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歴史

漢字で書く国名は日本語ではない。

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By: yoppy

日本を漢字で書くと「日本」である。

当たり前すぎて、バカにされそうだ。

通常、日本において、漢字で書き表される国は、4つだけだ。

「日本」、「中国」、「韓国」、「北朝鮮」。

この4つ以外は、カタカナで表記される。

もちろん、「連邦」とか「共和国」とか「合衆国」など、

一部に漢字が使われているのは、除外しての話だ。

しかし、国によっては、ちょっと代わった漢字表記をされることがある。

「米国」、「英国」などの表記がこれである。

「米国」はアメリカ、「英国」はイギリスを表している。

つまり「米」がアメリカを、「英」がイギリスを表しているわけだ。

これは不思議な表記である。

「米」がどう、アメリカに結びつくのか?

「米」といえば、何を連想するのか?

そう、「米」といえば、日本である。

日本は昔から「瑞穂の国」などと、いわれている。

「瑞穂」というのは、瑞々しい稲穂のことである。

つまり、瑞々しい稲穂が多く穫れる国、となる。

日本では昔から、米によって税を納めてきたし、

大名の所領の豊かさを、「石高」という米の収穫量で表した。

このように、日本と米の結びつきは強い。

日本を「米国」と表記するのであれば、これは納得のいく所だ。

しかし、実際には「米国」といえば、アメリカのことをさす。

アメリカと「米」の間に、どういう関係があるのか。

アメリカと「米」といえば、連想されるのは「米の輸入自由化」だろう。

しかしまさか、「米の輸入自由化」を求めてくるから「米国」というのは、

いくら何でも穿ち過ぎである。

実は、アメリカには「米国」以外にも、漢字表記が存在する。

それが「亜米利加」である。

これを「あめりか」と呼ぶ。

見て分かるように、漢字を使った当て字である。

まるで暴走族か、男塾の世界である。

もっとも暴走族や男塾の世界の他にも、同じようなことをしていた国はある。

他ならぬ、日本である。

日本では、ひらがな、カタカナという日本独自の表音文字が作られるまで、

中国から持ち込まれた、漢字のみを使っていた。

中国語を表すために漢字を使うことは、ごく自然なことだが、

日本語を漢字で表そうとすると、当然、そこには無理が生じる。

言語・文法が、全く違っているからだ。

だから、本来の「漢字」の使い方とは違う、日本独自の使い方をする。

それが「万葉がな」と呼ばれるものである。

「万葉がな」という名前は、

「万葉集」がこの文字で書かれていることに由来している。

といっても、「万葉集」を見ても、書かれているのは全て漢字である。

つまり、漢字を無理矢理表音文字にして、それを日本語に当てはめたものが、

「万葉がな」なのである。

では、「亜米利加」というのは、「万葉がな」なのか?

……そんなワケはない。

「万葉がな」はアメリカが建国される前に、とっくに使われなくなっている。

カタカナは、奈良時代の後期に、

ひらがなは、平安時代の初期に作られている。

これ以降は、漢字とひらがな、カタカナの入り交じった表記が、

使われるようになり、「万葉がな」は使われなくなっていく。

現に、平安時代に書かれた「源氏物語」などは、全てひらがなで書かれている。

当初のひらがなが、女性向けの文字として使われていたからだ。

では「亜米利加」などという表記は、どこからきたのか?

冷静に考えてみれば、どんな国でも漢字で表記している国が、

もうひとつある。

そう、漢字の生まれた国、中国である。

中国には、カタカナも、ひらがなも、ないわけだから、

自然、全てを漢字で表すことになる。

日本は国名の表記について、中国に習い、全て漢字で表記していたのだ。

次第に、カタカナによる表記が浸透していったが、

大正時代になってもなお、20カ国以上が漢字で表記されていた。

ここでその例を挙げてみる。

米国のように、漢字1文字の表記がある場合、その字は()で囲んでみる。

亜(米)利加……アメリカ

(英)吉利……イギリス

(伊)太利亜……イタリア

(印)度……インド

印度(尼)西亜……インドネシア

(埃)及……エジプト

濠太刺利……オーストラリア

阿(蘭)陀……オランダ

(加)奈陀……カナダ

(西)班牙……スペイン

(泰)……タイ

(独)逸……ドイツ

(伯)刺西爾……ブラジル

(仏)蘭西……フランス

(葡)萄牙……ポルトガル

(露)西亜……ロシア

これでほんの一部である。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツあたりは、

漢字1文字でもよく表記される。

しかしエジプトの「埃」は、どういう意味だろう。

まさか砂埃の「埃」だろうか?

だとすれば、随分と失礼な話だ。

スペインの「西」はそれ1文字だと、誰もスペインのことだとは思わないだろう。

つまりアメリカを示す「米国」というのは、

この漢字表記の、いわば残滓のようなものだったのだ。

そういえば、キン肉マンに出てくるアメリカ超人・テリーマンの額には、

「米」という字が書かれている。

中国超人・ラーメンマンの額には「中」の字だ。

これらも日本的な漢字表記のひとつなのだが、

ラーメンマンの「中」はともかく、

テリーマンの「米」は、当のアメリカ人にとっては、

全くワケのわからない表記のはずだ。

彼らにしてみれば「USA」と書かれている方が、自然なはずなのだ。

しかしそういうことなら、日本代表超人・キン肉マンの額の文字は、

「肉」ではなく、「日」の方が自然なのかもしれない。

……まったく、かっこよくはないが。

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