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電気柵

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By: ajari

先日、電気柵に関わる痛ましい事件が起きた。

静岡県西伊豆町で、川遊びをしていた7人が
シカ除けの電気柵に触れて感電、
その内の2人が亡くなるという事故である。
ニュースなどで概要を聞く限りでは、
まず、川遊びをしていた8歳の男子児童が
川の土手に設置してあった電気柵に触れて感電、
それを助けようとした人たちも次々に感電し、
被害者7人、内2名死亡という事故になった。

このニュースを聞いて、一番最初に出た感想は、
「え?あれって人が死ぬの?」
というものであった。

自分の住んでいるたつの市は、田舎である。
当然、農業もそれなりに盛んであり、
水田、畑地では様々な作物が栽培されている。
自転車で田舎の農道を走ってみれば、
山に近い畑の周りには、例外なくネットが張られており、
シカやイノシシなどの野生動物が、
畑に侵入できないようにしてある。
それだけ、たつの市の山林にはシカやイノシシなどの
農作物を食い荒らす動物たちが多いということだろう。
そして、そういう動物除けのネットに混じり、
電気柵を用いている畑がある。
電気柵を用いている畑は、数としてはごく少数なのだが、
畑の周りに3〜4本程度、張り巡らされている電線は細く、
一見、こんなもので本当に動物が防げるのかな?と、
疑問を持ってしまいそうなほど頼りなく、
遠目から見る限りでは、全く何もないようにも見える。
畑の周り、道のすぐ傍に張り巡らされている「それ」は、
自転車に乗りながらでも、ちょっと手を伸ばせば
簡単に触ることの出来るような場所に、設置されている。
さすがに電気が流れていると分かっている以上、
そうそう触ってみようとは思わないが、
何も知らない子供などが傍を歩いていて、
好奇心から、ふと手を伸ばせば届くような位置に、
電気柵は設置されているのである。

そういう位置に設置されている以上、
間違って人が触れてしまうことも、充分にあり得る話である。
だからこそ電気柵は、
最悪、人間が触れても、死んだり、
怪我をしたりすることがない仕組みになっていると思っていた。
今回の事故は、自分が思い込んでいたその前提を、
ひっくり返してしまう事故だったわけである。

「電気柵」とは、動物が触れた際に
弱い電気ショックを与える機能を持った、柵のことである。
要は今まで普通に柵を作っていた所に電線を張り巡らせ、
これに電流を流し、触れたものに電気ショックを与えることで
その電線を越えられないようにしたものである。
今回の件のように、シカやイノシシを侵入させないため、
いわば害獣防御の役割を持つものの他にも、
牧場などでは、牛たちが規定範囲の外へ出て行かないよう、
これを閉じ込めるためにも使われる。
もちろん、牛を殺したり、傷つけたりするといけないので、
専用の感電装置を用いて、感電に至らせず、
弱い電気ショックを与えるだけに留めている。
これはシカ、イノシシの侵入を防ぐための柵でも同じことで、
電気柵にこれらが触れたとしても、弱いショックを与えるだけで、
殺してしまうようなことは起こらないようになっている。
電気ショックによる痛みを与え、それ学習させることにより
以後、畑に近づかないようにさせる効果がある。
普通の網などを張った柵よりは効果的であるが、
効果を持続させるためには、電源を維持するための費用がかかる。
もし、電気柵で囲う畑が小さい場合、
費用対効果的に厳しいこともある。
さらに、張り巡らせた電線に雑草などが触れた場合、
漏電を引き起こして、電気柵の効果が弱くなったり、
余計な電力を消費してしまうことがある。
こういう事態を防ぐために、
電気柵の周辺をマメに除草しておく必要がある。
一長一短のある電気柵だが、
コスト、維持管理する手間ということを抜かしてみれば、
家畜・野生動物問わず、かなり効果的な柵には違いない。

電気事業法では、電気柵による感電と火災の防止対策が
定められており、それによると

1・人体に影響のでない程度に電流を弱める電源装置を使う
2・人が簡単に立ち入る場所では、一定規模の漏電が起きたとき
  電気を遮断する装置を設ける
3・見えやすい危険表示をする

といった対策をとることになっている。
今回の事故を、これらに当てはめてみると
3の危険表示がなされていなかった。
さらに感電死した被害者が出た以上、
1および2の装置についても設置されていなかったか、
設置されていても、作動しなかったということだろう。

今回の事故では、切れた電線が川の中へと垂れ下がり、
最初に感電した男児を救出しようと川に入った人間たちも
次々と感電してしまうこととなった。
電線が切れて、川の中に垂れ下がったのが、
どのタイミングで起こったことなのかはわからないが、
事故直後、救助に向かった人たちが
「川の水がビリビリして近づけなかった」と
証言していることからも、
切れた電線から漏電が続いていたと考えて、
間違いないようだ。
電気柵の所有者が電源を落とすと、
川の中に入ることが出来たということなので、
それまでの間、感電していた被害者たちは、
感電しっぱなしであったということになる。
子供が感電する現場を目撃し、
救出に飛び込んだ父親2人が、感電死してしまった。
「川の水がビリビリして近づけなかった」とあるが、
体力のある父親は、子供の危機にそれを無理押して
駆けつけようとしたのだろう。
結果として、その無理押しが祟り、
体力があったはずの父親たちが命を落とすことになった。
冷静に状況を判断して、などと
月並みな意見をいう専門家もいるだろうが、
子供の命の危機を目前にしては、
冷静でいられる父親の方が少ないだろう。
そう考えれば、これはあまりにも惨い事故であった。

この事故を受けて、各地では行政による
電気柵の点検が行なわれている。
今回のような、悲劇を繰り返さないため、
徹底的な点検を期待したい。

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