雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

植物 歴史 食べ物

アボカド

更新日:

自分が、生まれて初めて「アボカド」という果物を知ったのは、
ある料理マンガでのことだ。

そのマンガの中では、主人公の作っている弁当に
ピッタリの卵焼きを作るため、
中に入れる具を色々と模索していた。
炒めたベーコンを入れたものはコッテリとしすぎており、
炒めたタマネギを入れたものはサッパリしすぎている。
必要なのは、コッテリとしていて、
なおかつサッパリとしている具材なのだ。
……。
ひところの料理マンガなどでは、
「まったりとしていて、それでいてしつこくない」
という表現が流行ったものだが、
これは、まさにそのハシリのようなエピソードである。
そこで主人公は、コッテリとしていて、
なおかつサッパリとしている具材を探し、
食材店を駆け回る。
方々を探しまわった後、果物売り場で見つけたのが
この「アボカド」であった。
主人公にいわせてみれば、
「アボカドは、別名森のバターと呼ばれているほど
 脂肪分を含んでいる。
 しかし、果物なのでそれらが全てサッパリとしている」
ということであった。
何となく聞いている限りでは、そういうものなのかな?
と、思ってしまう。
主人公は、この「アボカド」を刻んだものを卵焼きの具にして、
見事、「コッテリとしていて、かつサッパリとしている卵焼き」を
完成させたのである。
これを初めて読んだのが、中学生か高校生のころである。
ベーコンがコッテリしていて、タマネギがサッパリしているなら、
その2つを混ぜて卵焼きの具材にすればいいのに……、
なんて思ったりもしたが、
それより何より、「森のバター」と呼ばれるほど
脂肪分が高いという、「アボカド」という食材に興味を持った。

その時代、まだまだ「アボカド」というのは、
日常的な食材ではなかった。
恐らく、これを置いてあるスーパーというのも、
決して多くは無かったはずである。
自分が「アボカド」の実物を初めて見つけたのは、
大学に入って一人暮らしを始めた
福岡の町のスーパーであった。
あの料理マンガと同じく、果物売り場に積み上げられていた。
値段を確認してみると、1個100円ほどである。
すぐさま買いこんで、下宿へと持ち帰った。
皮を剥き、半分に割って中の種を取り除く。
果肉は薄い黄緑色で、触るとヌメヌメとしている。
なるほど、脂肪分が多そうだ。
例の料理マンガには、
「マグロのトロに似ているというので、
 醤油をつけて食べる人もいる」
という情報があった。
アボカドを一口大に切り、さらに小皿に醤油を用意した。
しかし、とりあえず、何もつけずに食べてみようと思い、
一切れ口の中に放り込んでみた。
「ウエッ」というのが、正直な感想であった。
全く甘くなく、口の中にベッタリとした油の感覚が広がる。
その上、臭いは青臭く、それまでに食べたことのない味である。
果物売り場に置かれていたが、全く果物っぽくはない。
マンガでは
「コッテリとしていて、なおかつサッパリとしている」
と、あったが、嘘だ。
正しくは、
「コッテリとしていて、なおかつベットリとしている」だ。
なんとか飲み込んで、今度は醤油をつけて口に入れる。
そうすると不思議なことに、あの油っこさが随分と軽減された。
青臭いばかりだった香りも、醤油の香りに隠されて
あまり気にならなくなった。
マグロのトロに似ている、とのことだったが、
残念ながら、自分はそれまでに
マグロのトロというものを食べたことが無い。
だが、何も無しで食べるよりは、
確かに醤油をつけて食べた方が「うまかった」。
残ったアボカドは、全て醤油をつけて食べたのはいうまでもない。

アボカドは、クスノキ目クスノキ科ワニナシ属に属する
常緑高木である。
また、この木の果実を指して「アボカド」ともいう。
アボカドには1000種以上の品種が存在しているが、
これらは大きく3つの系統に分けることが出来る。
メキシコ系、グアテマラ系、西インド諸島系である。
日本で一般的に食べられているのは、グアテマラ系のハス種で
日本で食べられているアボカドのうち、
実に99%がこのハス種である。
果肉には20〜25%もの脂肪分が含まれており、
「森のバター」「バターフルーツ」などとも呼ばれている。
脂肪分が多いため、必然的にカロリーも多く含んでいる。
ただ、アボカドに含まれている脂肪分は、
ほとんどが不飽和脂肪酸であるため、
血中のコレステロールを上昇させる心配はない。
また、いわゆる「血液サラサラ効果」も期待出来る。
栄養的にいえば、その他にもビタミンEと食物繊維が豊富で、
ビタミンEにはガンや動脈硬化の予防、
食物繊維には便秘予防などの効果が期待出来る。

アボカドは、バナナやキウイなどと同じく、
「追熟」の必要な果物だ。
市販されているものは、業者の手によって
一定の追熟が行なわれており、
購入してきてすぐ料理に使うことも可能だが、
握ってみて、やや固さの残っているものは
しばらく常温で放置しておき、さらに追熟させた方がいい。
皮が黒く、握ってみて軟らかさを感じるくらいになれば、
食べごろになっていると考えてよく、
購入の際、すぐに使用するのであれば「黒く柔らかめのもの」を、
何日か後に使用するのであれば「緑っぽく、固めのもの」を
選ぶといいだろう。
皮が黒くて皺のあるものや、
ヘタがとれて黒くなってしまっているものは、
熟しすぎてしまっているので、購入時には気をつけよう。

食べる際には、真ん中に入っている種に沿って半分に切り、
種を取り出す。
キチンと熟していれば、皮は手で剥くことが出来る。
皮を剥いた後は、好みの大きさにカットし、
好きに調理して食べることになる。
ただ、リンゴなどと同じく、空気に触れているうちに
酸化して色が変わってしまうことがある。
レモン汁などをかけておけば、この変色を抑えることが出来る。

アボカドは、メキシコを中心とする中南米が原産地だ。
紀元前1万年前のフブエラの洞窟で、
アボカドの痕跡が発見されたため、
すでにそのころには、食べられていたものと考えられている。
脂肪分を多く含むアボカドは、摂取出来るカロリーも高く、
かなりありがたい果物だったのだろう。
7000年前にはアボカドの栽培が始まっていたとされるが、
公式に記録が残っているのは13世紀ごろが最初で、
当時のインカ王の墓から、アボカドの種が出土している。
16世紀ごろになってアメリカに伝わり、
さらにヨーロッパ、オーストラリアにも伝播していった。
日本に入ってきたのは、100年ほど前のことだが、
一般的に食べられるようになったのは、
ここ、30〜40年くらいのことである。
アボカドの輸入量は爆発的に増えていっており、
1980年に500tほどしかなかった輸入量は、
2005年には28000tを越えている。
25年間で、56倍もアボカドを消費するようになった訳だ。
ちなみに2013年だと
輸入量が60000tを越えているので、
まだまだアボカドの輸入量は、右肩上がりが続きそうである。

アボカドは熱帯性の気候を好むので、
日本での栽培はほとんど行なわれていない。
わずかに和歌山県、鹿児島県、沖縄県、
高知県などで栽培されているが、
その生産量は、消費量の1%にも及んでいないのが現実である。

現在では、どこのスーパーでも、
1年中買うことが出来るようになった「アボカド」。
インターネットでレシピを検索してみれば、
それこそ数万件もの数がヒットする。
あの料理マンガに出てきた「アボカドの卵焼き」に関しても、
多くの人が実際に作っており、
おおよそ、美味しいとの評価である。

さすがはミスター味っ子と、脱帽するしかない。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-植物, 歴史, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.