雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

未分類

蚊取り線香

投稿日:

自分は煙草を吸わないので、ライターやマッチを持ち歩かない。

普段の生活の中で使う火は、仏壇とガスコンロくらいで、

それ以外の火というものは、全く使わない。

ところが、毎年夏になると、それ以外の火を使うようになる。

それが「蚊取り線香」である。

現在では、電気式の蚊取り機が多くなっているが、

それでも、薬局などで「蚊取り線香」の占める割合は多い。

おなじみの、緑のぐるぐる渦巻きに火をつけると、かすかな紫煙が立ち上る。

独特の香りが立ちこめ、やがて蚊がぽとぽとと落ちてくる。

まさに夏の風物詩ともいえる、光景である。

陶器でできた、ブタ型の蚊遣り器はおなじみで、これを置いておくと

ますます夏の季節感が漂う。

かくも日本の夏の風景にとけ込んだ蚊取り線香だが、

これが初めて作られたのは、明治21年(1888年)になってからである。

明治18年に、アメリカより除虫菊が持ち込まれ、

和歌山県、東京、熊本県などで栽培され始めた。

これを原料として、粉末状の蚊取り線香がまず作られ、

その後、明治23年に棒状の蚊取り線香が作られた。

この5年後の明治28年、現在のものに近い、渦巻き状の蚊取り線香が

出来上がった。

よく、時代劇などで、江戸時代であるにも関わらず、ごく自然に、

蚊取り線香が出て来ていることがあるが、これは大きな間違いである。

静かに煙が立ち上り、その後に蚊が落ちることから、

この煙に殺虫効果があるように思われがちだが、

実はこの煙には殺虫効果はない。

赤く火がおこり、煙が立ち上っている少し後ろで、目に見えない殺虫成分が、

空気中にまき散らされている。

高温になると、蚊取り線香内に含まれている揮発成分、

「ピレスロイド」が揮発し、空気中に放出される。

これが、蚊を落とすのである。

もともとは、除虫菊の胚珠部分に含まれているピレスロイドが使われていたが、

現在では科学的に合成した、ピレスロイドが使われている。

日本はもちろんとして、蚊取り線香は各国に輸出されている。

電気式の蚊取り機が使えない地域でも、火種さえあれば使うことができる。

蚊をはじめとする、羽虫の多い東南アジアを中心に、

アメリカなどでも普及している。

蚊を媒介に伝染する病気も多く(マラリアなど)、

蚊取り線香はこれらの防止に役立っている。

アメリカでは「モスキート・コイル」の名前で販売されている。

かつて、この「蚊取り線香」の原料とされていたのが、除虫菊である。

キク科の多年草で、本名は「シロバナムシヨケギク」となる。

地中海のセルビアで発見された。

かつて、除虫菊の主な生産地であった、広島県尾道市では、

市の花に選ばれている。

5月には、白い花が咲く。

この花の部分だけを刈り取り、乾燥させ、粉砕することによって

蚊取り線香の原料としていた。

先に書いた通り、現在では科学的に合成した「ピレスロイド」を、

使用しているので、除虫菊の栽培は行なわれていない。

一部、広島県の因島で、観光用に栽培されているのみである。

この「蚊取り線香」だが、明治時代に発明される以前は、

「蚊遣り火」というものが使われていた。

こちらの方は、ヨモギの葉、榧の木、スギやマツの青葉を火にくべ、

燻した煙で、蚊を追い払うというものであった。

火を使う点、煙を立てる点など、蚊取り線香に共通する点も多い。

これは平安時代から、大正時代の初期まで使われていたが、

蚊取り線香が普及するにつれて、次第に使われなくなった。

江戸時代においては、庶民の夏の風物詩といえるもので、

俳句の世界では、夏の季語になっている。

蚊は、ただ刺されてかゆい、だけのものではない。

血を吸って、いろいろな生物の間や、人間の間を行き来するため、

伝染病の媒介者として、非常に危険な生物でもある。

蚊を媒介にして伝染する病気には、マラリア、フィラリア、黄熱病、

デング熱、脳炎、ウエストナイル熱など、恐ろしいものが並んでいる。

日本脳炎の予防接種を覚えている人もいるだろう。

かつては、国内でも年間1000人以上の感染者が出ていたが、

ワクチンの予防接種が行なわれるようになり、その数は激減した。

夏の風物詩といえる「蚊取り線香」だが、

そこまで牧歌的に捉えられるのは、あの渦巻き状の見た目によるところが大きい。

もちろん、あの渦巻き形態は、使用時間を長くするための工夫なのだが、

形の面白さ、一枚の円盤を打ち抜くことによって、

2枚の蚊取り線香にする高い収納性、

寝かせた状態で使用することにより、安全性を高めている。

あの独特の形状は、とぐろを巻く蛇から発想されたものだという。

標準的な蚊取り線香は、まっすぐに伸ばせば75cmほどあり、

約7時間使用できる。

いろいろと便利な点を書いてきたが、火を使っていて、

生活空間の中にあるので、接触や転倒などの危険性がある。

蚊取り線香があることに気がつかず、触れて火傷を負ったり、

ひっくり返して火事の原因になったりもする。

そういう意味では、蚊取り線香の周りをぐるりと囲う、

ブタ型の蚊遣り器は、安全性において理にかなっている。

蚊を落とし、夏の雰囲気を盛り上げる、蚊取り線香。

火事にだけは注意して、安全に使っていきたいものだ。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-未分類

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.