である。
この暗闇大使、実は「仮面ライダー」に出てきた
地獄大使の従兄弟という設定で、
見た目には地獄大使と、全く同じ姿をしている。
(腰のベルトのデザインは違うが……)
怪人は「クモロイド」、「タカロイド」、「バラロイド」など、
動植物をモチーフにしたものとなっており、
名前は全て「~~ロイド」で統一されている。
だが、名前は統一されているものの、
前半と後半で怪人の種類が変わっており、
前半は「強化兵士」、後半は「UFOサイボーグ」となっている。
「UFO」とついているものの、UFOらしい所は何もなかったので、
どうしてこういう名前がついたのか、どうもよくわからない。
「仮面ライダーBlack」の敵組織「ゴルゴム」は、
基本的に非常にシンプルな怪人を作る。
「クモ怪人」、「ヒョウ怪人」、
「コウモリ怪人」といった具合である。
全編を通して、動物がモチーフになっているのだが、
中に2つだけ「アネモネ怪人」、
「キノコ怪人」といった例外がある。
ネーミングに関しては非常にシンプルで、
すべて「~~怪人」で統一されていた。
幹部は3人いるのだが、後にこれに2人が加わる。
ただ、幹部の間には歴然とした身分差がある。
怪人のデザインコンセプトに、
全くブレが見られなかった所を見ると、
「ゴルゴム」は、かなり統率のとれた組織の様である。
これに続く「仮面ライダーBlack RX」では、
異世界からの侵略者「クライシス帝国」が敵となる。
ジャーク将軍の下に、海兵隊長ボスガン、諜報参謀マリバロン、
機甲隊長ガテゾーン、牙隊長ゲドリアンがいて、
それぞれ配下の怪人軍団を引き連れている。
「クライシス帝国」の面白い所は、
それぞれの隊長の配下の怪人たちに、
しっかりとした種類分けがなされている所だ。
ボスガン率いる「怪魔獣人」、
マリバロン率いる「怪魔妖族」、
ガテゾーン率いる「怪魔ロボット」、
ゲドリアン率いる「怪魔異生獣」と、しっかり分類されている。
この辺り、怪人のデザインに対して、
幹部のセンスが活かされている。
この他、クライシス皇帝直属の「最強怪人」というのがいるのだが、
「最強」というわりには2人もいる辺り、
結構いい加減なものなのかも知れない。
さて、ここまで3回にわたって
「ライダー」シリーズの敵組織の怪人のデザインセンスについて
細かく検証・考察をしてきた。
敵組織によって、デザインコンセプトが一貫されていたもの、
ムチャクチャなもの、徐々に崩壊していったものなど、
組織の「性格」が、如実に表れていた。
このシリーズの一番最初に、
人間の作ったモノには、すべからく作った人のセンスが表れる、
と書いたが、実際にはセンスの他に、性格までもが表れるようだ。
「何か」を作るという行為は、
ある意味で、究極の自己表現なのかも知れない。