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怪談〜ウルトラマン

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特撮番組というのは、余程人気のないものでない限り、
そこそこの期間、放映されるものである。

現在でも、「仮面ライダー」や「戦隊シリーズ」は
約1年間の放映期間を持っていて、
毎年、ほぼ決まった時期に
新しいヒーローへとバトンタッチする。
つまり、1年間は、ほぼ毎週ヒーローたちの物語が
展開されているわけである。
1週間に1本、ストーリーを作るとすれば、
1年間に50とちょっとのストーリーを
作らなければならない計算になる。

もちろん、ストーリーには年間を通じた大きな流れがあり、
その大きな流れに従って、物語は進んでいくわけだが、
特撮ヒーローもののような番組の場合、
1話、1話がある程度独立したストーリーになっており、
前後の話を見ていなかったとしても、
その話だけで、それなりに楽しめる構造になっている。
これは、主たる視聴者である子供たちが、
何かの都合で物語を見忘れた場合や、
物語の途中からでも、番組に入ってきやすいための
工夫の1つだろう。
だが、これはストーリーを作る上では、結構手のかかる話だ。
1話、1話を独立させ、それだけで視聴者を満足させるには、
1話、1話できちんとした物語を組み立てなくてはいけない。
かつ、毎週見ている子供たちを飽きさせないためには、
毎回、違った物語を作らなければならない。
特撮ヒーロー番組というのは、物語を作る上で
かなり厳しい制限を要求される。
毎週、必ず変身して敵と戦い、これを倒さなければならない。
この基本型を踏襲した上で、
毎回、違った物語を作らなければならない。
どんなに優秀な脚本家であったとしても、
この基本型を踏襲したまま、50本もの物語を考えるのは
全く容易な作業ではない。
では、どうするか?
実に簡単なことで、脚本家を何人も集め、
それぞれに何本かずつの物語を、書かせればいいのである。
1話、1話である程度、物語が区切られ、
1話の中に、定番やお約束がちりばめられているゆえに
出来ることともいえる。

しかし、こうして物語を作っていても、
いずれ似たような物語が出来上がることになる。
以前に取り上げた「ニセヒーローもの」などもその1つだ。
しかし、この「ニセヒーロー」というのは、
そう度々使うわけにもいかない。
使うことが出来たとしても、1つの番組で1回だけである。
しかし、1つの番組の中で、
いくつか物語を作ることの出来るものがある。
それが「怪談」ものである。
……。
え?特撮ヒーローで「怪談」?と、思う人もいるだろう。
確かに、毎回、怪獣や怪人などの「化け物」が
出てきている世界で、「怪談」などといってもシラケるだけだ。
しかし、やってしまうのである。
特撮ヒーロー番組で「怪談」を。
今回は、特撮ヒーロー番組の「怪談」というテーマで見ていく。
今回は特撮の代名詞、
「ウルトラシリーズ」の「怪談」を見ていこう。

シリーズ初期の作品である「ウルトラマン」、「セブン」には、
「怪談」の影は欠片も無い。
両者とも、本格的な特撮ヒーロー番組ということで、
ほぼ全話、実験的なストーリーを交えながらも、
本格派のSFドラマが展開されている。
「セブン」には、異星人の恐怖というものもあったが、
これは「怪談」とは一線を画した、SFのテーマである。

次の「帰ってきたウルトラマン」になって初めて、
ちょっと「怪談」臭いタイトルが出てくる。
39話「20世紀の雪男」と、40話「まぼろしの雪女」だ。
「雪男」「雪女」と2話続く所も凄いが、
「雪男」に関しては、「怪談」というよりは「UMA」だ。
ともに、冬に放映されているので、
「怪談」としては、少々季節外れということになる。

ところが次の「ウルトラマンA」では、
タイトルに「怪談」と入ったストーリーが5本もある。
夏に放映された16話「怪談・牛神男」、
17話「怪談・ほたるヶ原の鬼女」、
冬に放映された41話「怪談!獅子太鼓」、
43話「怪談!雪男の叫び」、44話「節分怪談・光る豆」だ。
この他にも、タイトルに「怪談」と入らないものの
15話「黒い蟹の呪い」、19話「河童屋敷の謎」なんかも、
いかにも「怪談」を意識したらしい、タイトルになっている。
しかも「帰ってきた」に続き、冬の時期に怪談を扱っている。
どう考えても時期外れなのだが、
特撮ヒーロー番組内では、「怪談」というのは夏と冬、
2部構成であるようだ。

これに続く「ウルトラマンタロウ」では、
全く「怪談」の影が無い。
8話「人喰い沼の人魂」などは、
やや「怪談」ぽさを感じさせるタイトルだが、
放映されたのは5月、「怪談」の季節ではない。
「怪談」が無い代わりに増えたのが「季節もの」だ。
例を挙げてみると、38話「ウルトラのクリスマスツリー」、
39話「ウルトラ父子・餅つき大作戦」、
48話「怪獣ひなまつり」などである。
「A」で新機軸として「怪談」を取り入れてみたが、
思ったより受けず、また新しいジャンルを
試してみたということだろうか?

その後「ウルトラマンレオ」でも、
「怪談」らしきものが作られる。
17話「狼男の花嫁」、18話「吸血鬼!こうもり少女」、
19話「よみがえる半魚人」の3話がそれである。
これらはちょうど夏に放映されていることもあり、
「怪談」と銘打ってはいないものの、
それに類していると考えられる。
和風の「化け物」ではなく、洋風の「怪物」を使っている辺りに、
「レオ」のオリジナリティを感じる。
ただ「レオ」の場合、その後に作られた
「昔話」シリーズの印象が強い。
27話「強いぞ!桃太郎」、30話「怪獣の恩返し」、
32話「さようならかぐや姫」などは、
タイトルそのものが「昔話」を意識しているし、
26話「ウルトラマンキング対魔法使い」では、
プレッシャー星人によって小さくされたレオを、
キングが「打ち出の小槌」で元のサイズに戻している。
明らかに「一寸法師」である。

続くアニメ作品「ザ・ウルトラマン」では、
タイトルに「怪談」は存在しないものの、
36話「宇宙から来た雪女」というタイトルがある。
ウルトラシリーズでは、かなり「雪」が好きらしい。

この翌年放映された「ウルトラマン80」では、
まったく「怪談」の要素が無い。
ただ「怪談」こそないものの、
後半になると子供向けと思われるタイトルが多くなってくる。
39話「ボクは怪獣だ~い」や、
40話「山からすもう小僧がやってきた」などは、
もはやウルトラマン的な要素が
削り落とされていると言っていいだろう。
そこまでやるのなら、「怪談」でいいんじゃないか?
とも思うが、もはや時代的に「怪談」の通用する時代では
無くなってしまっていたのかも知れない。

今回、「ウルトラ」シリーズにおける「怪談」を見てきたが、
これでもかというほど「怪談」を押し出していた「A」以外は、
それっぽいものが2~3タイトルという程度であった。
やはり、仮りにも「SF」的な作品である「ウルトラ」では、
「怪談」を使うのも、抵抗が強かったのだろう。
「SF」と「怪談」は、まさに水と油のようなものだ。
これを平然と混ぜ合わせた「A」こそが、
異端だったのだろう。

次回は、「ライダー」シリーズの怪談について、取り上げてみる。

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