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レッドマン

更新日:

前回、「ウルトラマン」シリーズの中の異端児、
「ウルトラファイト」について書いた。

「ウルトラファイト」について触れたとき、
もうひとつ、「レッドマン」という番組の名前も出した。
この「レッドマン」も、一応、「ウルトラマン」シリーズの
派生作品ということになっているのだが、
「ウルトラファイト」ほどには、
「レッドマン」の名前は知られていない。
今回は、この「レッドマン」について書いていく。

「レッドマン」という番組は知らなくても、
「レッドマン」という名前は聞いたことがある、
という人がいるかも知れない。
元々「レッドマン」というのは、円谷プロの作製する
特撮番組に、仮につけられる名前である。
詰まる所、「ウルトラマン」にしても、
「ウルトラセブン」にしても、「ファイヤーマン」にしても
発表段階では「レッドマン」の名前を付けられていたと、
いうわけである。
だから、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」について、
その名前の変遷を詳しく知っている人間ならば、
その途中に「レッドマン」という名前があったことを、
記憶しているはずなのである。
今回、紹介する「レッドマン」は、その仮名として使われていた
「レッドマン」が、独立したヒーローの名前として、
本当に使われた、特撮ヒーロー番組なのである。

しかし、「ウルトラマン」シリーズの仮名として使われていた
「レッドマン」が、独立したヒーローになったのはいいとしても、
それが「ウルトラマン」シリーズの
派生作品になっているというのは、どういうことだろうか?
もちろん、ウルトラ兄弟が集まったときにも、
レッドマンなんて奴は、紛れ込んでいないし、
「ウルトラマン主題歌集」みたいなCDアルバムが
販売される場合も、その中に「レッドマン」の名前はない。
はたして「レッドマン」とは、どういう番組だったのか?
そして「レッドマン」とは、どんなヒーローだったのか?

まず、「レッドマン」という、
ヒーローそのものについて書いてみよう。

設定では、レッド星雲のレッド星からやってきた、
平和を愛する戦士、ということになっている。
え?M78星雲のウルトラの星からやってきたんじゃないの?と、
思う人も多いだろうが、彼はウルトラ一族とは全く関係がない。
身長42m、体重3万t。
この辺りは、ウルトラマンのそれと、非常に似通っている。
名前の通り、全身「赤」を基調としたデザインになっており、
顔や胸、手袋、ブーツ、ベルトなどは銀色である。
赤と銀色のデザインということは、
全くウルトラマンと同じである。
ただ、ウルトラマンのようにカラータイマーはついておらず、
戦いにおける制限時間というのは、無いようである。
顔は、ちょうどウルトラマンが
赤いかぶり物をしているように見える。
ドロボウやテロリストが顔を隠す、ほうかむりのようである。
戦いを始める際には「レッドファイト!」と叫び、
レッドアローという名の槍や、レッドナイフで怪獣と戦う。
レッドサンダーという光線技を腕先から発し、
分身の技を使うことも出来る。
一応、ウルトラマンと同じように空を飛ぶことも出来る。

こういう風に書くと、
まことに正統派の巨大変身ヒーローである。
こんな正統派のヒーローが、何故その名を知られていないのか?
そこの所に、「レッドマン」という番組の秘密がある。

実は「レッドマン」は、あの「ウルトラファイト」と同じく、
5分間番組なのである。
1972年4月から10月までの半年間、
「おはよう!こどもショー」という番組内の1コーナーとして、
放送されていたのである。
この「おはよう!こどもショー」は、
月曜から土曜の朝に放送されていたため、
この「レッドマン」もまた、毎朝放送されていたことになる。
そういう放送形態であったために、
半年間という短い放送期間であったにもかかわらず、
全138話という話数の多さになっている。
もちろん、5分という短い時間の中で、
まともなドラマが展開できるはずもない。
「レッドマン」もまた、「ウルトラファイト」と同じように、
ただ、ヒーローであるレッドマンが、
怪獣と戦うだけの番組だったわけである。
このとき、相手にしていた怪獣が
「ウルトラ」シリーズに出てきた怪獣であったため、
「レッドマン」は「ウルトラマン」の派生作品ということに
なったのである。

5分間番組「ウルトラファイト」と「レッドマン」には、
いくつかの違いがある。
どちらも、怪獣と殴り合うだけの番組なのだが、
「レッドマン」では、毎回、
レッドマンと怪獣の戦いだったのに対し、
「ウルトラファイト」では、
ヒーローであるセブンと怪獣の戦いの他に、
怪獣と怪獣の戦いもあった。
また、「ウルトラファイト」では、気の抜けるBGMと、
プロレスのような実況が加えられていたのだが、
「レッドマン」では、BGMも実況も存在しておらず、
ただただ、レッドマンと怪獣が戦うだけの番組であった。
どちらも、ほとんど予算がなかったらしく、
ミニチュアを組むこともなく、海岸や造成地での撮影だったし、
光線技などの光学合成もなく、空を飛ぶなどの特撮もなかった。
そうなってくると、どちらもヒーローと怪獣の戦いは殴り合い、
要はステゴロである。
「ウルトラファイト」では、気の抜けるBGMと実況で、
ステゴロの陰惨さを薄めていたのだが、
それらの無い「レッドマン」の戦いは、
まさに陰惨というに、ふさわしいものであった。

まず、撮影場所が造成地や海岸ということは、
怪獣が町を襲っているという構図になっていない。
怪獣はただ、そこら辺を歩いていたり、突っ立ているだけである。
そこに突如としてやってくるレッドマン。
「レッドファイト!」のかけ声とともに
いきなり怪獣に襲いかかる。
これでは通り魔か、辻斬りとかわらない。
レッドマンと怪獣の戦いには、余計なBGMも実況も無く、
ただただ、殴り合いのケンカの緊張感があるのみである。
怪獣がエモノを持ち出すことはないが、
レッドマンはレッドアローやレッドナイフを持ち出して、
怪獣に襲いかかる。
怪獣をレッドアローで串刺しにしたり、
レッドナイフでメッタ刺しにしたりと、
なんとも生々しい武器の使い方である。
そこに殺陣というような華麗なものはなく、
まるでサスペンスドラマの殺人シーンのようである。
また、素手で戦う場合にも、相手に馬乗りになって
ひたすら殴り続けたり、頭を地面に打ちつけたりする。
やがてダメージが限界を超えた怪獣は、
ピクリとも動かなくなってしまうのである。
……。
これだけでも相当に陰惨だ。
朝の子供番組で、放映して良いものか首をひねってしまう。
しかし、そこで終わらないのがレッドマンだ。
彼はピクリとも動かなくなった相手にレッドアローを取り出し、
グサリグサリと何度も相手の身体に突き立て、
しっかりとトドメを刺すのである。
ウルトラマンなどの中には、
しっかり相手にトドメを刺さなかったために、
相手が再び動き出し、痛い目を見る者もあるのだが、
彼にそんな手抜かりはない。
ヒーローというよりは、殺し屋のようである。
酷い時など、動かなくなった怪獣を引きずって
崖まで連れてゆき、「レッドフォール!」のかけ声とともに、
崖下に投げ落とすのである。
一体、何が彼にそこまでの行動を起こさせるのだろうか?

先にも書いたように、レッドマンの顔は、
ウルトラマンが赤いほうかむりをした、それである。
実はレッドマンの正体は、本当に変装したウルトラマンで、
日々のストレスを、怪獣を惨殺することで
晴らしているのだとすれば……。

「レッドマン」が「ウルトラマン」の派生作品と
されているのには、暗く、根深い理由があるのかも知れない。

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