前回、前々回と、顔について書いてきた。
今回も同じように顔について書いていく。
前々回がウルトラマン、前回がゴジラの「顔」について書いた。
その流れでいえば、次は仮面ライダー辺りがきそうだが、
残念、今回はガンダムの「顔」について書いていく。
ガンダムはロボットである。
だから曲がりなりにも生物であった、ウルトラマンやゴジラとは、
一線を画している。
生物のそれではなく、あくまでも生物を模した、非生物のそれである。
では例に寄って、目からいこう。
ガンダムは人間と同じような位置に、同じように2つ、目がある。
もちろん、本当の意味での目ではないが、この目はカメラになっていて、
多くの場合、ここからの映像も、コックピット内の全方位モニターに映される。
なぜ2つあるのかは、はっきりとしない。
敵のモビルスーツには、この目の位置のカメラが単眼のものがある。
いわゆるモノアイだ。
ジオン軍の「ザク」などがこの代表で、実際にはこれで、何の問題もない。
連合軍の場合でも、ガンダム以外だとオーバーグラス状のものが多い。
これも、カメラとして、充分に機能している。
そもそも人間の目が2つあるのは、物を立体的に捉えるためであり、
立体映像を撮るカメラの場合は、レンズを2つ持つカメラもある。
しかしガンダムの全方位モニターは、あくまでも平面画像を映し出すものなので、
このカメラの方式には意味がない。
あえていうなら、相手に対する威圧感的なものであろうか?
このカメラは、ガンダムの起動時に光り、停止時には光が消えている。
どうしてカメラのレンズが光っているのか、意味が分からない。
恐らくはこれも、威圧感を出すためのものだと思われる。
早い話がこけおどしだ。
鼻がある。
そりゃ、あるだろう、と思われるかもしれないが、ガンダムはロボットだ。
臭いを感じる必要はないし、もちろん呼吸もしていない。
実際、ガンダム以外の他のモビルスーツの場合、鼻がついていないものも多い。
もちろん、そちらが正解である。
ガンダムの鼻は、口部分を覆うマスクによって覆われており、
両目の間の部分が、盛り上がっているだけだ。
無駄に人に似ているために、ロボットには必要のないパーツでも、
とりあえずつけておかないと、違和感が出てくるのかもしれない。
口はない。
というのも、ガンダムの口部分は、マスク状のカバーに覆われており、
露出していない。
中には、このマスク部分をパージするガンダムもいるが、その場合も口はない。
喋る、というよりは、中に乗っているパイロットがマイクで喋り、
それを外にスピーカーで流すシーンはあるが、口から音が出ている描写はない。
もちろん、ガンダムは呼吸をしないし、口から放射能熱線を吐いたりもしない。
耳もない。
ガンダムの頭部は、普通の頭部にヘルメットか、兜をかぶせた形になっており、
顔面以外はすっぽりと覆われてしまっている。
当然そこには耳も含まれる。
もちろん、音を拾うのは、内蔵されているマイクで行なわれるのだが、
このマイクがどこに内蔵されているかについては、はっきりしない。
輪郭はほぼ一様である。
色は主に白色であることが多いが、主人公機以外のガンダムということになると、
この例に外れ、別の色をしていることもある。
大きな特徴として、額部分にV字型の角がついている。
日本の兜の前立てにあたる。
有名な言葉に、「2つの目と、角がついてりゃガンダムだ」というものがあるが、
これはまさしくその言葉のとおりだ。
イロモノガンダムが大量に出演した、「Gガンダム」でさえ、
このデザインラインは守られていた。
ただひとつ例外があり、それでは角がないかわりに髭が生えていた。
顎は赤く尖っていることが多い。
当然、頭髪はない。
しかしこれにも例外があり、頭髪の生えているガンダムもあった。
もちろん繊維状のものが生えているわけではなく、頭髪を模したものが
頭部に付属しているだけだったが。
腰まである金髪のロングヘアで、胸にリボン、足はハイヒールになっている。
そう、女性を模したガンダムだった。
そんなものがあるのか、と驚いた人もいるかもしれないが、あるのである。
重要なのは、女性をモチーフにしたガンダムであっても、
顔については、ガンダムのデザインラインをきっちりと守っていた点だ。
デザイナーの、ガンダムという名前へのこだわりを感じる。
気になる人は、「ノーベルガンダム」というワードで、検索してみてほしい。
主人公機のガンダム、という視点でいえば、ほぼ同じような輪郭をしている。
中にほっそりとしたものや(Z)、まん丸いもの(ターンA)もあるが、
基本、初代のガンダムのアレンジといえる。
ただ、数ある作品の中には、主人公以外のガンダムが出てくる作品も多い。
こういう主人公機以外のガンダムだと、輪郭が大きく違っているものも多い。
「ガンダム」というのは、作品の中でさえ、ひとつの創作物だ。
いわば作品の中で、人の意志によって、あの顔に作られているということだ。
その点、自然物のウルトラマンやゴジラとは、意味合いが違っている。
かつて強かったもの(この場合は初代ガンダムか)に、似せて作る。
そうすることによって、自分を強く見せようとする。
ガンダムの似通った顔には、そういう意志が込められている。
3回にわたって、観相術というテーマで、ウルトラマン、ゴジラ、
ガンダムの顔を、分析してきた。
どれも知識のない人が見た場合、見分けがつかないような顔だ。
しかしどんなに同じように見えても、落ち着いてよく観察すれば、
確実に違いは見えてくる。
人の顔を覚える第一歩は、まず相手の顔をよく見ることである。
そうすれば、同じように見えていた人の顔に、違いと個性が見えてくる。
もちろん、人の顔をじろじろと観察するのは、失礼に当たることもある。
さりげなく、それでいてしっかりと、見ていこう。
そうすれば、顔が覚えられない、という悩みも解決するだろう。