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戦艦大和・記憶の歴史〜その3

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前回、前々回に渡って、
戦後、戦艦大和が人々にどのように知られ、
どのようにして扱われてきたかを書いた。

第1回では戦中、ほとんど認知されていなかった状況から、
戦後、徐々にその名前を知られ、
後に映画やドラマで「大和」を作る際の、
第1級の資料ともいえる「戦艦大和ノ最期」の発行までを、
第2回では、その後大和が「戦記物」などで取り上げられ、
徐々にその人気を獲得していき、
大和が空を飛んだり、怪獣になったりしたあたりまでを書いた。

第3回の今回は、
大和が宇宙に飛び出した、「あの」作品の話である。

「宇宙戦艦ヤマト」が生み出された1970年代、
日本には終末的な雰囲気が横溢していた。
高度経済成長は終わりを迎え、日本各地で公害が発生、
さらに1999年に人類が滅亡すると予言した
「ノストラダムスの大予言」が1973年に発行され、
世の中の空気は、実に暗澹としたものであった。
そういう世間の空気の中で、
「宇宙戦艦ヤマト」の企画はスタートする。
と、いっても企画の当初は、
宇宙戦艦になるのは大和ではなかった。
当初、企画されていたのは日露戦争で旗艦を務めた「三笠」を
主役としたものであった。
だが、当時の子供たちにとっては「三笠」よりも
「大和」の人気の方が圧倒的であったため、
企画は変更され、「大和」が宇宙戦艦になることとなった。
当時の終末的な空気は、「宇宙戦艦ヤマト」の中にも現れている。
「ヤマト」の舞台となっているのは1999年から
きっちりと200年後の2199年であるし、
地球はガミラスの遊星爆弾によって、滅亡の危機に瀕している。
これは「ノストラダムスの大予言」の中にある、
「天より恐怖の大王が〜」の下りと似通っている。
この「滅亡」を覆すべく、
戦艦大和は宇宙戦艦ヤマトとして蘇り、
はるかな宇宙へと旅立ったのである。

だが、ヤマトは苦戦する。
ガミラス相手ではない。
それ以上の強敵は、裏番組であった
「アルプスの少女ハイジ」である。
「ヤマト」は視聴率において「ハイジ」に敗れ去る。
大ガミラスを打ち倒したヤマトは、
アルプスの大自然の中で健やかに育つ少女に叩きのめされ、
全36話の予定を、26話に縮められてしまう。
実質的な打ち切りである。
太平洋戦争において300機を越える航空機に敗れた大和が、
今度はアルプスに暮らす、たった1人の少女に敗れたのである。
しかし、米軍に敗れた大和が、
後にじわじわと人気を上げたように、
ハイジに敗れたヤマトも、
じわじわと人気を上げていくことになる。
再放送によって人気が出始め、劇場版が公開されるに至って
その人気は決定的なものとなり、
世に再び「ヤマト」ブームが巻き起こる。

1978年、その人気に後押しされるような形で
続編映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」が上映される。
これは、「宇宙戦艦ヤマト」の数年後の世界を描いたもので、
新たなる敵・白色彗星帝国と、地球の戦いが繰り広げられる。
この映画のラスト、満身創痍のヤマトは
生き残った乗員を退避させた後、
敵巨大戦艦に対して特攻を敢行するのである。
かつての「沖縄特攻作戦」と、重なってみえる。

しかし、後にこの映画をもとに製作された
TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」では、
同じ白色彗星帝国を相手にしつつもラストが改変され、
ヤマトは生き残ることになってしまった。
「さらば」で感動したファンからは、
「結局はカネか」と落胆の声も聞かれた。
その後、TVシリーズでは「宇宙戦艦ヤマト3」、
劇場映画も何本か製作され、
「宇宙戦艦ヤマト 完結編」をもって
再びヤマトは星の海に沈むことになる。
ぐだぐだと引き延ばした上でのヤマトの最期は、
散々、温存された挙げ句、ほとんど活躍することもなく、
「沖縄特攻作戦」で沈んだ、戦艦大和の姿にかぶる所がある。
(なお、ヤマトはしぶとく、
 この後も復活することになるのだが、
 それはまた次回以降の話となる)

この「宇宙戦艦ヤマト」において、
大和には、オリジナルにはない新たな要素を付加されていた。
ひとつは46㎝砲を上回る兵器、波動砲の搭載。
もうひとつは戦闘機を積み込むことによって、
「空母」的な要素を加味していたことである。

「ヤマト」において「波動砲」とはまさに最終兵器で、
これに匹敵するほどの超兵器は、
ガミラス側も所持していない。
(唯一、デスラー艦に装備されていたデスラー砲が
 波動砲に匹敵するような武器であったが、
 作中ではついに充分な威力を発揮せぬままに終わった)
木星において、一撃で浮遊大陸(オーストラリアと
同じくらいの大きさ)を破壊しつくしたその威力は、
核兵器のイメージだろうか?
最初の1発以降は、直接敵に向けられることもなく、
発射回数も決して多くない。

さらにヤマトに搭載されていた、
ブラックタイガーと呼ばれる戦闘機群である。
こちらの方は「波動砲」と違い、頻繁に出撃し、
ヤマトの危機を救っていた。
戦艦大和にも、水上艇を発艦させるカタパルトがついていたが、
この水上艇は敵戦闘機との戦いのためのものではなく、
あくまでも主砲の弾着確認・修正のためのもので、
ブラックタイガーとは意味合いが違う。
「沖縄特攻作戦」では1機の直援機もなく、
爆撃機や雷撃機の集中攻撃を浴びた大和だったが、
宇宙戦艦に改造され、この直援機を自ら抱えることとなった。
(ただ、ヤマトに積み込まれているのは
 あくまでも対戦闘機戦のための、戦闘機のみで、
 爆撃機や雷撃機は積み込んでいない。
 あるいは、ブラックタイガーにも
 爆弾等を装着させることが出来るのかも知れないが……。
 宇宙空間の戦闘において、
 爆撃と雷撃に分ける意味があるのか?という疑問もあるが、
 ガミラス側には、キチンと爆撃機と雷撃機が存在していた)

かくして、「宇宙戦艦ヤマト」に触れた新たなファンが、
そこから戦艦大和に触れることになり、
その認知度、人気はさらに高まっていくことになった。
ひとつ、注目しておきたいのは、
アニメというメディアで人気を博したため、
大和は国内のみならず、国外にも知られるようになったことだ。
ただ、あまりにも「ヤマト」の方が有名になり過ぎ、
「戦艦大和」のプラモデル(完成品)を見た外人が、

「お、ヤマトだ」
「お、本当だ、だが波動砲がついていないな」

なんていう会話をした、という話もある。
ちなみにこの外人に対し、

「それはヤマトのプロトタイプだよ」

と答えたという、オチもついている。
たしかに「宇宙戦艦ヤマト」からみれば、
「戦艦大和」はプロトタイプともいえるかも知れない。
(厳密にいえば、そうではないのだが)

さて今回は、戦後の大和の歴史を語る上で、
欠かすことの出来ない「宇宙戦艦ヤマト」について書いてみた。
次回は最終回として、様々な仮想戦記と
大和の新たな姿について書いていく。

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