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食べ物

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自転車で市内を走っていると、無人のコイン精米機が
あちらこちらに設置されているのを見かける。

ひと昔前は農協の近くにしかなかったものが、
スーパーの駐車場の片隅や、
ホームセンターの駐車場などにも設置されるようになった。
それだけ、わざわざ玄米を購入し、
これを精米して食べている人間が増えたということだろう。

我が家も一時は、知り合いのコメ農家から玄米を購入し、
これをコイン精米所で精米して食べていたのだが、
どういうわけかそう長続きせず、
いつの間にやら、精米済みの白米の購入に戻ってしまった。
実際、その期間のご飯が特においしかったか?と聞かれれば、
それ以前と変わらなかったように思う。
その当時は、我が家の家族が6人もおり、
そのうち3人の子供が全員成長期だったため、
スーパーなどで10kgずつ白米を購入していては間に合わず、
少しでも安くコメを手に入れるために、
直接農家から30kg入りの袋で、玄米を購入していたのだろう。
これをコイン精米所で精米していたのだが、
母親は30kgの米袋を運ぶのを嫌がって、
精米するときには米袋運びとして、自分か弟を連れていった。

車から精米所の中まで米袋を運び、
これを持ち上げて、コメ投入口に流し込む。
空になった米袋を規定の場所に据え付け、
機械に300円を投入し、精米の度合いを選択する。
その上で精米開始ボタンを押すと、機械が唸りを上げて動きだし、
投入口に盛り上げられていた玄米が、中へと消えていく。
間もなく、精米の済んだコメが手元の受け口にたまっていき、
ある程度たまった所でペダルを踏むと、
白米が据え付けてあった米袋の中に落下する。
精米自体は5分ほどで終了し、
自分は再び米袋を車の中へ積み込む。
母親の運転する車で家に帰り、
今度はこの米袋をかついで家の中に入り、
米櫃代わりの金属缶にコメを流し入れる。
一連の作業のうち、力のいる部分は全て自分か弟が担うのだが、
これはこれで、重労働であった。

水田でたわわに実った稲穂。
この稲穂の部分に実っているのが「籾(もみ)」である。
「籾殻(もみがら)」と呼ばれる外皮に覆われたそれは、
コメのもっとも自然な状態である。
この籾から、籾殻を取り除いたものが「玄米」になる。
色は濃いクリーム色で、
中には緑色を帯びたものも混じっている。
うちの母親が、知り合いの農家から貰ってきた
コメの状態がこれである。
この「玄米」は、このまま普通に炊いても食べられるのだが、
白米と同じように炊飯器で炊くと、
ボソボソと食感悪く炊きあがる。
さらにほんのりと独特の匂いがする。
これは「糠(ぬか)」の匂いである。
普通の白米を食べ慣れている人には、
決して美味しくは感じられないだろう。
さらにこの状態のものは、消化にも良くない。
この「玄米」の外周部を削り取り、
白い「白米」にすることを「精米」という。
この「白米」が、我々の良く知っているコメである。
「玄米」から「白米」に精米する際、
削り取ったコメの外周部分を「糠(ぬか)」という。

従来のコイン精米機では、
「糠」は廃棄物として機械の中で取り除かれ、
そのまま機械を設置した業者が処分(?)していたのだが、
最近は、この「糠」を自由に回収できる精米機も増えている。
「ご自由にお取り下さい」と看板をおいて、
精米の副産物である「糠」を、客に持って行かせる。
「糠」の処分費用を減らし、さらにそれを無料で渡すことにより
集客効果も狙ったものであろう。

こういう風に書くと、いかにも廃物然として感じられるが、
「糠」には、様々な利用法がある。
よく知られたものでは、この「糠」を使って
漬け物用の「漬け床」を作り、糠漬けを作ると云うものだ。
この「漬け床」の「糠」は乳酸発酵しており、
これに水で洗って、塩で揉み込んだ野菜を漬けることによって
糠漬けが出来上がる。
もちろんそれ以外にも、
食器などを洗う際に洗剤代わりに使ったり、
風呂に入る際、入浴剤の代わりに使うことも出来る。
さらに「糠」は食用にもなる。
(「糠」がついたままの「玄米」が食べられるのだから、
 その「玄米」の一部である「糠」が食べられるのも当然だ)
食物繊維やビタミン、ミネラルなど、
様々な栄養素を豊富に含んでおり、
むしろ、栄養という点では白米よりも優れているともいえる。
ただ、生のコメが食べられないように、
「糠」も生のままでは食べることが出来ない。
フライパンなどで乾煎りし、
火を通したものを様々な食品に混ぜる。
この際、混ぜ込む量を増やしすぎると糠の食感が強く出て、
食感を損なってしまうことがある。

ちなみに「糠」というのは、
何もコメだけから採れるものではない。
コメの他にも大麦や、小麦などのイネ科の植物からも、
精白を行なう際に「糠」が生じる。
大麦などはコメと同じく、
きれいな形で「糠」を取り除くことが出来るが、
小麦の場合、胚乳の部分が外皮よりもろいために
これを精白する場合には、胚乳も粉々に粉砕されてしまう。
大麦などが「粒」の状態でも食されるのに対し、
小麦が「粉」の状態でしか食べることが出来ないのは、
このためである。
小麦の場合、いったん全てを粉砕した後に、
外皮の部分だけを篩いにかけて取り除くことになる。
この取り除いた「糠」を「ふすま」といい、
「ブラン」とも呼ばれる。
これも「糠」と同じく、食物繊維をはじめとする
各種栄養を豊富に含んでいるので、
様々な健康食品等に加工されている。

かつて一度だけ、うちの母親が「糠漬け」に挑戦したことがある。
小さな容器の中に「糠床」を作り、
その中に、婆さんが大量生産する様々な野菜を漬け込んだ。
そこまでは知っているのだが、
そこから後のことについては、よくわかっていない。
ただ、その後いくらたっても「糠漬け」が
食卓に上がることはなかったし、
「糠床」を作っていた容器も、いつの間にか無くなっていた。
それ以降、母親は「糠漬け」について一切口にせず、
再び「糠床」を作ることもなかった。
我が家の食の歴史には、ついに「糠漬け」が記されることはなく、
我が家の3兄弟は「糠漬け」というものを食べたことがないまま
大人になった。
自分は「糠漬け」を口にしないまま、現在に至っている。
スーパーなどの漬け物売り場では、
パックに入った「糠漬け」も販売されているのだが、
どうも食指が伸びず、購入したことはない。

「いずれまた」、「いずれそのうち」と
「糠漬け」を後回しにし続けてきたが、
そろそろ肚を決めて、手を出してみる頃合いかも知れない。

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