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肉団子

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子供のころ、ハンバーグといえば、マルシンのハンバーグだった。

マルシンのハンバーグといえば、
恐らく、どこのスーパーにも置いてあるだろう。
白い袋に入った、小さめのハンバーグである。
この白い袋を破って中身を取り出すと、
白い油脂にまみれたハンバーグが出てくる。
これをこのままフライパンの上に乗せて焼くと、
そのまま表面がカリッと焼き上げられたハンバーグが出来上がる。
このハンバーグについている油脂(ラード)のおかげで、
いちいちフライパンに油をひかなくてもいい。
それどころか、ラード自体が1つの調味料になり、
ハンバーグを美味しく焼き上げてくれる。
自分が小さかったころ、
母親が作ってくれるハンバーグと言えば、
まず100%これであった。
これを子供用の皿にのせ、上にトマトケチャップでもかければ、
もう子供は大喜びであった。

どうして、我が家のハンバーグはマルシンオンリーだったのか?
理由ははっきりしている。
それが1番安かったからである。
子供が学校などに行くようになり、子供の世界が広がれば
世の中にはマルシン以外のハンバーグがあることを知るだろうが、
それまでは、なるべく金のかからないマルシンで行こうという、
母親の考えがあったらしい。
この方針は功を奏し、我が家では
自分が小学校の高学年になるくらいまでは
ハンバーグと言えばマルシンというのが、いわば定番であった。

これに対し、ミートボールといえば、
これはイシイの独壇場だった。
ただ、ミートボールの場合、これが登場してくるのは
日々の食卓ではなく、イベントごとがある際の
弁当の中だけであった。
奇しくも、このイシイのミートボールといえば、
「イシイのおべんとクン」というキャッチフレーズで
販売していたわけだが、
我が家は、見事にこれに乗っかっていたことになる。
こちらは、フライパンで焼いて調理するものではなく、
袋のままお湯の中で温める、レトルト食品であった。
袋の中にはソースにまみれたミートボールが入っており、
これがちょうど子供の口のサイズにピッタリだった。
小学校の遠足などで弁当を持って出かけた際には、
結構な割合でこのミートボールが入っており、
お昼の弁当の時間には、
このソースがたっぷり付いたミートボールを
口一杯に頬張ったものである。

やがて時代が下ると、さすがにマルシンのハンバーグと
イシイのミートボールでは物足りなくなってくる。
ハンバーグは、もっと大きなレトルトパック入りのものや、
スーパーなどで挽肉を捏ねて作った「生」タイプのものに変わり、
ミートボールは中華風の揚げ肉団子となり、
これに甘酢ダレを絡めたものが、食卓に上がるようになった。
ハンバーグに関しては、挽肉を買ってきて、
これにつなぎ等を混ぜ、捏ね上げたものを焼くようにもなった。
自家製ハンバーグである。
だが、不思議なことに肉団子に関しては、
同じように自家製のものを作ることがなかった。
はっきりとした理由は分からない。
推測するに、大きいものを5~6人分作ればいい
ハンバーグと違い、肉団子は1口大のものを
かなりの数作らなければならない。
この「手間」を、母親が嫌ったのかも知れない。
また、ハンバーグであれば成型した後、
フライパンで焼いてしまえばすぐに完成だが、
肉団子の場合、油で揚げたりして火を通した後、
さらに甘酢ダレなどを作り、これにからめなければならない。
同じ挽肉を捏ねて作る料理でありながら、
ハンバーグと肉団子では、
それを作る手間が大きく異なっているのだ。
お手軽なことを尊ぶうちの母親が、
ハンバーグの方を選択するのは、当然のことだったのだろう。

「肉団子」は、挽肉につなぎを混ぜ、これを丸く成型してから
加熱調理したものである。
挽肉だけのものもあるが、タマネギやタケノコ、
シイタケなどを刻んだものが具材として混ぜられることもある。
中には、ゆで卵を挽肉で包んだものもある。
肉に関しては、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉と、なんでも使われる。
さらには内蔵などの特殊な部位や、は虫類などの肉、
魚肉などが使われることもある。
調理方法にしても、焼く、煮る、揚げる、蒸すと
様々な方法が使われる。
非常にシンプルな料理であるために、
世界中に、これに類する料理が存在している。
現在、日本で食べられている「肉団子」は、
中華料理の流れを汲んでいるものであることが多いが、
焼き鳥などで供される「つくね」、
イワシなどの魚肉で作った「つみれ」などは、
日本独特のものである。
(ただし、似たようなものは世界中にある。
 決して日本「だけ」のものではない)

日本では、長く肉食が禁忌とされていたため、
肉団子はおろか、肉料理の歴史自体が浅いのだが、
我が国でもっとも最初に「肉団子」に類する料理が作られたのは、
何と縄文時代のことである。
このころに作られたとされる「縄文クッキー」がそれで、
本来これは、ドングリや栗などを粉にしたものに
つなぎを入れて捏ね、焼き上げたものである。
これだけならば、まさに「クッキー」と呼べるものになるのだが、
この「縄文クッキー」の中には、
つなぎに肉を使ったものがあった。
こうなってくると、もはや「クッキー」というよりは、
「ハンバーグ」に近いものが出来上がるだろう。
この「縄文クッキー」は、
1口大の大きさで作られており、
ほとんどのものは薄い円板状のものだったと考えられるが、
その中に、団子状のものがあったとしてもおかしくはない。
少なくとも、狩猟・採集生活を行なっていた縄文時代には、
日本にも肉を「挽肉」か、それに近い状態に加工することが
あったようである。
古代日本の肉食時代は、大和朝廷が「仏教」を取り入れるまで
続いたわけであるから、
そのころまでは、「肉団子」に似たものが
食べられていた可能性はある。
「仏教」の影響により獣肉が食べられなくなった後、
この挽肉技術は魚肉をすりつぶして加工する
「練り物」という技術に変わり、
受け継がれていったものと考えられる。

明治時代になり、中国から中華料理が持ち込まれ、
現在の「肉団子」のもととなった。
先に書いた「イシイのおべんとクン」で有名な、
イシイのミートボールも、現在でこそ、
洋風のトマトソースが使ってあるが、
もともとはこれも中華風の甘酢ダレであった。
だが、ミートボールが
子供の弁当に多く使われていることが分かると、
子供用に味付けをトマトソースに変更、
これがきっかけとなり、「イシイのミートボール」は、
大ヒット商品となっていったのである。

現在、各社から様々な「肉団子」が販売されている。
中華風に甘酢ダレに絡めるだけでなく、
煮物の具材としてや、おでんや鍋の具材、
さらにホワイトシチューの具材としても使われる。
1口大の小さな「肉団子」は汎用性が高く、
様々な料理に使われるようになった。
もちろん、子供の弁当のおかずとして使われているのは、
現在でも変わっていない。

肉団子は、食べる者のことを考えた料理だ。
作る際には、手間がかかるが、
その分、子供であっても
1口で口の中に放り込める「食べやすさ」がある。

その辺りの使いやすさ、食べやすさが
「肉団子」が愛され続ける理由なのかも知れない。

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