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レタス巻き

更新日:

このブログでは、今までに何度も
「寿司」について書いてきた。

これは、自分が「寿司」好きであるというのが、
大きな理由なのだが、実は子供のころ、
自分はあまり「寿司」が好きではなかった。
以前に書いたことがあるように、我が家では「寿司」といえば
「巻き寿司」か「バラ寿司」のことを指しており、
昨今、寿司の代名詞のようになっている
「にぎり寿司」を食べたのは、結構大きくなってからであった。
つまり、それまでの自分にとって「寿司」とは、
「巻き寿司」か「バラ寿司」であり、
これらは店で買ってくるものではなく、家で作るものだった。
この「巻き寿司」と「バラ寿司」が、
好きでなかったということは、
自分は「寿司」が嫌いであった、ということになる。
だが実際には、子供のころの自分は、
「バラ寿司」には苦手意識を持っていたものの、
「巻き寿司」は好きであった。

これには理由がある。
我が家で「巻き寿司」を作る場合、
焼きアナゴ、卵焼き、カンピョウ、キュウリなどを巻き込んだ、
ごく普通の「巻き寿司」の他に、
ツナマヨネーズをキュウリやレタスと一緒に巻き込んだ、
いわゆる「シーチキン巻き」を作っていた。
大人たちが、普通の「巻き寿司」を食べている横で、
我が家の3兄弟は、この「シーチキン巻き」を
頬張っていたのである。
だから我が家で「巻き寿司」を作る場合、
全体量の半分が、この「シーチキン巻き」であった。
この「シーチキン巻き」に限っていえば、自分も大好物であり、
ただ、その1点だけを持って、
自分は「寿司嫌い」になるのを免れていた。

自分が子供のころの話だから、もう35年以上前と考えていい。
その当時は、コンビニエンスストアなどもなく、
現在のように「ツナマヨネーズ」を具材にしたおにぎりが、
コンビニで販売されるというようなこともなかった。
そんな時代において、我が家ではすでに
「ツナマヨネーズ」が「巻き寿司」の具材となっていたのである。
……。
何と先進的な…と、感心してくれた人たちには悪いが、
別に当時の我が家の「巻き寿司」が、
時代を先取りしていたわけではない。
今ではすっかり寂れてしまっているが、
その当時、「小僧寿司」という持ち帰り寿司のチェーン店があり、
そこのメニューの中に、「シーチキン巻き」があったのである。
我が家の「シーチキン巻き」は、
子供たちが「小僧寿司」のそれを大喜びで食べるのを見た親が、
まるっとそのまま、家の寿司に取り入れたものなのである。

現在、コンビニおにぎりの1番人気は「ツナマヨネーズ」らしいが、
コンビニにおいて「おにぎり」が発売されたのが、
1980年のことである。
このときの、最初のラインナップ5種の中に
「ツナマヨネーズ」が存在しており、
「梅」「かつお」「昆布」「鮭」という定番4種とは
一線を画した、異色の存在であった。
だが、このときにはすでに「シーチキン巻き」が存在していた。
つまり、具材としての「ツナマヨネーズ」は、
「寿司」が「おにぎり」に先んじていたわけである。
ひょっとしたら「シーチキン巻き」をヒントにして、
「ツナマヨネーズおにぎり」が作られたのかも知れない。
初めて「ツナマヨネーズ」が、おにぎりの具材として用いられたとき、
「おにぎりの具に、マヨネーズなんて!」
と、強い反発があったらしいが、
なんのことはない、海苔、ごはん、ツナマヨネーズという組み合わせは、
すでに寿司の世界で存在していたわけである。
「ツナマヨネーズおにぎり」というのは、それに習ったに過ぎない。
ある程度の成功は、約束されていたのである。

では、寿司に「マヨネーズ」という組み合わせは
いつごろから始められたのか?

そんなの、「ツナマヨネーズ」が最初じゃないの?と、
考える人もいるだろうが、
実は、「寿司」に「マヨネーズ」を使い始めたのは、
「ツナマヨネーズ」が最初ではない。
昭和41年、宮崎のある寿司屋の主人が、
友人である作曲家の野菜嫌いを何とかしようと、試行錯誤の末、
レタス、エビをマヨネーズと一緒に巻き寿司に仕立てた。
マヨネーズについては、市販のものではなく、
特製のオリジナルのものだったらしい。
この巻き寿司は「レタス巻き」と名付けられた。
当時は、寿司にマヨネーズを使うということで、
非難されることも多かったが、
やがてその味が認められ、全国へと広がっていった。
さらに、マヨネーズを使った「レタス巻き」の亜種として、
「サラダ巻き」や「シーチキン巻き」が生み出された。
これらが現在、全国の回転寿司やスーパーなどで、
ごく当たり前に販売されていることから見ても、
寿司にマヨネーズという組み合わせの発見は、
寿司の歴史の中でも、大きなターニングポイントであったといえる。

かつては「シーチキン巻き」ばかりを食べていた自分だが、
大人になり、普通の「巻き寿司」も「バラ寿司」も
食べれるようになった。
だが、子供のころに「シーチキン巻き」がなければ、
そもそも「寿司」自体を好きになることがなく、
「寿司」が嫌いな人間になっていたかも知れない。
そういう意味では、半世紀ほど前に
宮崎で生み出された「レタス巻き」は、
子供時代の自分の目を、寿司へと向けさせ、
現在の寿司好きな自分を形成させた、原点であるともいえる。

エビ、レタス、マヨネーズと、
どれもスーパーで簡単に手に入るものであるし、
全くの素人技ながら、巻き寿司を作ることも出来る。
機会があれば、一度、作ってみてもいいのだが、
元祖「レタス巻き」のように、マヨネーズまで自作するのは、
ちょっと無理かも知れない。

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