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ハマグリ

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ここの所、婆さんの葬式から話が広がっている。
今回も、やはり話の始まりは、婆さんの葬式である。

婆さんの葬式が、「お別れ会」という名前で、
2日間にわたって執り行われたのだが、
1日目の夜に関しては、
婆さんの枕元のロウソクと線香を、
絶やさないようにしないといけなかった。
早い話、誰かが一晩中起きていて、
ロウソクと線香の番をしなければならない、ということだ。
集まった人間のうち、何人かが交替で寝て、
その役目を請け負うことになった。

車の運転をしなくていい自分は、
その役目を買って出て、婆さんの横で深夜番組を見つつ、
ビールをチビチビやりながら起きていたのだが、
4時間ほど運転した弟は、
あっという間に布団の中に潜り込んでいた。
翌日、葬儀が終わった後にも、
同じ時間をかけて、たつのまで帰らなければならないのだから、
しっかりと休んで、疲れをとってもらわなければならない。
運転手である弟が、途中で居眠りでもした日には、
兄弟仲良く、婆さんの後を追うことにもなりかねない。
かくして、自分は半徹夜状態、
弟は熟睡した状態で、葬儀の日を迎えた。

セレモニーホールで簡単に葬儀を執り行った後、
火葬場へと婆さんを運び、きれいに焼いてもらう。
その後、再びホールに戻り、昼食をとって解散。
自分と弟は、妹と甥っ子を名古屋駅まで送り、
その後、高速道路を飛ばして、たつのへと帰ることになった。

天気は曇天で、名古屋から高速に乗った途端、雨が降り始めた。
自分は昨夜、あまり寝ていなかったので、
強い睡魔に襲われていた。
ウトウトしながら横を見ると、
何と運転手の弟も、眠そうに目をこすっている。
途端にこちらの眠気が吹き飛んだ。
瀬戸から下道を通り、名古屋駅まで妹たちを送ったのだが、
やたら混んでいたために1時間半もかかってしまった。
そのため、すでに運転手に疲れが出始めていたのだ。
とりあえず、弟に休憩を提案し、
近くのパーキングエリアに入ることになった。
そのパーキングエリアが大山田パーキングエリアである。
小さいながらもコンビニエンスストアや、売店も揃っており、
土産物を購入することも出来る。
休憩中、売店やレストランを見て歩くと、
随所で「ハマグリ」がイチオシされていた。
そう、大山田パーキングエリアは三重県桑名市にある。
「その手は桑名の焼きハマグリ」なんて言葉があるように、
桑名は「ハマグリ」でその名を売っているのである。

ハマグリは、マルスダレガイ科ハマグリ属に属する
二枚貝の一種である。
食用として、重要な貝類の一種であり、
日本でも古くから食用にされてきた。
パッと写真を見た感じでは、
一見、アサリと同じように見える。
しかし全体的にアサリよりはサイズが大きく、
大きなものでは10㎝以上の大きさに育つものもある。
殻はツヤがあり、かつ厚みがある。
北海道南部から九州にかけて、
淡水の影響のある内湾の砂泥底に生息しているが、
日本では昭和後期からその数が激減した。
これは、ハマグリの生息に適した遠浅の内湾が、
干拓や埋め立てによって、消滅してしまったためである。
現在では、周防灘の一部や有明海の一部など、
局地的な生息地の他は、ほぼ絶滅状態になっている。

縄文時代の貝塚からも、大量に貝殻が見つかっており、
貝塚の貝殻のうち、80%はハマグリの貝殻である。
古代人たちは、ほとんどアサリには目もくれず、
ハマグリを獲って、食べていたのである。
逆に言えば、縄文時代の日本には、
それだけ大量のハマグリが、生息していたということになる。
ハマグリの貝殻は一度はずすと
他の貝殻とは合わないことから、
中世以降、縁を結ぶ結婚式などの縁起物として
日本の食文化の中で、よく用いられてきた。
また、身を食べた後の貝殻についても、
「貝合わせ」などの遊具として用いられ、
やがて、この「貝合わせ」の貝殻の裏に
絵や和歌を描きいれるようになった。

ハマグリという名前の語源については、
浜にあって「栗」に似ているから、というものがある。
つまり「浜栗」ということである。
なるほど、たしかにハマグリには栗色をしているものもあるし、
大きさも栗に近い。
表面がツヤツヤしているため、余計に「栗」らしく見える。
しかし、ハマグリの全てが栗色をしているわけではない。
白い色をしたものも多く、
こちらはどうやっても「栗」には見えない。
別の説として「はま」は「浜」、
「ぐり」は「石」のことだ、というものもある。
石が地中にあるのに似ているから、ということらしいのだが、
そんなに石に似ているだろうか?

「ハマグリ」の呼び方の1つに「グレハマ」というのがある。
これは「ハマグリ」を逆さまに呼んだ「グリハマ」が訛り、
「グレハマ」に変じたという。
「女」を「ナオン」、
「銀座」を「ザギン」などと呼ぶようなものだ。
子供などが非行に走ることを「グレる」というが、
これはもともと、この「グレハマ」から来ているという。
「ハマグリ」の貝殻を逆さまにしても合わないことから、
予想どうりにいかない、
きちんと合わせられないということになり、
そこから「はみ出し者」ということになって、
現在の意味になった。

先に書いた通り、現在、国内のハマグリはほぼ壊滅状態である。
国内に出回っているハマグリのうち、
実に90%以上が中国からなどの輸入品となっている。
国内での沿岸漁業も行なわれているのだが、
1人の漁師が操業できるのは、1年間でわずか10日ほど。
さらに1回の漁の時間がわずか1時間と決められている。
年間で、わずか10時間しか漁ができないわけだ。
そこまでやるんだったら、
いっそのこと完全に禁漁にしてしまえば?とも思うのだが、
逆に言えば、この短い時間で総消費量の約10%を
賄えているということである。
それだけ、国内に出回っているハマグリが
少ないということだろうか?

大山田パーキングエリアでは、
その数少ないハマグリを使い、
ハマグリラーメンやハマグリ焼きそばを提供している。
桑名では、かつて3000tあった水揚げが
1995年には0.8tまで落ち込んだ。
これはマズいということで、人工の干潟を作ったり、
稚貝を放流したりして、ハマグリの復活に力を注いできた。
近年、ようやくその効果が出始め、
復活の兆しが見えてきたという。
パーキングエリアで提供されているハマグリが、
全て桑名産かどうかは疑問符がつくが、
少なくとも、今も昔も桑名はハマグリを推していくらしい。

かつてのように、桑名のみならず、
日本全国でハマグリが獲れるようになってほしいものだが、
そうなるためには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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