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ビワ

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By: okano

先日、市内を自転車で走っていると、
道端に植えてあるビワの木に、いくつもの実がついていた。

ビワの実は淡いオレンジ色をしており、
濃い緑色をした葉に良く栄える。
ビワの木は、他の樹木に比べると独特の形をしており、
どことなく南国の雰囲気をまとっている。
5〜6月という、初夏の時期になれば
このビワの木がいくつもの実をつけ、
我々の目を楽しませてくれる。

このビワの木は、人に栽培されているものばかりでなく、
自然の中に自生しているものもある。
かつて東海地方の海岸線を自転車で走っていたときに、
ちょうど野生のビワが、その実をつけていた。
小振りではあるものの、見た感じは普通のビワと同じだ。
休憩がてら、ビワの実をもいで食べてみたのだが、
これがほとんど甘さもなく、全くウマくなかった。
当然、ペッと吐き出して、
以降はビワの実に手を出さなかったのだが、
初夏の太平洋を横目に見ながら、
群生しているビワの傍を走るのは、
気持ちのよいサイクリングであった。

スーパーなどの青果売り場を見ていると、
ビワは季節性の商品であることに気がつく。
現在、様々な果物が季節に関係なく
売り場に並んでいるのに対し、
ビワは初夏を中心とした季節にのみ、店頭に並ぶ。
淡いオレンジ色をした、小さな卵型の実は
いかにも「果物」という雰囲気を醸し出しており、
その甘い味わいを、否応無しにイメージさせる。
手に取ってみると、
果皮には小さな産毛が生えており、
なんともあたたかな手触りである。
手に力を入れてみると、
その卵型の実がリンゴのように硬くなく、
心地よい柔らかさを感じさせてくれる。
そのまま爪を立てて果皮を破り、そこをつまんで引っ張ると
易々と果皮を向くことが出来る。
中からはじっとりと濡れた、オレンジ色の果肉が現れ、
そのまま、かぶりつかずにはおけない気持ちにさせてくれる。
そう、ビワの実はどうしたって「ウマそう」に見えるのである。

ビワは、バラ科ビワ属に属する常緑高木である。
またこの植物の果実をさして「ビワ」と呼ぶこともある。
中国が原産地で、
日本には弥生時代に持ち込まれたとされている。
日本各地に自生しているビワが、これにあたる。
鎌倉時代までは特に栽培されていたという記録はないが、
鎌倉時代から江戸時代にかけては、
ビワを栽培していたという記録が残っている。
ただ、食用として実を作っていたのか、
薬用として実や葉を必要としていたのか、
あるいは木材としての需要があったのかは、はっきりしない。
ただ、弥生時代に日本に入ってきたビワは、
実も小さく、品種改良をしても大きな実が出来なかったため、
大規模な栽培は行なわれなかったようである。
現在、スーパーなどで販売されているビワは、
江戸時代後期から明治時代初期にかけて
中国から移入されたもので、
当時は「唐ビワ」と呼ばれていたものである。
代官所に務めていた「おしお」という女性が
自分の畑に「唐ビワ」の種を蒔き、育てたものが、
現在の食用ビワの最初であったという。

日本では千葉県以西、太平洋側の温暖な地域に分布しており
非常に生命力のある植物である。
古代インドでは、釈迦の時代から
優れた薬効があることが知られており、
インドの経典の中では、ビワの木を「大王薬樹」、
ビワの葉を「無憂扇」として、万能薬として扱っていた。
これらの知識は、奈良時代に仏教とともに日本に伝わり、
1家に1本、ビワの木を植えておけば、
内臓の病気から怪我まで直してくれる
民間薬として、用いられていた。

実際の所、ビワの葉には良質な有機酸の他に
アミグダリンが豊富に含まれており、
良質な有機酸は、胃腸の消化吸収を向上、
血液循環の向上、疲労回復、老化防止に効果があり、
アミグダリンは抗ガン消炎作用、腰痛、神経痛、健胃整腸作用、
利尿などの効果がある。
(このアミグダリンはビワの種にも含まれており、
 種の含有量は、葉の1300倍である)
さらにビワの葉には、解毒作用のあるタンニン、
コレステロールを洗い流し、血液をさらさらにするサポニン、
疲労回復に効果的なビタミンBも含まれている。
この様々な効果のあるビワの葉は、
直接患部に貼りつける他、
葉を乾燥させてビワ茶を作ることもある。

もちろん、葉だけでなく実にも薬効はある。
果肉には豊富なβカロテンや
βクリプトキサンチンが含まれており、
これらは人体に吸収されるとビタミンAに変換される。
ビタミンAには、皮膚や粘膜、消化器官などを
正常に保つ働きがあり、
また高血圧の予防や、がん予防、アンチエイジングにも
効果があるといわれている。

このように様々な健康効果のあるビワだが、
育てるのは意外に簡単で、
種を植えればすぐに芽が生えてくる。
成長は早いとされているが、一方では
桃栗三年、柿八年、ビワ十三年という言葉もある。
実際に種から育てた場合、実がつくようになるまでに
7〜8年ほどかかるといわれているので、
実の収穫を目的としてビワを育てる場合、
かなりの年月を待たされることになる。
(もちろん、葉を期待しているのなら
 ずっと早く収穫できるようになるが、
 あまり葉を毟りすぎると、実をつけるのが
 さらに遅くなる可能性も否定できない)
ビワの実の収穫を期待して、これを植える場合、
ある程度育った苗木を購入してきて、
これを植えた方が良いようだ。

ビワといえば種が大きく、
食べられる部分が少ないという人もいるのだが、
実は近年、種無しのビワが作れるようになった。
ただ、まだまだ栽培農家は少なく、
市場に出回っている数も、非常に少ないため、
手に入れるのは困難である。
いずれ、種無しのビワが主流になるのだろうが、
もし今、種無しのビワを見つけたら、
とりあえず購入してみてはどうだろうか?

まだ、非常にレアなため、話の「タネ」にはなるかもしれない。

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