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食べ物

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桃は虚弱体質だ。

そのため、発泡ウレタン製のネットに身を包んでいる。

それでも他の果物、例えばオレンジやリンゴなどに比べると、圧倒的に体が弱い。

そのため、仏壇などにお供えする際も、

桃だけは発泡ウレタンのネットを身にまとったまま、鎮座している。

問題なのは、そこまでしてもらっておいても、

オレンジやリンゴに比べて、傷みが早いことだ。

今回はこの「桃」について書いていく。

桃は、バラ科モモ属の落葉樹だ。

樹高は5mほどで、3月下旬から、4月上旬にかけて花が咲く。

ひな祭りを「桃の節句」と呼ぶが、3月3日だとまだ桃の花には早い。

これは、旧暦がもとになっているので、ひと月ほど遅れているのだろう。

つまり、旧暦の「桃の節句」というのは、

新暦の4月上旬ということになり、桃の花の季節と一致する。

「桃の花」というのは、俳句の世界では、春の季語になる。

やがて7月から8月にかけて、ソフトボール大の果実をつける。

「桃の実」というのは、俳句の世界では、秋の季語になる。

えっ?夏の季語なんじゃないの、と思われるかもしれないが、

これも旧暦基準で、設定されているのだ。

この桃の実が熟してくると、ほんのりと赤みを帯び、ピンク色になる。

このピンク色を「桃色」というが、これは実の色ではなく、花の色をさしている。

実は球形で、真ん中辺りで縦に割れている。

皮は薄く、微細な産毛に覆われており、手触りが優しい。

さらに実も、水分を大量に含んでおり、柔らかいので、さらに手触りが良くなる。

調子に乗って、触りまくっていると、あっという間に傷んでしまう。

病害虫にも弱く、木についているときから袋をかけ、

保護しなければ、あっというまにやられてしまう。

桃の原産地は、中国西北部の黄河の上流域の高山地帯である。

日本では、縄文時代の遺跡から、桃の核の部分が出土しており、

そのころから、食用にされることもあったようだ。

弥生時代になると、栽培種が大陸から持ち込まれ、桃の栽培が始まった。

食用の他、祭祀などにも用いられていた。

当時の桃は、現在のものほど甘味がなかったため、どちらかといえば

桃の花の方が、観賞用として重要視されており、

桃の実もまた、鑑賞用としての用途が多かった。

江戸時代、桃は全国的に広まっていったが、やはり花目的であることが多く、

実も観賞用にされることが多く、食用になるものは少なかった。

これが一変したのは、明治時代、甘味の強い水蜜桃(現在食べられている

一般的な種)が輸入されてからである。

甘味も強く、水分量が多いジューシーな水蜜桃によって、

桃を食べる、という食文化が定着していった。

現在栽培されている品種は、この水蜜桃系品種のものである。

中国では、桃は仙木・仙菓とされ、邪を祓う力があるとされた。

さらに不老長寿を授ける果実としても珍重され、

祝い事の際には、桃をかたどった「桃饅頭」が作られた。

日本でも同じように、邪を祓う力があるとされ、

根の国に赴いたイザナギが、黄泉醜女に桃の実を投げつけ、

これを退散させたという、エピソードがある。

また良く知られている昔話「桃太郎」でも、主人公は桃から誕生している。

主人公に桃から生まれたという設定を用いたのは、

桃のもつ神性を、主人公に付加させるためだったのではないだろうか?

桃はどちらかといえば、高級なフルーツだ。

子供のころは、そうそう食べることはできなかった。

たまに貰い物があると、直ちにこれを冷やし、切り分けて食べたのだが、

兄弟で分けるので、一人当たりの量は少なかった。

桃というのは、同じ個体であっても、場所によって甘さに差がある。

わかりやすくいえば、ひとつの桃の中に甘い部分と、

それほどでもない部分があるのだ。

ひとつまるまる食べれるのであれば、甘い部分も、甘くない部分も、

全部食べれるが、兄弟で分けるとなれば、そうもいかない。

自分の割り当てられた場所によっては、全然甘くないこともあった。

桃というのは、甘味はあっても酸味がほとんど無い。

だから甘くない部分があたると、酸っぱいとかそういうことは全くなく、

ただ味がうすい、という感じになる。

生の桃はなかなか食べられなかったが、

桃の缶詰は、それよりは食べる機会が多かった。

こちらは、生の桃の新鮮さはないが、シロップ漬けになっているので、

当たり外れというものが少なかった。

仏壇に、桃をお供えしていると、ほんのりと甘い香りが漂う。

線香臭い仏間に、爽やかな香りが漂うのが嬉しくて、

つい長めにお供えしていたのだが、ふとひっくり返してみると、

すでに底の部分が傷み始めていた。

あわてて、冷蔵庫の中へ放り込み、冷やして食べたのだが、

結構な部分が、傷んでしまっていた。

もったいないことをしたな、と思いながら、残りを食べたのだが、

傷みはじめるほどになっていても、やはり甘い部分と、甘くない部分があった。

桃を食べるタイミングというのは、本当に難しいものだ。

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