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焼きそば

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By: t-mizo

日本で「焼きそば」といえば、ソース焼きそばのことになる。

よく、中華料理の炒麺が焼きそばのもとになった、
なんていう話を、あちらこちらで見るのだが、
「焼きそば」というキーワードで画像検索をかけると、
画面中がソース焼きそばで埋め尽くされてしまう。
中華料理の炒麺らしき画像は、
何十というソース焼きそばの画像に混じって1つか2つ、
肩身が狭そうに存在しているだけである。
画面上を埋め尽くした「焼きそば」の大半には、
青のりと紅ショウガがのせられており、
いくつかの「焼きそば」の上には、
目玉の色の鮮やかな目玉焼きがのせられている。
全体的に茶色い画面の中で、
紅ショウガの「赤」と、青のりの「緑」、
目玉焼きの「白」と「黄色」は、非常に鮮やかに映る。

ためしに「炒麺」とキーワードを変えて画像検索をかけると、
ソース焼きそばによく似ているものの、
明らかな別物が、画面中を埋め尽くすことになる。
これが日本の「焼きそば」の元になったといわれる
「炒麺」である。
日本の「焼きそば」の大半が、小さなキャベツと
あるのかないのかわからない肉片しか
具材が入っていないのに対して、
本場の「炒麺」は、随分と具の種類も量も多いようである。
しかも、白っぽいキャベツがソースで茶色に染まっているのに対し、
「炒麺」の具材は、鮮やかな色彩を維持しているものが多い。
もちろん、青のりがかかっているものも
紅ショウガが添えられているものも、
目玉焼きが乗せられているものも、全く無い。
また、麺の色に関しても、
日本のソース焼きそばと遜色無いものもあれば、
まるで生麺そのままの色をしているものもある。
麺の味付けに関しては、醤油だけでなく
塩やその他の様々な調味料が使われているらしい。

少なくとも、この結果を見る限りでは、
「ソース焼きそば」こそ、日本の焼きそばであると、
言い切ってしまって良さそうである。

さて、あなたが今、焼きそばを食べようとふと思い始め、
居ても立ってもいられなくなった場合、
果たしてあなたはどういう行動をとるだろうか?
自宅近くのお好み焼き屋に駆け込む、という人もいるだろうし、
スーパーのお惣菜コーナーを見て回る、という人もいるだろう。
ひょっとしたら、同じスーパーでも
一袋2~30円ほどの蒸し麺と、キャベツ、
豚肉を買うという人もいるだろうし、
カップ麺売り場で、インスタント焼きそばを買うという人も
いるだろう。
前者は自分で「焼きそば」を作ることが出来るという人だし、
後者はそれも出来ない人である。
中華料理の「炒麺」を別にすれば、
日本の「焼きそば」は、マトモな店では出てこない。
そういうと、「焼きそば」をバカにしているのか!と、
お叱りの声を受けそうだが、
事実、「焼きそば」を製造販売をしているのは、
お好み焼き屋を中心とした、自らB級を謳っている店か、
あるいは祭りなどで営業している屋台くらいだ。
それ以外では、まず食べることが出来ず、
先述したように、スーパーなどで材料を買ってきて自分で作るか、
出来合いのものか、インスタント焼きそばを買うことになる。
スーパーにしてみても、わりと庶民的な所でなくては
出来合いの「焼きそば」を販売していることは無く、
セレブ御用達の高級スーパーでは、
どんなに探しまわってみても、出来合いの「焼きそば」は
扱っていない。
まさに日本における「焼きそば」というのものの位置づけが
「そういう」所になってしまっているのである。

先に、料理出来ない人は、
インスタント焼きそばを買って帰る、なんて風に書いたが、
日本風のソース焼きそばを作るのは、思いのほか簡単である。
豚肉、キャベツなどを適当な大きさに切り、
油をひいたフライパンで炒める。
ある程度、豚肉・キャベツに火が通った所で、
買って来た「蒸しそば」をほぐしながら加えて炒め、
最後にウスターソースなどで味付けするだけである。
さらに盛りつけてから、青のり、紅ショウガなどをのせれば、
それなりに格好のついた「焼きそば」が出来上がる。
肉は別に豚でなく、牛でも鶏でもかまわないし、
イカやエビなどの魚介類を使っても良い。
野菜にしてもキャベツだけでなく、もやし、ニンジン、
タマネギなどを加えてみてもかまわない。
豚肉・キャベツを使うことが多いというだけで、
特に決まった材料があるわけでもないので、
冷蔵庫の中に残っているものを使って、
手軽に作ることも出来る。
(もちろん、「そば」だけは絶対に必要ではあるが……)
具材を増やして、豪華に作ることも出来るし、
目玉焼きなどをのせて、一緒に食べることも出来る。
そういう意味では、融通無碍な料理なのである。

日本で、ソースを使った「ソース焼きそば」が
作られるようになったのは、そう古い時代のことではない。
調べてみた所、「ソース焼きそば」の発祥に関しては、
大きく分けて2つの説がある。

1つは、昭和10年ごろに東京・浅草で作られたという説。
「にっぽん洋食物語大全」という本の中には、
「ソース焼きそばを、浅草焼きそばと呼ぶ人もいる」と
書かれており、浅草発祥説の根拠となっている。
また、昭和10年代には浅草のお好み焼き屋のメニューに、
「焼きそば」があったという話もあり、
これらを合わせて考えれば、「ソース焼きそば」は
昭和初期に東京・浅草で作られたということになる。

もう1つは、戦後、秋田県の横手市で誕生したという説だ。
横手市でお好み焼きの屋台を開いていた人が、
何か新しい料理は出来ないかと考え、
「ソース焼きそば」を考案した、というものである。
戦後、小麦粉が手に入らなかったため、
かさ増やしにキャベツを加えたが、
キャベツから出る水分で味が薄まったため、
ソースを使った濃い味付けで、これを補おうとした。
パッと聞いた分には、なるほど、と思ってしまうが、
戦後、日本各地で小麦粉を使った軽食、
いわゆる「粉もん」が大増殖したのには、
米が充分に作れるようになるまでのつなぎとして、
アメリカが、当時国内でダブついていた小麦粉を
日本へ持ち込んだためである。
それを考えれば、小麦粉が手に入らなかったというのは、
やや考えにくい状況である。
戦時中、米が食べられない状況でも、
小麦粉を水で溶いた「すいとん」が、
代用食として食べられていたくらいなのである。
それに、自分で焼きそばを作ってみれば分かるが、
余程ムチャクチャな量のキャベツを入れない限り、
焼きそばの味が薄まるほどの水は、出てこないだろう。
それらを考えてみれば、
横手市が「ソース焼きそば」の発祥の地だという説は、
やはり無理があるように思える。

この「横手焼きそば」をはじめ、
以前に紹介した「瀬戸焼きそば」など、
現在、日本の各地には、それこそ星の数ほどの
「ご当地焼きそば」が存在している。
それらの中には、一時期のB級グルメに便乗しろと、
地元の食材を適当に寄せ集めて作った、
いい加減なものも結構ある。
思い立ったら、誰でも、どこでもすぐに作ることが出来る。
そういう「焼きそば」の持つお手軽さが、
現在のこの状況を生んだのである。

これをさらに進めて考えてみれば、
どこの自治体でもやれたことが、
我々個人に出来ない筈はない。
「やきそば」は、地方ごとの「ご当地やきそば」より
さらに細分化し、
個人の工夫によって作られる「家庭焼きそば」、
「個人焼きそば」くらいまで、
行き着くことになるのかも知れない。

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