雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

歴史 雑感、考察 食べ物

世界のパン〜アメリカ

更新日:

By: Kanko*

日本人は、他国の文化を取り込み、
自分流にアレンジしてしまう「性質」がある。

特にそれは「食文化」において顕著で、
様々な外国の「食文化」が、日本においてアレンジされている。
カレーライスは、本場・インドのものから、かけ離れているし、
ラーメンも、本場・中国のものから、かけ離れている。
フランス料理・クロケットをアレンジして、コロッケを作り出し、
コートレットをアレンジして、とんかつを作り出す。
さらにビーフシチューから、肉じゃがを作り出したり、
かに玉から、天津飯を作り出したりする。

日本人の多くは、これを、
日本人だけの持つ特性だと思っている。
だが、この他国の文化を取り込み、
自分流にアレンジしてしまうという「性質」は、
アメリカ合衆国も同じように持っている。
比較的歴史が浅く、世界中から集まった移民たちによって
作り上げられた国であるアメリカは、
それぞれの国からやってきた移民たちが、
それぞれの文化を持ち寄り、それをさらにアレンジして
現在のアメリカ文化を作り上げた。

例えば、現在、アメリカの代表的な食品となっている
「ハンバーガー」は、ドイツから持ち込まれたハンバーグと、
イギリスから持ち込まれたサンドイッチを組み合わせ、
アメリカ独自のアレンジを加えて、作り出されたものである。
さらに、アメリカから世界中に広がった菓子「ドーナッツ」も、
オランダの揚げ菓子が、アメリカで独自にアレンジされたものだ。
アメリカ合衆国には、長い歴史に裏打ちされた
「文化」というものはない。
だから彼等は、それぞれが故郷から持ち寄った「文化」を、
自分たちに合うようにアレンジして、自らの「文化」としてきた。

そして、その「性質」は、パンの上にも現れている。

アメリカに存在している、数多くのパンは、
もともとは移民たちによって持ち込まれた、
ヨーロッパの「それ」である。
例えば、イギリスから伝わった山形食パン
「ホワイト・ブレッド」は、アメリカで生産される、
タンパク質の多い小麦粉で作られることによって、
アメリカ流の、軟らかい食パンへとアレンジされた。
(名前は変わらず「ホワイト・ブレッド」のままである。
 アメリカ式「ホワイト・ブレッド」ということになる。
 日本の食パンは、このアメリカ式「ホワイト・ブレッド」に
 近い性質を持っているようだ)
これに限らず、アメリカの有名なパンの歴史を探っていくと、
その大方は、移民たちの故郷の「パン」に行き当たる。
それらを1つずつ、見ていくことにしよう。

まず、最近、日本でも人気のある「ベーグル」。
みっちり、もっちりとしたクラム(パンの中身)は、
日本人好みの食感であり、また、食べごたえもある。
多くは、リング状に成型されており、
これを水平にスライスして、具材をはさみ、
「ベーグルサンド」として、食べられることも多い。
アメリカの朝食パンのイメージの強い「ベーグル」だが、
もともとはユダヤ人の朝食として親しまれていたパンで、
1900年ごろに、移住したユダヤ人によって
アメリカへと持ち込まれた。
最大の特徴である、モッチリとした食感は、
生地をリング状に成型した後、
一度、お湯で茹でることによって生み出される。
茹でることによって、焼成時に生地の膨らみが抑えられ、
みっちりと詰まった感じのクラムになるのである。
原材料に油脂を使わないため、低脂肪かつローカロリーであり、
非常にヘルシーなパンである。

最近は、コンビニエンスストアでも
扱うようになった「ドーナッツ」。
先にも書いたように、
これはオランダの揚げ菓子
「オリーボル」がアレンジされたものだ。
リング状に成型されているのは、揚げるときに
火が通りやすいようにするためだというのが、定説になっている。
ただ、生地をツイスト状に捻ったものや、
小さい球状に丸めたものも存在しているので、
「ドーナッツ」がリング状に成型されるようになったのには、
何かまだ、知られていない理由がある可能性もある。
生地を膨らませる材料によって、種類に違いがあり、
イースト菌を使って生地を膨らませる「イーストドーナッツ」は、
別名「パンドーナッツ」とも呼ばれ、
フワフワとした食感が特徴になっている。
ベーキングパウダー(膨張剤)を使って生地を膨らませる、
無発酵生地を使う「ドーナッツ」は、
「ケーキドーナッツ」と呼ばれ、
サックリとした食感になっている。

「マフィン」。
これはイギリスにも同じ名前のパンがあり、
そちらは「イングリッシュ・マフィン」と呼ばれている。
「イングリッシュ・マフィン」は、白く平らな、
モッチリとした食感の食事パンだが、
アメリカの「マフィン」は、砂糖、卵、バターなどを使った生地を
型に流し込んで焼いた、ホロッとした食感の菓子パンである。
パン酵母の代わりに、ベーキングパウダーを使って
生地を膨らませており、
日本の「甘食」の元になったといわれる。

日本のベーカリーや、
カフェでも良く目にする「シナモンロール」。
アメリカの「シナモンロール」はボリュームもあり、
朝食やおやつとして、食べられている。
この「シナモンロール」も、スウェーデンが発祥だといわれている。
長方形に伸ばしたパン生地に、バターを塗り、
シナモンと砂糖をかけて、ロール状に成型し、
これを渦巻き状に切り分けた後に、焼成する。
白い、砂糖のアイシングを施されることが多い。

もちろん、全てが全て、他国のパンのアレンジではなく、
アメリカ合衆国で生み出されたパンも、存在している。
その代表的なものが、「バターロール」である。
アメリカでは、重量が半ポンド以下のものを「ロール」、
それ以上のものを「ブレッド」と呼んでいる。
バターロールは、この小型のパンの一種で、
いちいちバターを塗り込まなくてもいいように、
生地の中に練り込んであるものだ。
いかにもアメリカらしい、合理主義とでも言おうか。
日本のスーパーなどでも、定番商品となっているが、
店に並んでいる商品の中には、
バターロールの中に、バターやマーガリンを仕込んだものがある。
(もちろん、生地の中に仕込んだのではなく、
 焼き上がったパンの中に、
 注入するようにして仕込んであるのだ)
「バターロール」の本来の意味からすれば、
やり過ぎの感がないでもない。

ハンバーガーに使う、「ハンバーガーバンズ」もまた、
アメリカで作り出されたものである。
英語圏では、ロールパンを総じて「バン」と呼ぶので、
「ハンバーガーバンズ」というのは、
ハンバーガー用のパン、という意味になる。
ちなみに、「ハンバーガーバンズ」ほど知られていないが、
ホットドッグ用の「ホットドッグバンズ」というのも存在する。
どちらも19世紀後半、ドイツからの移民によってもたらされた、
ハンバーグとソーセージを挟むために、作られたパンだ。
どちらも、具材をしっかりと味合わせるべく、
さっぱりとした味わいと、ソフトな食感になっている。

近年、アメリカでは健康志向の高まりによって、
ヘルシーなパンへの注目が高まっている。
普通の精白小麦粉の代わりに、全粒粉小麦粉を使ったパンなどは、
アメリカ人に不足しがちな食物繊維を補うということで、
人気が高い。

多くの移民によって持ち込まれた「パン」をアレンジして、
自らの「パン文化」を作り上げてきたアメリカ。
そんなアメリカの「パン文化」は、
今、1つの転換期を迎えているのかも知れない。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-歴史, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.