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がんもどきとヒリョース

更新日:

おでんは、一般的に冬のものだと思われている。

寒い季節、おでんを肴に、熱燗で一杯というのは、酒呑みの定番だ。

おでんは、分類としては鍋物になる。

そして鍋といえば、寒い季節の定番料理である。

しかし、探してみると、夏場にもおでんを販売している所はある。

兵庫県内に「たいこ弁当」という弁当屋のチェーン店があるのだが、

ここでは一年中おでんを販売している。

電気仕掛けのおでん鍋の中では、長時間煮込まれ、

色濃く煮上がった様々な具材が、スープの中を漂っている。

この色濃く煮上がったおでんが、実にウマいのである。

おでんには様々な具材がある。

その中で、自分が一番好きな具材が「がんもどき」だ。

今回はこの「がんもどき」について書いていく。

がんもどき、というのは豆腐を擦りおろし、水を絞ったものに、

擦りおろした山芋と、各種の具材を加え、成形し、油で揚げたものである。

ちょうど内部がスポンジ状になっているので、

ふわふわな食感が味わえる。

中に混ぜる具材としては、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、コンブ、

銀杏、ひじきなどである。

おでんの具材として使われる他に、煮物の具材としても使われる。

名前の由来については諸説ある。

もともと、がんもどきは精進料理のひとつで、

肉の代用品として使われたものである、とされている。

つまり「がんもどき」は「雁もどき」であったわけだ。

菜食主義者用の代用肉を、大豆を原料にして作る例もあり、

大豆の加工品である豆腐を原料に、肉の代用品を作るというのは、

説得力のある話だ。

さらに鳥肉のすり身を丸めて団子状にしたものを、丸(がん)というが、

これを模したものだという説もある。

つまり「丸もどき」である。

確かに鳥肉のすり身を茹で上げると、ちょうどかんもどきのような見た目になる。

これもまた、それなりの説得力がある。

さらに別の説では、具材として混ぜられた細切りのコンブが、

表面にぼつぼつと見える姿が、鳥の「雁」のようだ、という説である。

つまりこれも「雁もどき」ということになる。

これは、ちょっと無理があるような気がする。

実はがんもどきには、もうひとつ名前がある。

それが「ひろうず」だ。

漢字で書くと飛竜頭ということになる。

「飛竜」の「頭」とは、凄まじくはったりの聞いた名前だが、

実はこれはただの当て字で、飛竜も頭も、何の関係もない。

むしろ平仮名で書く「ひろうず」の方が、重要だ。

この「ひろうず」というのは、もともとポルトガル人が持ち込んだ、

南蛮菓子のひとつで、「ヒリョース」というのが正しい名前である。

この「ヒリョース」は、小麦粉、卵をあわせて、油で揚げたものだ。

現在でいう所のドーナツに近い。

小麦粉と卵でできていた南蛮菓子が、いつのまにか、豆腐をすりつぶしたものに

山芋と具材を混ぜてあげた料理の名前になった。

一般的に関東地方では「がんもどき」、関西では「ひろうず」という。

現在では、どちらも同じ豆腐をすりおろし、

具材を混ぜ揚げたものをさしているが、もともとは別の料理であった。

つまり「ひろうず」の場合は、先に書いたように、

南蛮菓子であり、「がんもどき」はこんにゃくを油で炒めたものだった。

こんにゃくを油で炒めたものが、「肉」に似ていたとは思えない。

そうなってくると、こんにゃくの黒い点が「雁」の様に見えたという風に、

考えるしかない。

このこんにゃく料理と、南蛮菓子が、どういう経緯を経て、

現在の「がんもどき」に収束していったのか?

これについては、はっきりとした説は示されていない。

恐らくは、まず南蛮菓子として伝わった「ヒリョース」が、

現在の「がんもどき」に近い、「ひろうす」になった。

小麦粉と卵でできていたものが、どうして豆腐と山芋になったのか?

卵が値段が張るために、かわりのものとして山芋が選ばれたのかもしれない。

どちらにも、料理をふんわりとさせる効果がある。

あるいは生臭ものを嫌う、寺などで作られたのかもしれない。

西日本で生まれた「ひろうず」は、江戸末期に関東に伝わる。

その時、「ひろうず」の表面にあった黒い点を見て、

この「ひろうず」を「がんもどき」と呼び変えたのではないか?

そのあたりが「がんもどき」と「ひりょうず」が、ひとつになった

流れでは無いだろうか。

……自分でも、かなり無理があるとは思うが、

どうも歴史的な断片を、うまく繋ぎあわせることができない。

昔から、おでんの中の「がんもどき」が好きで、

鍋に入れられている「がんもどき」のほとんどを、自分が食べていた。

おでんの具の、人気アンケートでは、「がんもどき」は常に微妙な位置だ。

だからこそ、ひとりで「がんもどき」を食べていても、

文句を言われなかったのだが、それはそれで悲しい。

ふかふかの「がんもどき」を半分に割って、生姜醤油をたっぷり含ませて食べる。

……塩分の過剰摂取には、気をつけないといけない。

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