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マーガリン

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先日、ニュース番組を見ていると、

「アメリカの食品医薬品局は、3年後までに
 加工食品などでの「トランス脂肪酸」の使用を
 全面的に禁止すると発表した」

というニュースが流れていた。
「トランス脂肪酸」というのは、
マーガリンやショートニングなどに多く含まれている
不飽和脂肪酸のことである。
まあ、あまり科学的なことには触れるつもりはないが、
この「トランス脂肪酸」を摂取しすぎると、
悪玉コレステロールを増加させ、
心疾患などを引き起こす危険性が高くなるとして、
一部の国々では問題視されていたのである。
その一部の国々の中にはアメリカも含まれており、
彼の国では、
食品に含まれる「トランス脂肪酸」の量を制限したり、
その食品に含まれている「トランス脂肪酸」の量を
パッケージに表示することを義務づけたりしていたのだが、
今回、いよいよ「トランス脂肪酸」を完全に禁止すると、
発表したのである。

まあ、単純に聞く分では、所詮、よその国のことである。
アメリカに「トランス脂肪酸」を含む食品を
輸出している業者ならば、問題にもなるだろうが、
日本の一般国民にとっては、全く対岸の火事といっていい。
アメリカに「トランス脂肪酸」を含む食品を
輸出している業者だとしても、
これまでの「トランス脂肪酸」排除の動きを
知っているだろうから、
当然、何らかの対応策は出来ているだろう。

この「トランス脂肪酸」の話になると、
槍玉に挙げられるのが、「マーガリン」である。
マーガリンには、この「トランス脂肪酸」が含まれており、
これを日常的に、かつ大量に摂取していると、
先に書いたように悪玉コレステロールを増やし、
心疾患を引き起こしてしまうことになる。
もちろん、「トランス脂肪酸」を多く含んでいるのは
何もマーガリンだけではない。
お菓子作りなどに頻繁に用いられる「ショートニング」や、
パンなどに塗る「スプレッド」と呼ばれるものの中にも、
「トランス脂肪酸」を多く含むものが存在している。
ショートニングなどは、クッキーなどにも多く用いられているし、
パンに塗るスプレッドも、使っている人は多いだろう。
しかし、なんといっても「日常的に」摂取している
ということになると、
「マーガリン」に及ぶものはない。
毎朝、朝食はパン食だという人は多いだろう。
米飯のように、事前に準備しておく必要もなく、
買っておいた食パンをトースターの中に放り込んで、
5分ほど焼くだけである。
お手軽さということでは、米飯を圧倒している。
そして、焼き上げたトーストには何かを塗る。
塗るものは色々あるだろうが、
ジャムやマーマレード、ピーナッツクリームにハチミツなど、
甘味を持っているものがほとんどである。
当然、甘いものが苦手な人はこれらを使わない。
代わりに何を使うかといえば、
ほとんどの人がバターかマーガリンを塗る。
毎日使うものなので、出来るだけ安価にしたいと
考えることもあるだろう。
そうなると、トーストに塗るものは「マーガリン」、
ということになる。
(もちろん、トマトケチャップやマヨネーズなど、
 他に塗れるものもあるのだが、
 これらはあまり塗っている人を見たことがない)
最近、というよりここ20年ほどは、
様々な食品で「塩分控えめ」が叫ばれている。
もちろん、マーガリンもこの例に漏れない。
塩分を押さえられているため、
しっかりとトーストに味をつけたければ、
タップリとマーガリンを塗り付けることになる。
必然的に「トランス脂肪酸」の摂取量も増えるということになる。

マーガリンは、植物性油脂、
もしくは動物性油脂を使って作られた、
加工食品の一種である。
乳製品であるバターに酷似しているが、
これは元々、高価なバターの代用品として作られているためで、
日本ではかつて「人造バター」と呼ばれていたこともある。
(こういう風に書くと、
 バターが天然自然のものであるかのように思えてしまうが、
 バター自体、牛乳を加工して作られた人造物である)
日本では「マーガリン類」についての規定が定められており、
主に油脂含有量の違いによって分類されている。
油脂含有率が80%を超えるものをマーガリン、
80%未満のものはファストスプレッドと呼ばれている。
実は日本で販売されているマーガリンのほとんどは、
油脂含有量が80%に達しておらず、
分類上ではマーガリンではなく、
ファストスプレッドということになる。
なんともワケのわからない話だ。

マーガリンが最初に作られたのは、
19世紀のフランスでのことである。
ナポレオン3世が、軍用・民生用として安価な代用品を募集し、
それに答えて、フランス人のイポリット・ムージュ=モーリエが
作り上げた。
当初のマーガリンは、牛脂に牛乳などを加えて作られたもので、
これは「オレオ・マーガリン」と呼ばれた。
「マーガリン」という名前の由来は、
1813年にフランスの化学者
ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールが
動物性脂肪の研究で発見した「マルガリン酸」からきている。
1887年には日本へと輸入され、
1908年に国産化に成功している。

19世紀末にはニッケルを触媒として、植物油に水素を添加し、
植物油を固める方法が発見される。
これが現在、広く使われている「マーガリン」である。
現在、問題視されている「トランス脂肪酸」は、
この水素添加によって副産物的に生み出されるのである。
当初、植物油を固めたマーガリンは、
植物油を使っているということで、
動物性油脂であるバターよりも、健康に良いとされていた。
植物油を原料にして作られる安価なマーガリンは、
高価なバターに代わるものとして、
そのシェアを順調に広げていった。
近年、「トランス脂肪酸」が身体に及ぼす害が話題になり、
その含有量などが制限されるなど、規制がかけられてきたが、
これに対応するように、
「トランス脂肪酸」の含有量を減らした製品も作られている。
ちなみにこれらの規制は、外国で行なわれているだけで、
日本国内には「トランス脂肪酸」に関する規制は何もない。
これは、日本人が平均的な食生活を送っている限り、
身体に害を及ぼすような量の「トランス脂肪酸」を
摂取することはあり得ない、という判断による。
ただ、あくまでもこれは「平均的な日本人の食生活」を
送っていることが大前提になっているので、
これから大きく乖離しているような食生活をしている場合、
絶対に安全とは言い切れない。

近年、日本人の食生活の変化が、随所で叫ばれているが、
いずれ日本でも「トランス脂肪酸」が問題視されることに
なるのかもしれない。

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